コラム

相続人調査の方法 どの戸籍をどこまで集めるか、相続人を確定する手順

※ この記事は、戸籍による相続人調査の一般的な解説です。この記事は令和8年9月時点の法令・制度に基づいています。個別の事情により結論が異なることがありますので、具体的な判断は専門家にご相談ください。

1 なぜ戸籍で相続人を調べる必要があるのか

相続登記、預貯金の解約、遺産分割協議など、相続手続きのほとんどは「相続人が誰か」が確定していないと進められません。家族の間では「相続人は分かっている」と思っていても、手続きの窓口では戸籍によって相続人全員を証明することが求められます。

また、戸籍を集めてみると、家族も知らなかった前婚の子や養子縁組が見つかることがあります。遺産分割協議は相続人全員で行う必要があるため、後から相続人が見つかると、協議をやり直さなければならないこともあります。

2 相続人の範囲と順位

民法で定められた相続人(法定相続人)は、次のとおりです。

  • 配偶者:常に相続人になります(民法890条)。
  • 第1順位:子(民法887条)。子が先に亡くなっている場合は、その子(孫)が代襲相続人になります。
  • 第2順位:直系尊属(父母、祖父母など):子や代襲相続人がいない場合に相続人になります(民法889条1項1号)。
  • 第3順位:兄弟姉妹:子も直系尊属もいない場合に相続人になります(民法889条1項2号)。兄弟姉妹が先に亡くなっている場合は、その子(甥・姪)が代襲相続人になります。

先の順位の人が一人でもいれば、後の順位の人は相続人になりません。どの順位まで確認する必要があるかによって、集める戸籍の範囲が変わります。

3 集める戸籍の範囲

3-1 すべての場合に必要なもの

  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍(戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本)
  • 相続人全員の現在の戸籍(相続人が生存していることの確認のため)

被相続人の出生からの戸籍が必要なのは、子の有無をすべて確認するためです。婚姻・転籍・法改正による戸籍の作り替え(改製)があると、それ以前の子の記載が新しい戸籍に移らないことがあるため、途切れなくさかのぼる必要があります。

3-2 順位ごとに追加で必要になるもの

相続人になる人 追加で必要になる主な戸籍
子が先に亡くなっていて孫が代襲する場合 亡くなった子の出生から死亡までの戸籍(その子の子を確認するため)
父母・祖父母 子(および代襲相続人)がいないことが分かる戸籍、先に亡くなった直系尊属の死亡の記載のある戸籍
兄弟姉妹 上記に加え、父母それぞれの出生から死亡までの戸籍(異父・異母の兄弟姉妹を確認するため)
甥・姪が代襲する場合 亡くなった兄弟姉妹の出生から死亡までの戸籍

兄弟姉妹が相続人になるケースは、集める戸籍の数が多くなり、古い手書きの戸籍を読む必要も出てくるため、時間がかかりやすくなります。

4 戸籍の取り方

4-1 本籍地の市区町村に請求する

戸籍は本籍地の市区町村で管理されています。窓口のほか、郵送で請求することもできます。取得した戸籍を読んで、一つ前の本籍地(従前の本籍)を確認し、順番にさかのぼっていきます。

4-2 広域交付(最寄りの市区町村窓口で取得)

令和6年3月から、本籍地以外の市区町村の窓口でも戸籍証明書等を請求できる広域交付が始まりました。ただし、次のような制限があります(法務省の案内による)。

  • 請求できるのは、本人・配偶者・直系尊属(父母、祖父母など)・直系卑属(子、孫など)の戸籍に限られます。兄弟姉妹の戸籍は請求できません。
  • 市区町村の窓口に本人が出向く必要があり、郵送や代理人による請求はできません。顔写真付きの身分証明書の提示が必要です。
  • コンピュータ化されていない戸籍や、一部事項証明書・個人事項証明書は対象外です。

親の相続で子が請求する場合には便利ですが、兄弟姉妹の相続では使えない部分があります。

5 戸籍を読むときの注意点

  • 改製原戸籍:法改正による作り替えの前の戸籍です。作り替え前に除籍された人(婚姻して出た子など)は、新しい戸籍に載っていないことがあります。
  • 転籍:本籍を移すと新しい戸籍が作られます。前の本籍地の戸籍も必要です。
  • 養子縁組:養子は実子と同じく相続人になります。養子縁組の記載も確認します。
  • 認知:婚姻していない男女の間の子でも、父が認知していれば父の相続人になります。
  • 氏名や生年月日の記載の相違:古い戸籍では、字体(旧字など)が異なることがあります。同一人物かどうかの確認が必要です。

6 相続人が確定した後:法定相続情報一覧図

集めた戸籍をもとに、法務局で法定相続情報一覧図の写しの交付を受けておくと、その後の相続登記や金融機関の手続きで、戸籍の束の代わりに使えることがあります。手数料はかかりません。

7 司法書士の役割

司法書士は、相続登記などの業務に必要な範囲で、職務上請求により戸籍を取得することができます。当事務所では、戸籍の収集・読み取り、相続関係説明図や法定相続情報一覧図の作成、相続登記の申請までまとめてご相談・ご依頼をお受けしています。相続人間で争いがある場合の交渉などは、弁護士へのご相談をご案内しています。

8 登記の実務で確認できる取扱い

古い戸籍(除籍・改製原戸籍)が、保存期間の経過や戦災・災害で廃棄・滅失していて取得できないことがあります。この場合、以前は市区町村の「廃棄証明書」に加えて、相続人全員が「他に相続人はいない」と証明する書面(印鑑証明書付き)の提出が求められていました。

現在は、法務省の通達(平成28年3月11日民二第219号)により、取得できる戸籍・除籍の謄本と、市区町村の廃棄証明書(交付できない旨の証明書)があれば、「他に相続人はいない」旨の証明書は不要とされています。古い戸籍が取れないと分かっても、相続人調査をそこで止める必要はありません。

9 よくある質問

Q. 戸籍を集めるには、どれくらいの時間がかかりますか?

A. 親の相続で子が相続人になる場合は比較的早く集まりますが、郵送請求を繰り返す場合や、兄弟姉妹が相続人になる場合は、1か月以上かかることもあります。

Q. 古い戸籍が「廃棄済み」と言われました。

A. 保存期間の経過や戦災などにより、古い戸籍が取得できないことがあります。その場合は、市区町村から「廃棄済み」などの証明を受け、手続き先に応じた対応を検討します。

Q. 相続人の一人が外国籍・海外在住の場合は?

A. 海外在住でも日本国籍であれば戸籍で確認できます。外国籍の方や帰化した方が関わる場合は、外国の証明書が必要になることがあるため、個別にご相談ください。

10 まとめ・ご相談の目安

相続人調査は、被相続人の出生から死亡までの戸籍を途切れなく集め、相続人全員を確定する作業です。次のような場合は、早めのご相談をご検討ください。

  • 兄弟姉妹や甥・姪が相続人になりそう
  • 前婚の子や養子がいるかもしれない
  • 古い手書きの戸籍が読めない、どこまで集めればよいか分からない

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