※ この記事は、相続登記で登記簿上の住所と亡くなった方の最後の住所が異なる場合の一般的な解説です。この記事は令和8年10月時点の法令・制度に基づいています。どの書類で足りるかは事案や管轄の法務局の判断によって異なりますので、具体的な判断は専門家や法務局にご相談ください。
1 「住所がつながらない」とはどういうことか
相続登記では、登記簿に所有者として記載されている人と、亡くなった方(被相続人)が同一人物であることを示す必要があります。登記簿には所有者の氏名と住所が記載されていますが、戸籍には住所が記載されていません。そこで、住所の履歴が分かる書類で、登記簿上の住所から最後の住所までを結びつけます。
ところが、所有者が不動産を取得した後に何度も引っ越していたり、取得した時期が古かったりすると、住所の履歴をたどる書類が取れず、登記簿上の住所と最後の住所を結びつけられないことがあります。これを「住所がつながらない」といいます。
2 まず取得する書類
| 書類 | 分かること | 取得先 |
|---|---|---|
| 住民票の除票 | 最後の住所と、その一つ前の住所 | 最後の住所地の市区町村 |
| 戸籍の附票(除附票) | その本籍にあった間の住所の履歴 | 本籍地の市区町村 |
| 改製原附票・除かれた附票 | 本籍を移す前(転籍前)や、附票が作り替えられる前の住所の履歴 | それぞれの本籍地の市区町村 |
戸籍の附票は本籍地ごとに作られるため、亡くなった方が転籍していた場合は、以前の本籍地の附票もさかのぼって取得します。登記簿上の住所がどこかの附票に出てくれば、住所がつながったことになります。
なお、登記簿上の住所が亡くなった方の本籍と同じ場合は、戸籍の記載でつながりを示せることがあります。
3 古い書類は廃棄されていることがある
住民票の除票や戸籍の附票の除票の保存期間は、令和元年6月20日の改正で150年になりました(住民基本台帳法施行令34条1項)。しかし、それより前は保存期間が5年とされていたため、改正の時点ですでに廃棄されていた古い除票や附票は取得できません。
市区町村で「保存期間経過のため交付できない」と言われた場合は、その旨の証明(廃棄証明など)を出してもらえるか確認しておきましょう。次の手続きで使うことがあります。
4 住民票や附票で住所がつながらないときの方法
4-1 登記済証(権利証)がある場合
法務省の通知(平成29年3月23日付け法務省民二第175号)では、住民票の写し等で被相続人の同一性を証明できない場合に、登記済証(その不動産を取得したときの権利証)が提供されたときは、それによって同一性を確認できるとされています。亡くなった方の権利証が見つかれば、まず提出を検討します。
4-2 登記済証がない場合
権利証も見つからない場合は、次のような書類を組み合わせて、同一人物であることを示すことが多いです。
- 不在籍証明書:登記簿上の住所を本籍とする、同じ氏名の人の戸籍がないことの証明
- 不在住証明書:登記簿上の住所に、同じ氏名の人の住民票(除票)がないことの証明
- 固定資産税の納税通知書・評価証明書:亡くなった方あてに課税されていたことが分かるもの
- 相続人全員の上申書:登記簿上の所有者と亡くなった方が同一人物であることを申し述べ、相続人全員が署名押印して印鑑証明書を添付するもの
どの書類をどこまでそろえればよいかは、事案や管轄の法務局によって判断が異なることがあります。書類を集める前に、法務局の登記相談などで確認しておくと、手戻りを防げます。
4-3 当事務所の実務から:資料を検討する順番
当事務所の実務メモでは、住所のつながりが証明できない場合に、同一人物であることを示す資料を次の順番で検討しています。
- 住民票の除票・戸籍の附票・戸籍でつながりを証明する
- 1ができなければ、権利証(登記済証)の原本と写しを提出する
- 2もなければ、固定資産税の納税通知書と、相続人の上申書・印鑑証明書を提出する
- 3でも足りないとされた場合は、成人2名による保証書などを求められることがある
どこまでの資料が必要かは、事案や担当の登記官の判断で変わることがあり、全国で統一された基準が公表されているわけではありません。当事務所では、手元にそろう資料をできるだけ集め、必要に応じて申請前に管轄の法務局に相談してから申請しています。なお、戸籍(除籍)そのものの一部が廃棄されている場合は、市区町村の「交付することができない」旨の証明書で足りるとされています(平成28年3月11日付け法務省民二第219号)。
5 当事務所の実務から:登記上の氏名が通称だったとき
住所だけでなく、登記簿上の名義人の氏名が、戸籍の氏名と違うことがあります。例えば、亡くなった方が長年「通称」を使っていて、不動産もその名前で登記されていた場合です。
このような場合、当事務所では、相続人の方に、通称を使っていた時期や理由、その名前が使われていたことが分かる資料(当時の郵便物、写真、表札など)を確認させていただき、その経緯を上申書にまとめて登記の申請書類に添えています。不動産を建てた(取得した)経緯もあわせて記載し、登記簿上の名義人と亡くなった方が同一人物であることを説明します。
どこまでの資料や説明が必要かは、管轄の法務局の判断によって変わることがあります。通称で登記されている不動産をお持ちの場合は、早めにご相談ください。
6 ご存命の方は、住所変更の登記を早めに
住所がつながらない問題は、所有者が引っ越した後に登記簿の住所を変更していなかったことが原因です。令和8年4月1日から、所有者の住所・氏名の変更登記が義務化されており、変更日から2年以内に申請する必要があります(施行日より前の変更は、令和10年3月31日まで)。ご家族のために、ご存命のうちに住所変更の登記をしておくと、将来の相続登記がスムーズになります。
7 司法書士の役割
司法書士は、住民票の除票や戸籍の附票の収集、住所の履歴の整理、不在籍証明書・不在住証明書の取得、上申書の作成、法務局との事前相談、相続登記の申請までまとめてご相談・ご依頼をお受けできます。住所変更の登記もお受けしています。
8 よくある質問
Q. 住所がつながらないと、相続登記はできないのですか?
A. 住所がつながらない場合でも、上記のような書類を組み合わせることで相続登記ができるのが通常です。あきらめずにご相談ください。
Q. 登記識別情報(パスワード形式の通知)でも、登記済証と同じように使えますか?
A. 平成17年以降の登記では、権利証の代わりに登記識別情報が通知されています。同一性の証明にどのように使えるかは、事案ごとに法務局に確認して対応します。
Q. 相続人が多く、全員の上申書を集めるのが大変です。
A. 登記済証や不在籍証明書・不在住証明書など、ほかの書類でどこまで対応できるかを先に検討します。遠方の相続人がいる場合は、郵送でのやり取りも含めてご案内します。
9 まとめ・ご相談の目安
相続登記で住所がつながらない場合は、住民票の除票と戸籍の附票をさかのぼって取得し、それでもつながらないときは、登記済証や不在籍・不在住証明書、上申書などを組み合わせて同一人物であることを示します。次のような場合は、ご相談をご検討ください。
- 登記簿の住所が古く、住民票や附票で履歴をたどれない
- 市区町村から「保存期間経過のため交付できない」と言われた
- 亡くなった方の権利証が見つからない
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