※ この記事は、相続登記の手続きの流れと必要書類に関する一般的な解説です。この記事は令和8年9月時点の法令・制度に基づいています。必要書類は事案によって異なりますので、具体的な判断は専門家や法務局にご相談ください。
1 相続登記とは
相続登記とは、亡くなった方(被相続人)が所有していた土地や建物の名義を、相続人の名義に変更する登記です。令和6年4月1日から義務化されており、相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があります(施行前の相続は、原則として令和9年3月31日まで)。
名義を変えないままにしておくと、売却や担保設定ができないほか、相続人が亡くなるたびに権利者が増え、手続きが難しくなっていきます。
2 手続きの全体の流れ
- 遺言書の有無を確認する:自宅や法務局(自筆証書遺言書保管制度)、公証役場(公正証書遺言)を確認します。
- 相続人を確定する:亡くなった方の出生から死亡までの戸籍などを集めます。
- 不動産を確認する:登記事項証明書、固定資産税の課税明細書、名寄帳、所有不動産記録証明書などで、相続する不動産をもれなく把握します。
- 誰が取得するかを決める:遺言があれば遺言の内容に、なければ遺産分割協議で決めます。
- 必要書類をそろえ、申請書を作る:登記のパターンによって必要書類が変わります(下の3を参照)。
- 法務局に申請する:不動産の所在地を管轄する法務局に、窓口・郵送・オンラインのいずれかで申請します。
- 登記完了・登記識別情報の受領:登記が完了すると、新しい名義人に登記識別情報通知(従来の権利証に当たるもの)が発行されます。
3 パターン別の必要書類
3-1 どのパターンでも基本的に必要なもの
- 登記申請書
- 不動産を取得する相続人の住民票(または戸籍の附票)
- 亡くなった方の住民票の除票(または戸籍の附票):登記簿上の住所とのつながりを示すため
- 固定資産評価証明書など、不動産の価額が分かるもの(登録免許税の計算のため)
3-2 遺産分割協議による場合(最も多いパターン)
- 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍(除籍・改製原戸籍を含む)
- 相続人全員の戸籍(現在の戸籍)
- 遺産分割協議書(相続人全員が実印で押印)
- 相続人全員の印鑑証明書(相続登記では、発行からの期限の定めはありません)
3-3 遺言による場合
- 遺言書(自宅で保管されていた自筆の遺言は、家庭裁判所の検認を受けたもの。法務局に保管されていた場合は遺言書情報証明書)
- 亡くなった方の死亡の記載のある戸籍(出生までさかのぼる必要がない場合が多い)
- 不動産を取得する相続人の戸籍
遺言がある場合、相続人全員での遺産分割協議や印鑑証明書が不要になり、手続きが大きく簡単になります。「相続させる」遺言と「遺贈する」遺言の違いは関連記事で解説しています。
3-4 法定相続分どおりに相続人全員の共有にする場合
- 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍と、相続人全員の戸籍・住民票
- 遺産分割協議書や印鑑証明書は不要
この登記は相続人の一人からでも申請できますが、登記識別情報は申請した相続人にしか発行されません。また、共有状態が続くため、売却などには全員の協力が必要になります。
3-5 戸籍の原本を返してもらうには
相続関係説明図を添付すると、戸籍の原本を返してもらえます(原本還付)。法務局で交付を受けた法定相続情報一覧図の写しを添付すれば、戸籍の束の代わりになります。
4 当事務所の実務から:ご依頼後の進め方
当事務所に相続登記をご依頼いただいた場合は、おおむね次の順番で進めます。
- 戸籍などの取得にかかる実費をお預かりします。
- 司法書士が戸籍・除籍などを取り寄せて相続人を確定し、遺産分割協議書など押印していただく書類を作成します。
- 報酬・登録免許税などのご請求書をお送りし、お振込みいただきます。
- 押印していただく書類を郵送します。
- 相続人の皆さまに署名・押印していただき、印鑑証明書などの必要書類と一緒にご返送いただきます。
- 登記を申請する前に、相続人の皆さま全員にご本人確認と登記の内容の確認のご連絡をします。
- 法務局に登記を申請します。
- 登記が完了したら、登記識別情報通知などの書類をお返しします。
相続人の一部が遠方にお住まいの場合も、書類の郵送と電話での確認でお手続きを進められます。
5 つまずきやすいポイント
- 登記簿の住所と亡くなった方の最後の住所がつながらない:住民票の除票や戸籍の附票で住所の履歴をたどります。古い書類が廃棄されている場合の対処法は、関連記事で詳しく解説しています。
- 相続人が亡くなっている(数次相続・代襲相続):亡くなった相続人の戸籍も必要になり、登記の申請方法も変わることがあります。
- 不動産のもれ:私道の持分や、固定資産税がかからない土地は、課税明細書に載っていないことがあります。名寄帳や所有不動産記録証明書で確認しましょう。
- 未登記の建物:建物が登記されていない場合は、相続登記の前に表題登記が必要です(土地家屋調査士の業務)。
6 登記にかかる期間
戸籍の収集に数週間〜1か月以上、遺産分割協議に数週間〜数か月かかることがあります。法務局に申請してから登記が完了するまでの期間は、法務局ごとに目安が公表されており、多くは1〜2週間程度です。
7 司法書士の役割
司法書士は、戸籍の収集、相続人の確定、相続関係説明図・法定相続情報一覧図の作成、遺産分割協議書の作成、登記申請書の作成と申請、登記識別情報の受領まで、まとめてお受けできます。相続人の間で争いがあり、交渉や調停の代理が必要な場合は、弁護士へのご相談をご案内しています。
8 よくある質問
Q. 父が亡くなりましたが、母が住み続けるので父の名義のままでもよいですか?
A. 名義のままでは相続登記の義務を果たせません。母が取得するのか子が取得するのかを遺産分割協議で決め、3年以内に登記をしましょう。子の名義にした場合でも、母が住み続けることは可能です。配偶者居住権という制度もあります。
Q. 相続登記はどこの法務局に申請しますか?
A. 不動産の所在地を管轄する法務局です。亡くなった方や相続人の住所地ではありません。郵送やオンラインでも申請できます。
Q. 自分で申請できますか?
A. できます。法務局のホームページに申請書の様式や記載例が掲載されています。自分で申請する場合の注意点は関連記事をご覧ください。
9 まとめ・ご相談の目安
相続登記は、遺言があるか、遺産分割をするか、法定相続分で登記するかによって、必要書類が変わります。次のような場合は、ご相談をご検討ください。
- 戸籍の集め方や読み方が分からない
- 相続人が多い、亡くなった相続人がいる
- 登記簿の住所がつながらない、不動産がどこにあるか分からない
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