コラム

相続土地国庫帰属制度とは?いらない土地を国に引き取ってもらう要件・費用・手続きの流れ

※ この記事は、相続土地国庫帰属制度の一般的な解説です。この記事は令和8年9月時点の法令・制度に基づいています。個別の事情により結論が異なることがありますので、具体的な判断は専門家や法務局にご相談ください。

1 相続土地国庫帰属制度とは

相続土地国庫帰属制度は、相続や遺贈によって取得した土地を、一定の要件のもとで国に引き渡す(国庫に帰属させる)ことができる制度です。「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」に基づき、令和5年4月27日から始まりました。

「遠方の土地を相続したが使い道がない」「管理ができず、売ろうにも買い手がつかない」といった土地について、相続放棄をせずに、その土地だけを手放す方法として利用されています。ただし、どんな土地でも引き取ってもらえるわけではなく、審査手数料や負担金もかかります。

2 申請できる人

  • 相続または遺贈(相続人に対するものに限る)によって土地を取得した人が申請できます。
  • 制度が始まる前(令和5年4月27日より前)に相続した土地も対象です。
  • 売買などで自分から購入した土地は、原則として対象外です。
  • 共有の土地は、相続等により持分を取得した共有者がいれば、共有者全員が共同して申請することで利用できます(相続以外の原因で持分を取得した共有者も含めて全員で申請します)。

登記名義が亡くなった方のままの土地でも、相続人であることを示す戸籍などを添付して申請できる場合があります。ただし、相続登記は令和6年4月1日から義務化されていますので、あわせて対応を検討してください。

3 引き取ってもらえない土地

法律では、申請の段階で受け付けられない土地(却下事由)と、審査の結果として承認されない土地(不承認事由)が定められています。

3-1 申請できない土地(却下事由)

  • 建物がある土地
  • 担保権(抵当権など)や使用・収益を目的とする権利(賃借権など)が設定されている土地
  • 通路、墓地、境内地、水道用地など、他人による使用が予定される土地
  • 土壌汚染対策法上の特定有害物質で汚染されている土地
  • 境界が明らかでない土地、所有権の存否や範囲について争いがある土地

3-2 承認されない土地(不承認事由)

  • 一定の勾配・高さの崖があり、管理に過分の費用や労力がかかる土地
  • 管理・処分を妨げる工作物、車両、樹木などが地上にある土地
  • 除去しなければならない物が地下にある土地
  • 隣接地の所有者などとの争訟によらなければ管理・処分ができない土地
  • その他、通常の管理・処分に過分の費用や労力がかかる土地

建物がある場合は、事前に解体する必要があります。境界が不明な場合も、申請前に確認が必要になることがあります。解体費用や測量費用がかかる場合は、制度を利用するかどうかを費用全体で比較して判断します。

4 費用:審査手数料と負担金

費用 金額 支払う時期
審査手数料 土地1筆あたり14,000円(収入印紙) 申請時。不承認・却下・取下げでも返還されません
負担金 10年分の標準的な管理費用に相当する額。原則20万円 承認後、通知を受けてから納付

負担金は原則として1筆ごとに20万円ですが、市街化区域内などの一部の宅地・農地や、森林については、面積に応じて算定されます。隣接する同じ種目の土地は、申出により1つの土地とみなして負担金を算定できる場合があります。負担金は、通知を受けてから30日以内に納付しないと承認の効力が失われるため注意が必要です。

5 手続きの流れ

  1. 事前相談:土地が所在する都道府県の法務局・地方法務局(本局)で相談できます(予約制)。
  2. 申請:承認申請書と添付書類(土地の位置や範囲を示す図面、土地の写真など)を、土地が所在する法務局の本局に提出し、審査手数料を納めます。
  3. 審査:書面審査のほか、法務局の担当者による現地調査が行われることがあります。
  4. 承認・負担金の通知:承認されると負担金の額が通知されます。
  5. 負担金の納付:納付した時点で土地の所有権が国に移ります。国庫帰属による登記は国側で行われ、申請者が登記を申請する必要はありません。

法務省の案内では、審査の標準処理期間は8か月とされています(事案によってはこれを超えることもあります)。このように一定の期間がかかるため、急いで手放したい事情がある場合は、他の方法とあわせて検討します。

6 他の手放し方との比較

  • 売却・隣地所有者への譲渡:買い手が見つかれば、費用をかけずに(または対価を得て)手放せます。まず検討したい方法です。
  • 相続放棄:相続開始を知ってから3か月以内であれば可能ですが、その土地だけでなく、預貯金などすべての財産を放棄することになります。
  • 相続土地国庫帰属制度:特定の土地だけを手放せますが、要件と費用があります。

7 司法書士の役割

法務省の案内では、承認申請書の作成を代行できるのは、弁護士・司法書士・行政書士とされています。司法書士は、前提となる相続登記、承認申請書や添付書類の作成についてご相談・ご依頼をお受けできます。なお、境界の確定や測量が必要な場合は土地家屋調査士、建物の解体は解体業者など、他の専門家・事業者と連携して進めることになります。

8 よくある質問

Q. 山林や田畑も対象になりますか?

A. 宅地に限らず、山林や田畑も対象になり得ます。ただし、却下事由・不承認事由に当たらないことが必要で、森林や一部の農地は負担金が面積に応じて算定されます。

Q. 建物の登記が残っている場合は?

A. 建物がある土地は申請できません。建物を解体したうえで、建物の滅失登記をしておく必要があります。

Q. 不承認になった場合、手数料は戻りますか?

A. 審査手数料は返還されません。申請前に法務局の事前相談を利用し、要件を満たしそうかを確認しておくことをおすすめします。

9 まとめ・ご相談の目安

相続土地国庫帰属制度は、使い道のない相続土地を国に引き渡せる制度ですが、建物がないこと、担保権がないこと、境界が明らかであることなどの要件があり、審査手数料と負担金がかかります。次のような場合は、ご相談をご検討ください。

  • 遠方の土地や山林・田畑を相続したが、管理も売却も難しい
  • 相続登記がまだ済んでいない
  • 制度を使えるかどうか、他の方法と比べて判断したい

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