※ この記事は、株式会社の設立登記に関する一般的な解説です。この記事は令和8年10月時点の法令・制度に基づいています。個別の事情により結論が異なることがありますので、具体的な判断は専門家にご相談ください。
1 設立の前に決めておくこと
- 商号(会社名):「株式会社」の文字を入れる。使える符号(「&」「・」など)には決まりがあります。
- 本店の所在地
- 事業目的:将来行う予定の事業も含めて定めます。
- 資本金の額と、発起人(出資する人)ごとの引受株数
- 役員(取締役・代表取締役・監査役)と任期、取締役会を置くかどうか
- 事業年度(決算期)、公告の方法、株式の譲渡制限の有無
- 会社の実印(代表者印)の手配
2 設立の流れ(当事務所の実務から)
当事務所では、株式会社の設立を次の流れで進めています。
- チェックリストに、商号・本店・目的・役員・資本金・発起人などを記入していただく
- 司法書士が、同じ本店所在地での同一商号の有無と、目的の記載が登記できる内容かを調査する
- 定款の案を作成し、目的などをご確認いただいたうえで、公証役場に定款案と実質的支配者の申告書を送って事前確認を受ける
- 押印書類一式をお送りし、署名・押印して返送していただく
- 電子定款を作成して送信し、公証役場で定款の認証を受ける
- 発起人に資本金を払い込んでいただく
- 司法書士が法務局に設立登記を申請する(申請日が会社の設立日になります)
- 登記完了後、会社の印鑑カードの交付を受け、会社の登記事項証明書・印鑑証明書とあわせてお返しする
登記の完了までは、申請から1〜2週間程度が目安です(法務局の混み具合によります)。
3 費用の目安
- 登録免許税:資本金の額の1000分の7。ただし最低15万円(登録免許税法別表第一)。
- 定款認証の手数料:資本金の額などに応じて公証人手数料令で定められています。
- 定款の印紙代:紙の定款は4万円の収入印紙が必要ですが、電子定款にすればかかりません。
- 会社の印鑑の作成費用、登記事項証明書などの実費、司法書士報酬
4 設立日の注意
会社の設立日は、法務局に設立登記を申請した日です。法務局が休みの土日祝日は申請できないため、設立日にすることはできません。特定の日を設立日にしたい場合は、逆算して準備を進めます。
5 海外に住む人が役員・発起人になる場合
定款の認証や設立登記では、発起人や役員の印鑑証明書が必要です。海外に住んでいて日本の印鑑証明書を取れない人は、現地の公証機関や日本の在外公館で、署名(サイン)が本人のものであることの証明を受けて、印鑑証明書の代わりにします。証明書に住所が記載されない場合は、住所を確認できる身分証明書の写しなども必要になります。書類の取寄せと翻訳に時間がかかるため、早めに準備します。
6 設立後に銀行口座を開くとき:実質的支配者リスト
会社を設立した後、金融機関で法人口座を開くときや融資・取引を始めるときに、会社の「実質的支配者」の確認を求められることがあります。法務局の「実質的支配者リスト」の制度を使うと、その確認をスムーズにできる場合があります。
実質的支配者とは
実質的支配者は、会社の事業経営を実質的に支配することができる立場にある個人のことです。マネー・ローンダリングなどへの悪用を防ぐため、金融機関などは取引の際に会社の実質的支配者を確認しています。基本的な判定は次の順番です。
- 議決権の50%を超えて直接または間接に持つ個人がいれば、その人
- いなければ、議決権の25%を超えて直接または間接に持つ個人(複数いれば全員)
- どちらもいなければ、出資・融資・取引などを通じて事業活動に支配的な影響力を持つ個人
- それもいなければ、会社を代表する個人(代表取締役など)
株主が法人の場合は、その法人の株主までさかのぼって判定します。
法務局の実質的支配者リスト制度
- 令和4年1月31日に始まった制度で、株式会社(特例有限会社を含む)が利用できます。合同会社は対象外です
- 会社が作成した実質的支配者リストを本店所在地の法務局に申し出ると、法務局が保管し、登記官の認証文付きの写しを交付します
- 利用は任意で、手数料はかかりません。申し出なくても罰則はありません
- 申出には、申出書と実質的支配者リストのほか、株主名簿の写しなどの根拠となる書面を添付します。代理人が申し出る場合は委任状も必要です
- 令和7年3月21日から、オンラインで登記を申請するのと同時であれば、オンラインで申し出ることもできます(申出だけを単独でオンラインですることはできません)
定款認証での「申告」との違い
株式会社の設立時の定款認証では、公証人に実質的支配者となるべき者を申告する手続きがあります。法務局のリスト制度は、設立後の会社が任意で利用するものです。株主構成が変わった場合は、新しいリストを作って改めて申し出ます。
当事務所の実務から
当事務所で実質的支配者リストの申出をお手伝いする場合は、申出書、実質的支配者リスト、株主名簿、委任状を用意し、代表者の本人確認書類を確認したうえで法務局に提出します。設立や役員変更の登記とあわせてご依頼いただくこともできます。
7 当事務所の実務から:設立のご相談で確認する項目
当事務所では、株式会社の設立のご依頼を受けると、チェックリストに沿って次の項目を確認しています。
- 商号・本店・事業目的(最後に「前各号に附帯関連する一切の事業」を加える)
- 就任予定の役員(代表取締役・取締役・監査役)と、取締役会を置くかどうか、役員の任期
- 会社の印鑑をご自身で用意するか、当事務所で手配するか
- 公告の方法、事業年度(決算期)
- 資本金の額、発行可能株式総数と発行済株式総数
- 株式の譲渡制限の有無と承認機関、株券を発行するか
- 発起人と、それぞれの引受株数・金額
なお、土日・祝日は法務局が休みのため、その日を設立日にすることはできません(第4章参照)。
8 当事務所でのご相談から:設立前に確認すること・期間の目安
設立のご相談では、資本金、本店所在地、事業目的、取締役などの役員構成、発起人、会社の機関設計などを確認します。特に事業目的は、実際に行う事業と、許認可が必要かどうかを確認します。
必要な事項が決まっていて、書類や印鑑などの準備がスムーズに進めば、定款の作成・認証から登記申請まで比較的短期間で進められます。具体的な期間は、必要書類がそろう時期や公証役場との日程などによって変わります。
9 よくある質問
Q. 資本金は1円でも設立できますか?
A. 法律上は可能です。ただし、取引先や金融機関からの信用、許認可の要件などを考えて決めるのが一般的です。
Q. 設立後にすぐ必要な手続きはありますか?
A. 税務署・都道府県・市区町村への届出、社会保険の手続きなどがあります。税務や社会保険の手続きは、税理士・社会保険労務士などにご確認ください。
10 まとめ・ご相談の目安
株式会社の設立は、定款の作成・認証、資本金の払込み、設立登記の順で進めます。商号・目的・役員・資本金を決めたら、早めに準備を始めましょう。
- 株式会社を設立したい
- 定款の作成から登記まで任せたい
- 海外在住の役員がいる会社を設立したい
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