コラム

成年後見人が本人の自宅を売却するには?居住用不動産処分の許可申立てと必要書類、許可後の登記まで

※ この記事は、成年後見人が本人の自宅を売却する場合の居住用不動産処分許可に関する一般的な解説です。この記事は令和8年10月時点の法令・制度に基づいています。個別の事情により結論が異なることがありますので、具体的な判断は専門家にご相談ください。

1 本人の自宅を売るには、家庭裁判所の許可が必要です

成年後見人は、本人の財産を管理し、本人に代わって契約をする権限を持っています。しかし、本人が住んでいる建物やその敷地(居住用不動産)を売却・賃貸したり、賃貸借を解除したり、抵当権を設定したりするには、家庭裁判所の許可が必要です(民法859条の3)。住み慣れた住まいを失うことが、本人の心身や生活に大きな影響を与えるためです。

大阪家庭裁判所の案内では、現に住んでいなくても、病院や施設などを出たときに住む予定の不動産も、居住用不動産に含まれるとされています。また、許可を得ずにした契約は無効とされています。

2 許可が必要になる主な場面

  • 施設の費用をまかなうため、空き家になった本人の自宅を売却する
  • 本人の自宅を第三者に賃貸する
  • 本人が借りている住まいの賃貸借契約を解除する
  • 本人の自宅に抵当権を設定する
  • 本人の自宅を取り壊す

3 申立ての概要(大阪家庭裁判所の案内による)

項目 内容
申立人 成年後見人など
費用 収入印紙800円と郵便切手
主な書類 申立書、処分が必要な理由を説明する資料、不動産の登記事項証明書・固定資産評価証明書、契約書の案、後見監督人がいる場合はその意見書など
売却の場合 不動産業者が作成した査定書(鑑定書に準じた詳しい内容のもの)

4 家庭裁判所が考慮すること

一般に、次のような点が考慮されます。

  • 売却などをする必要性(施設費用や生活費の不足など)
  • 本人の生活や心身の状況、本人の意向
  • 売却の条件(価格が相当か、買主は誰か)
  • 売却代金の使い道と管理の方法
  • 親族の意見

5 当事務所の実務から:契約の「案」の段階で申し立てる

当事務所では、居住用不動産の処分許可の申立てを、売買契約などを確定的に結ぶ前の契約書の「案」の段階で行い、許可が出てから契約・決済に進む段取りにしています。申立てでは、なぜ処分が必要か(施設費用の確保、空き家の維持が難しいなど)と、それが本人の利益になる理由を具体的に整理し、価格が相当であることを、不動産業者の査定書や固定資産評価証明書などの客観的な資料で説明します。審理には期間がかかるため、決済の日程は余裕をもって設定するよう、関係者と調整します。許可が出た後は、許可の審判書を添付して所有権移転登記を申請します。

6 許可が出た後の流れ(売却の場合)

  1. 家庭裁判所の許可の審判書を受け取る
  2. 許可された内容(申立てで提出した契約書案)のとおりに、売買契約を結ぶ
  3. 決済の日に、代金を本人名義の口座で受け取り、許可の審判書を添付して所有権移転登記を申請する
  4. 売却代金の管理状況を、家庭裁判所への報告に反映する

本人の自宅の売却にあたっては、相続などで登記簿の名義や住所が古いままになっていることもあります。その場合は、売却の前に名義や住所の変更登記が必要になることがあるため、早めに登記簿を確認します。法定後見の手続き全般については法定後見のご案内をご覧ください。

7 注意したいこと

  • 居住用でない不動産:本人が住んだことのない投資用の不動産などは、この許可の対象ではありませんが、重要な財産の処分になるため、事前に家庭裁判所に連絡・相談するのが一般的です。
  • 保佐人・補助人の場合:保佐人・補助人が代理権に基づいて本人の居住用不動産を処分する場合も、同様に許可が必要です。
  • 制度の改正:成年後見制度は、民法の改正(令和8年6月24日公布)による見直しが予定されています。施行までは現行の制度が適用されます。

8 まとめ・ご相談の目安

成年後見人が本人の自宅を売却・賃貸などするには、家庭裁判所の許可が必要で、許可なくした契約は無効になります。審理に時間がかかるため、取引の日程は余裕をもって決めましょう。

  • 施設費用のため、本人の自宅を売りたい
  • 申立てに必要な書類が分からない
  • 許可後の売買の登記もあわせて任せたい

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