コラム

相続手続きで司法書士ができること・できないこと 弁護士・税理士との違いと依頼先の選び方

※ この記事は、相続手続きにおける司法書士の業務範囲に関する一般的な解説です。この記事は令和8年10月時点の法令・制度に基づいています。個別の事情により結論が異なることがありますので、具体的な判断は専門家にご相談ください。

1 相続手続きは「誰に何を頼むか」で進み方が変わります

相続が起きると、戸籍の収集、遺産分割、不動産の名義変更、預貯金の解約、相続税の申告など、さまざまな手続きが必要になります。これらは一つの専門家がすべてを扱えるわけではなく、資格ごとに扱える業務が法律で決まっています。

この記事では、相続手続きの中で司法書士が担当できること・できないことと、弁護士・税理士などとの違い、依頼先の選び方を解説します。

2 司法書士ができること

2-1 相続登記(不動産の名義変更)

司法書士の中心となる業務です。相続人の確定、遺産分割協議書の作成、登録免許税の計算、法務局への申請までを一括してお受けできます。相続登記は令和6年4月1日から義務化されており、相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内の申請が必要です。

2-2 戸籍の収集と相続人の確定

司法書士は、受任した業務に必要な範囲で、職務上請求により戸籍を取得できます。集めた戸籍をもとに相続関係説明図を作成したり、法務局で法定相続情報一覧図の写しの交付を受けたりすることもできます。

2-3 家庭裁判所に提出する書類の作成

相続放棄の申述書、遺言書の検認申立書、特別代理人や不在者財産管理人の選任申立書、成年後見の申立書など、家庭裁判所に提出する書類の作成をお受けできます。

2-4 預貯金の解約などの遺産承継業務

司法書士は、法令上、他人の財産の管理・処分を行う業務を行うことができるとされています(司法書士法施行規則31条1号)。この規定に基づき、相続人全員からの依頼を受けて、預貯金の解約や払戻し、有価証券の名義変更などの手続きを代わりに進める「遺産承継業務」をお受けする事務所もあります。

2-5 遺言書作成のサポート・成年後見

遺言書の文案作成、公正証書遺言の証人、遺言執行者への就任のほか、相続人に判断能力が不十分な方がいる場合の成年後見の申立てサポートや、後見人への就任もお受けできます。

3 司法書士ができないこと

3-1 相続人の間の争いの交渉・代理

相続人の間で遺産の分け方について意見が対立している場合に、一方の相続人の代理人として他の相続人と交渉することは、弁護士でなければできません(弁護士法72条)。家庭裁判所の遺産分割調停・審判の代理人になることもできません。司法書士が関わるのは、相続人全員の合意内容を遺産分割協議書にまとめるなど、書類作成や手続きの面に限られます。

3-2 訴額140万円を超える紛争の代理

法務大臣の認定を受けた司法書士(認定司法書士)は、簡易裁判所の訴訟代理などを行うことができますが、その範囲は訴訟の目的の価額が140万円以下の事件に限られます(司法書士法3条1項6号・7号)。遺産を巡る請求でこれを超えるものや、金額が不明なものは、代理人として交渉・訴訟を行うことはできず、ご本人名義での対応か、弁護士への依頼を検討する必要があります。

3-3 相続税の申告・税務相談

相続税の申告書の作成や、個別の税務相談は税理士の業務です。相続税の申告が必要になりそうな場合は、税理士と連携して進めます。

4 専門家ごとの主な役割

専門家 相続で主に担当する業務
司法書士 相続登記、戸籍収集、遺産分割協議書作成、家庭裁判所提出書類の作成、遺産承継業務、成年後見
弁護士 相続人間の紛争の交渉・調停・訴訟の代理、遺留分の請求の代理 など
税理士 相続税の申告、準確定申告、税務相談
土地家屋調査士 建物の表題登記・滅失登記、土地の分筆・境界確認のための測量
行政書士 官公署に提出する書類の作成(車の名義変更など)

相続財産に不動産がある場合は司法書士、相続税がかかる場合は税理士、争いがある場合は弁護士、というように、状況に応じて窓口を選ぶことになります。

5 依頼先を選ぶときのポイント

  • 業務範囲を明確に説明してくれるか:できないことや、他の専門家が必要になる場面を、最初に説明してくれるかを確認しましょう。
  • 見積もりが分かりやすいか:報酬と、登録免許税・戸籍の取得費用などの実費が分けて示されているかを確認しましょう。
  • 相続案件の経験:数次相続、代襲相続、相続人が多い・遠方にいるといった事案への対応経験があるかも判断材料になります。
  • 連絡の取りやすさ:手続きには数か月かかることもあるため、進み具合を確認しやすいかどうかも大切です。
  • 他の専門家との連携:税理士や弁護士が必要になったときに、適切に案内してもらえるかを確認しましょう。

6 よくある質問

Q. 相続人の一人が遺産分割に反対しています。司法書士に間に入ってもらえますか?

A. 司法書士は、特定の相続人の代理人として交渉したり、意見を調整したりすることはできません。相続人の間で争いがある場合は、弁護士へのご相談をご案内しています。全員の合意ができた段階で、協議書の作成や登記をお受けできます。

Q. 相続登記だけを依頼することはできますか?

A. できます。戸籍の収集から登記申請まで、必要な部分だけをご依頼いただくことも可能です。

Q. 相続税がかかるかどうかも相談できますか?

A. 具体的な税額の計算や申告の要否の判断は税理士の業務です。必要に応じて税理士をご紹介します。

7 まとめ・ご相談の目安

司法書士は、相続登記を中心に、戸籍の収集、遺産分割協議書や家庭裁判所に提出する書類の作成、遺産承継業務などを担当します。一方、相続人間の争いの交渉や代理、相続税の申告は、それぞれ弁護士・税理士の業務です。次のような場合は、ご相談をご検討ください。

  • 相続財産に不動産があり、名義変更が必要
  • 戸籍の収集や相続人の確定を任せたい
  • 何から手を付けてよいか分からず、手続きの全体像を知りたい

当事務所では、相続手続きの全体像を整理したうえで、司法書士が担当できる手続きをお受けし、必要に応じて他の専門家をご案内しています。

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