コラム

遺言書作成を司法書士に依頼するメリット・デメリット 遺言の種類の選び方と依頼の流れ

※ この記事は、遺言書の作成を専門家に依頼する場合に関する一般的な解説です。この記事は令和8年10月時点の法令・制度に基づいています。個別の事情により結論が異なることがありますので、具体的な判断は専門家にご相談ください。

※ 令和8年6月24日に遺言制度の見直しを含む改正民法が公布されており、施行後は一部の要件が変わる予定です。

1 遺言書は「書けば終わり」ではありません

遺言書は、ご自身の財産を誰にどのように引き継ぐかを決めておくための大切な書面です。一方で、方式を守らなければ無効になるおそれがあり、方式を守っていても、内容があいまいだと相続手続きに使えなかったり、かえって相続人の間で争いの原因になったりすることがあります。

この記事では、遺言の種類ごとの特徴と、遺言書の作成を司法書士に依頼するメリット・デメリット、依頼した場合の流れを解説します。

2 主な遺言の種類と特徴

比較項目 自筆証書遺言(自宅保管) 自筆証書遺言(法務局保管) 公正証書遺言
作成方法 本文・日付・氏名を自書し、押印(財産目録は自書でなくてもよい) 同左(法務局の様式に従う) 公証人が作成。証人2人以上が必要
費用 ほぼかからない 保管手数料1通3,900円 財産の額などに応じた公証人手数料
家庭裁判所の検認 必要 不要 不要
紛失・改ざんのリスク あり 低い 低い(原本は公証役場で保管)
内容の法的チェック なし 方式の確認のみ(内容の有効性は審査されない) 公証人が関与する

このほか秘密証書遺言という方式もありますが、利用は多くありません。どの方式が適しているかは、財産の内容、相続人の状況、費用の考え方などによって変わります。

3 司法書士に依頼するメリット

3-1 相続人と財産を正確に確認したうえで作成できる

遺言の内容を考える前提として、法定相続人が誰か、遺留分を持つ人がいるかを戸籍で確認します。また、不動産は登記事項証明書をもとに正確に特定して記載するため、相続開始後に「どの不動産か分からない」「登記に使えない」といった問題を防げます。

3-2 相続登記まで見据えた書き方ができる

司法書士は、相続登記の実務を踏まえて遺言の文言を検討します。例えば、相続人に不動産を引き継がせる場合の「相続させる」という書き方と、「遺贈する」という書き方では、登記の申請方法などが異なります。遺言執行者の指定、受け取る人が先に亡くなった場合に備える予備的な条項なども、あわせて検討できます。

3-3 遺留分や将来の手続きへの配慮

特定の相続人に財産を集中させる内容の場合、他の相続人の遺留分を侵害し、相続開始後に遺留分侵害額の請求が問題になることがあります。遺留分の割合や、付言事項(遺言者の気持ちを伝える部分)の書き方も含めて、トラブルを減らす内容を一緒に検討します。

3-4 公正証書遺言の準備や証人の手配

公正証書遺言を作る場合は、必要書類の収集、公証役場との文案のやり取り、証人2人の手配などが必要です。推定相続人やその配偶者などは証人になれないため、証人を専門職に依頼することも多くあります。

4 司法書士に依頼するデメリット・注意点

  • 費用がかかる:司法書士への報酬のほか、公正証書遺言の場合は公証人手数料もかかります。報酬の額は事務所ごとに異なりますので、事前に見積もりを確認してください。
  • 業務範囲に限りがある:相続人間ですでに争いがあり、交渉や代理が必要な場合は、弁護士への相談が適しています。相続税の試算や節税対策は税理士の業務です。
  • 時間がかかる:戸籍や資料の収集、文案の調整に一定の期間がかかります。体調に不安がある場合などは、早めにご相談ください。

5 依頼した場合の流れ

  1. ご相談:財産の内容、家族関係、誰に何を残したいかをお聞きします。
  2. 資料の収集:戸籍謄本、不動産の登記事項証明書・固定資産評価証明書、預貯金の資料などを確認します。
  3. 文案の作成:遺言の方式を選び、文案を作成してご確認いただきます。
  4. 作成:自筆証書遺言の場合は文案をもとにご本人が自書し、必要に応じて法務局に保管を申請します。公正証書遺言の場合は、公証役場で作成します。
  5. 作成後:財産や家族の状況が変わったときは、遺言の見直しを検討します。

6 司法書士の役割

当事務所では、遺言の内容のご相談、戸籍・不動産資料の収集、自筆証書遺言の文案作成や法務局保管の準備、公正証書遺言の文案調整と証人のお引き受けについて、ご相談・ご依頼をお受けしています。相続開始後の遺言執行や相続登記の申請にも対応しています。

7 よくある質問

Q. 自筆証書遺言と公正証書遺言、どちらがよいですか?

A. 費用を抑えたい場合は、法務局の保管制度を利用した自筆証書遺言も選択肢になります。一方、財産が多い場合、内容が複雑な場合、ご本人が自書するのが難しい場合、相続人間の争いが心配な場合などは、公正証書遺言が適していることが多いです。

Q. 一度作った遺言は変更できますか?

A. 遺言はいつでも、遺言の方式に従って撤回・変更できます。内容が抵触する複数の遺言がある場合は、新しい遺言が優先されます。

Q. 認知症の診断を受けていても遺言は作れますか?

A. 遺言をするには、遺言の内容を理解して判断できる能力(遺言能力)が必要です。診断があるだけで直ちに作成できないわけではありませんが、後で遺言の有効性が争われるおそれがあるため、医師の意見なども踏まえて慎重に進める必要があります。

8 まとめ・ご相談の目安

遺言書は、方式だけでなく、相続手続きで実際に使える内容になっているかが重要です。次のような場合は、専門家への依頼をご検討ください。

  • 不動産を特定の人に引き継がせたい
  • 子がいない、前婚の子がいるなど、相続人の関係が複雑
  • 相続人以外の人(孫、子の配偶者、内縁の配偶者など)に財産を遺したい
  • 相続人の間で争いにならないようにしたい

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