※ この記事は、相続した未登記建物の登記に関する一般的な解説です。令和8年10月時点の法令・制度に基づいています。個別の事情により結論が異なることがありますので、具体的な判断は専門家にご相談ください。
相続した建物が未登記の場合、さまざまな問題が生じる可能性があります。登記を怠ることは大きなデメリットを招くため、適切な手続きを行うことが重要です。以下に、未登記建物の登記手続きについて詳しく解説します。
1. なぜ建物が未登記なのか
1-1. 登記と固定資産税の違い
登記を管理する機関と、固定資産税を管轄する機関は異なります。登記は国(法務省)が管理し、固定資産税は市町村が管理しています。このため、登記が行われていない建物でも、固定資産税の納税通知書が送られてくることがあります。
1-2. 登記の必要性
登記は建物の所有者が行う義務があります。所有者の権利を保護するための制度であり、新築や増築、解体時には登記が必要です。所有者が申請しなければ、未登記の状態が続いてしまいます。
1-3. 登記の仕組み
登記記録は不動産の所在、所有者、抵当権などの情報を記録する台帳です。これにより、誰のものかを明確にすることができます。登記記録は「表題部」「甲区」「乙区」の3つの部に分かれています。
2. 未登記建物のデメリット
2-1. 登記の義務
不動産登記法により、新築や増築、解体時には1か月以内に登記申請が必要です。違反した場合、10万円以下の過料が科されることがあります。また、2024年4月1日からは相続登記も義務化されています。
2-2. 所有権の保護
未登記のままでは、建物の所有権を他人に主張することができません。借地権のある土地に建物を建てた場合、登記をすることで借地権を主張することができます。
2-3. 不動産の売買
未登記でも不動産の売買は成立しますが、所有権の主張が困難になるため、買主が借入れを行う際に問題が生じることがあります。
2-4. 相続時の問題
未登記建物の所有者が亡くなると、相続人が増え、所有権の証明が難しくなることがあります。相続人が増えることで、手続きや費用が増大することもあります。
2-5. 民法改正による影響
2019年の民法改正により、法定相続分を超える相続分については登記が必要となりました。登記を怠ると、他人に所有権を主張することができなくなります。
2-6. 固定資産税の軽減措置
住宅を建てると、土地の固定資産税や都市計画税の軽減措置が適用されます。しかし、未登記の場合、市町村が建物の存在を認識しない可能性があります。過去の納税についても遡って請求されることがあります。
3. 未登記建物を相続するには
3-1. 相続の基本
未登記でも相続は可能です。遺産分割協議書には建物の所在、種類、構造、床面積などを記載し、固定資産税の評価証明書も併せて記載します。
3-2. 被相続人名義での登記
相続人が未定の場合、被相続人名義で登記することができます。不動産登記法上、表題部の登記は1か月以内に行う必要がありますが、相続人が決まっていない場合は過料を請求されることはありません。
3-3. 相続後の登記
建物を新築した人が登記せずに亡くなった場合、遺産分割協議で相続人を決め、その名義で登記を行います。表題部の登記を被相続人名義で行うことも可能ですが、債権者からの差押リスクがあるため、相続人を決めた後に登記する方が一般的です。
4. 登記の専門家に依頼する方法
4-1. 司法書士と土地家屋調査士
登記は専門家に依頼することが推奨されます。表題部の登記は土地家屋調査士、甲区と乙区の登記は司法書士が担当します。司法書士に依頼する場合、土地家屋調査士を紹介してもらうことも可能です。
4-2. 専門家の選び方
信頼できる専門家を選ぶことが重要です。インターネットでの検索や口コミを活用して、実績のある専門家を見つけましょう。
5. 登記先例で確認できる取扱い
未登記建物の相続について、登記先例と登記実務の解説書で確認できる取扱いは、次のとおりです。
- 表題登記だけある建物:登記簿の表題部に所有者として亡くなった方が載っている場合は、その相続人が所有権保存登記を申請できます(不動産登記法74条1項1号)。このときは、通常の保存登記の書類に加えて、相続を証する戸籍などを添付します。
- 相続人名義でも、亡くなった方の名義でもよい:保存登記は、相続人の名義で直接することも、亡くなった方の名義ですることもできるとされています(昭和32年10月18日民事甲第1953号)。売却などの予定があるなら、相続人名義で直接保存登記をするのが一般的です。
- 相続人が複数いる場合:共有になる場合は原則として全員が申請人になりますが、共有物の保存行為として、相続人の一人が全員のために申請することもできます。
- 表題登記もない建物:まず建物の表題登記(土地家屋調査士の業務)をし、その後に所有権保存登記をします。遺産分割で取得する人が決まっていれば、その人を所有者として表題登記をする流れになります。
まとめ
未登記建物を相続した場合、早急に登記手続きを行うことが重要です。専門家の力を借りることで、手続きをスムーズに進めることができます。未登記の状態を放置すると、多くのデメリットが生じるため、早めの対策が必要です。
※ 令和8年9月27日更新:法令・制度の内容に合わせて一部を修正しました。
相続登記を進めるときの実務上の注意
- 評価証明書・名寄帳で見つかることが多い:相続登記の準備で市区町村の固定資産評価証明書や名寄帳を取ると、登記簿にない建物(増築部分、物置、離れなど)が載っていて、未登記だと分かることがあります(亡くなった親の不動産を漏れなく調べる方法)。
- 遺産分割協議書に記載しておく:未登記建物も相続財産です。家屋番号がないため、評価証明書の所在・種類・構造・床面積などで特定して、誰が取得するかを協議書に書いておきます(遺産分割協議書の書き方)。
- 表題登記は土地家屋調査士、保存登記は司法書士:建物の表題登記(所在・構造・床面積などの登記)は土地家屋調査士の業務です。その後の所有権保存登記や、登記されている土地・建物の相続登記は、司法書士がお手伝いできます。
- 売却の予定があるとき:買主の融資や売買契約の条件として、表題登記や取壊しを求められることがあります。早めに方針を決めておきます(相続した不動産を売却するには?)。
相続登記の費用は相続登記のご案内(料金)をご覧ください。
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