※ この記事は、成年被後見人(ご本人)が亡くなった場合の成年後見人の手続きに関する一般的な解説です。この記事は令和8年10月時点の法令に基づいています。家庭裁判所への報告の方法や書式は、家庭裁判所の指示に従ってください。
1 ご本人が亡くなると、後見は終了します
成年後見は、ご本人(成年被後見人)が亡くなると終了します。成年後見人の代理権も失われ、ご本人の財産は相続人に引き継がれます(民法896条)。ただし、後見人の仕事がすぐになくなるわけではありません。家庭裁判所への報告、後見終了の登記、管理していた財産の計算と引渡しなど、終わらせるための手続きが残ります。
2 亡くなった後の手続きの流れ
| 順番 | 手続き | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 家庭裁判所への死亡の報告 | 死亡の事実が分かる書類(死亡診断書の写しや戸籍など)を添えて、速やかに報告します。 |
| 2 | 後見終了の登記 | 後見人は、ご本人の死亡を知ったときは、終了の登記を申請しなければなりません(後見登記等に関する法律8条1項)。申請先は東京法務局後見登録課のみで、郵送でも申請できます。手数料は無料です。 |
| 3 | 管理の計算(後見の計算) | 原則として2か月以内に、管理していた財産の収支を計算します(民法870条)。後見監督人がいる場合は、その立会いが必要です(民法871条)。 |
| 4 | 相続人への財産の引渡し | 通帳や印鑑、権利証などを、相続人(遺言執行者がいる場合はその人)に引き渡します。 |
| 5 | 家庭裁判所への終了の報告 | 引渡しが終わったら、引き継いだことが分かる書面(引継書など)を家庭裁判所に提出します。 |
後見終了の登記に添付する死亡の証明書類(除籍謄本や死亡診断書など)は、法務局が住民基本台帳ネットワークで死亡を確認できる場合は省略できるとされています(東京法務局の案内)。
3 亡くなった後に後見人ができること(死後事務)
後見人の代理権は亡くなった時点でなくなりますが、相続人がすぐに財産を管理できない場合に備えて、民法は、相続人が財産を管理できるようになるまでの間、後見人が次の行為をできると定めています(民法873条の2)。いずれも、必要があり、相続人の意思に反することが明らかでない場合に限られます。
- 相続財産に属する特定の財産の保存に必要な行為(例:建物の雨漏りの修理)
- 弁済期が来ている債務の支払い(例:入院費・施設利用料)
- 火葬や埋葬に関する契約の締結など(家庭裁判所の許可が必要)
4 当事務所の実務から:亡くなった後のチェックリスト
当事務所では、専門職後見人として後見業務を行うにあたり、ご本人が亡くなった場合の手続きをチェックリスト(後見業務マニュアル)にまとめ、漏れがないよう順番に進めています。
- 家庭裁判所への死亡の報告を最初に行う
- 後見終了の登記は、東京法務局の書式をダウンロードして記入し、郵送で申請する
- 管理の計算をして、収支を確定させる
- 管理財産の引渡しを相続人に行う
- 家庭裁判所に引継書を提出して終える
また、上記3の火葬・埋葬に関する契約などの許可の申立ては、必ずしなければならない手続きではないため、ご親族の状況などを確認し、必要がある場合に検討しています。
5 注意したいこと
- 相続人の間の話し合いには立ち入らない:後見人の役割は、管理していた財産を相続人に引き渡すことまでです。遺産の分け方を決めることはできません。
- 引渡し先が決まらない場合:相続人が多い、行方が分からない、相続人がいないといった場合は、引渡し先を家庭裁判所と相談しながら決めます。相続人がいない場合は、相続財産清算人の選任が問題になることがあります(相続財産清算人とは?)。
- 制度の改正:成年後見制度については、民法の改正(令和8年6月24日公布)により見直しが予定されています。施行までは現行の制度が適用されます。
6 当事務所でのご相談から:本人が亡くなった直後にすること
本人が亡くなった場合、後見人として、まず亡くなったことを確認し、死亡後の後見事務を整理します。財産や関係書類を確認し、必要な報告や引継ぎなどを進めます。
7 よくある質問
Q. 親族が後見人の場合も、同じ手続きが必要ですか?
A. はい。親族が後見人の場合でも、家庭裁判所への報告、後見終了の登記、管理の計算と引渡しが必要です。
Q. 後見人だった親族が、そのまま相続の手続きをしてもよいですか?
A. 相続の手続きは、後見人としてではなく、相続人として行うことになります。相続登記や預貯金の手続きは、相続人全員の協力が必要になるのが原則です。
8 まとめ・ご相談の目安
ご本人が亡くなると後見は終了しますが、後見人には、家庭裁判所への報告、後見終了の登記、管理の計算と財産の引渡しといった手続きが残ります。次のような場合は、ご相談をご検討ください。
- 親族として後見人をしていて、ご本人が亡くなった
- 相続人が多い、または連絡が取れない相続人がいる
- 後見終了後の相続登記・預貯金の手続きも進めたい
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この記事の監修者
司法書士 川西 祐輔(ウィルパートナー司法書士事務所 代表)
大阪司法書士会所属(登録番号 大阪第4855号)/簡裁訴訟代理等関係業務認定/公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート会員。相続登記・遺言・相続放棄・成年後見・債務整理・不動産登記・商業登記を取り扱っています。