※ この記事は、不動産の共有持分の放棄に関する一般的な解説です。この記事は令和8年9月時点の法令・制度に基づいています。税金の取扱いは税理士・税務署・都道府県税事務所にご確認ください。個別の事情により結論が異なることがありますので、具体的な判断は専門家にご相談ください。
1 共有持分の放棄とは
共有者は、自分の持分を放棄することができます。共有者の一人が持分を放棄したときは、その持分は他の共有者に帰属します(民法255条)。例えば、A・B・Cが3分の1ずつ共有する土地で、Cが持分を放棄すると、Cの持分はAとBにそれぞれ持分の割合に応じて帰属し、AとBが2分の1ずつの共有になります。
「管理が負担なので共有関係から抜けたい」「固定資産税の負担をなくしたい」という理由で検討されることがありますが、次のような注意点があります。
2 相続放棄との違い
| 比較項目 | 共有持分の放棄 | 相続放棄 |
|---|---|---|
| 対象 | 自分が持っている特定の不動産の持分 | 亡くなった方の財産と負債の全部 |
| 手続き | 意思表示をし、他の共有者と共同で登記をする | 家庭裁判所に申述する |
| 期限 | 特になし | 原則として相続人になったことを知った時から3か月以内 |
| 放棄した持分の行方 | 他の共有者に帰属する | 次順位の相続人などに移る |
相続した不動産のうち、共有になった持分だけを手放したいという場合、相続放棄ではその不動産だけを放棄することはできません。相続放棄の期限内であれば、どちらが適しているかを比較して検討します。
3 登記は他の共有者と共同で申請します
持分の放棄は、意思表示だけで効力が生じるとされていますが、登記簿上の名義を変えるには、持分を放棄した人(登記義務者)と、持分が帰属する他の共有者(登記権利者)が共同で「持分放棄」を原因とする持分移転の登記を申請する必要があります。
- 放棄する人は、登記識別情報(または登記済証)と印鑑証明書(発行後3か月以内)・実印が必要です。
- 持分が帰属する他の共有者の住民票などが必要です。
- 登録免許税は、放棄した持分に相当する固定資産税評価額の1,000分の20です(相続による移転ではないため、相続の税率1,000分の4は適用されません)。
他の共有者が登記に協力してくれない場合は、放棄した人だけでは登記ができません。協力を求める交渉や訴訟が必要になる場合は、弁護士へのご相談が必要になります。
4 税金の注意点
4-1 他の共有者に贈与税がかかることがある
国税庁の相続税法基本通達では、共有者の一人がその持分を放棄(相続の放棄を除く)したときは、その持分は、他の共有者がその持分に応じて贈与により取得したものとして取り扱うとされています(相続税法基本通達9-12)。放棄された持分の価額によっては、他の共有者に贈与税がかかる可能性があります。
4-2 その他の税金
- 不動産取得税:持分が帰属した共有者に課税されるかどうかは、都道府県税事務所にご確認ください。
- 固定資産税:毎年1月1日時点の所有者(登記名義人など)に課税されるため、放棄の登記をした年の分は、原則として放棄した人にも課税されます。
5 放棄以外の選択肢
- 他の共有者に売却する:対価を得て持分を手放せます。価格を著しく低くすると贈与と扱われるおそれがあります。
- 他の共有者に贈与する:登記や税金の扱いは持分放棄と近いですが、贈与する相手を選べる点が異なります(持分放棄では、他の共有者全員に持分の割合で帰属します)。
- 共有物分割を求める:代償金を受け取るなどして共有を解消します。
- 共有者全員で不動産を売却する、または相続土地国庫帰属制度を利用する:国庫帰属制度は、共有の土地の場合は共有者全員で申請する必要があります。
6 司法書士の役割
司法書士は、持分放棄・持分贈与・持分売買による持分移転の登記、放棄の前提となる相続登記、手続きに必要な書類の作成についてご相談・ご依頼をお受けできます。他の共有者が登記に協力しない場合の交渉や訴訟の代理は、司法書士が対応できる範囲に限りがあるため、弁護士へのご相談をご案内しています。
7 よくある質問
Q. 他の共有者に知らせずに持分を放棄できますか?
A. 放棄の意思表示は他の共有者に対して行うのが一般的で、登記も他の共有者と共同で申請する必要があります。そのため、他の共有者に知らせずに登記名義を変えることはできません。
Q. 放棄された持分を受け取りたくない場合は?
A. 民法上、放棄された持分は他の共有者に帰属するとされています。受け取った後に、さらに売却や共有物分割などで整理することを検討します。
8 まとめ・ご相談の目安
共有持分を放棄すると、その持分は他の共有者に帰属しますが、名義を変えるには他の共有者と共同で登記をする必要があり、他の共有者に贈与税がかかる可能性もあります。次のような場合は、ご相談をご検討ください。
- 共有持分を手放したいが、放棄・売却・贈与のどれがよいか迷っている
- 他の共有者から持分を放棄すると言われた
- 相続した共有持分の扱いに困っている
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