※ この記事は、家族信託(民事信託)の基本に関する一般的な解説です。この記事は令和8年9月時点の法令・制度に基づいています。信託の設計は財産や家族の状況によって大きく異なり、税金の検討も必要になるため、具体的な判断は専門家にご相談ください。
1 結論:家族信託は、元気なうちに財産の管理・処分を家族に託しておく仕組みです
家族信託(民事信託)は、財産を持つ人(委託者)が、信頼できる家族など(受託者)に財産を託し、決められた目的に従って、特定の人(受益者)のために管理・処分してもらう仕組みです(信託法2条・3条)。多くの場合、親が委託者兼受益者となり、子が受託者となって、親の自宅や賃貸物件などを管理します。
親が認知症などで判断能力が低下した後も、受託者である子が、信託契約で定めた範囲で不動産の管理や売却を進められる点が大きな特徴です。
2 成年後見・遺言との違い
2-1 成年後見との違い
成年後見は、判断能力が低下した後に家庭裁判所が後見人等を選び、本人の財産を守るために管理する制度です。本人のための財産管理が原則で、自宅の売却には家庭裁判所の許可が必要になる場合があるなど、柔軟な運用は難しい面があります(なお、成年後見制度は令和8年6月24日公布の改正民法により見直しが予定されており、施行後は内容が変わります)。家族信託は、判断能力があるうちに契約で管理方法を決めておくため、より柔軟な設計が可能です。
2-2 遺言との違い
遺言は、亡くなった後の財産の承継先を決めるものです。家族信託では、生前の管理から、亡くなった後に誰に財産を渡すか(さらにその次の承継先)まで、契約で定めることができる場合があります。
3 家族信託が検討される主な場面
- 親が認知症になった後も、実家の売却や賃貸物件の管理を子が行えるようにしたい
- 障がいのある子の将来の生活のために財産を管理したい
- 不動産の承継先を、次の世代まで指定したい
- 共有になりそうな不動産の管理を、一人の受託者にまとめたい
4 手続の流れ
- 財産と家族の状況を整理し、信託の目的・財産・受託者・受益者・終了時の帰属先などを設計する
- 信託契約書を作成する(公正証書で作成することが多いです)
- 不動産を信託する場合は、所有権移転と信託の登記を申請する
- 金銭を信託する場合は、受託者名義の信託専用口座を用意する
- 受託者が信託財産を管理し、帳簿の作成や受益者への報告を行う
5 信託登記の基本
不動産を信託すると、登記簿上の所有者は受託者となり、あわせて信託の内容(信託目録)が登記されます。受託者は自分の財産と信託財産を分けて管理する義務(分別管理義務)を負います。信託の登記には登録免許税がかかります。
6 注意したいポイント
- 判断能力があるうちにしかできない:委託者が契約内容を理解できる状態であることが必要です。
- 受託者の負担と責任:受託者は信託の目的に従って誠実に管理する義務を負います。
- 税金の検討:信託の設計によって贈与税などの課税関係が生じることがあるため、税理士への確認が欠かせません。
- すべてを解決できるわけではない:身上保護(施設入所の契約など)は信託の範囲外であり、任意後見などとの併用を検討することがあります。
- 遺留分への配慮:承継先の定め方によっては、遺留分の問題が生じる可能性があります。
7 司法書士の役割
司法書士は、家族信託のご相談、信託契約書の文案作成のサポート、公証役場との調整、不動産の信託登記の申請について、ご相談・ご依頼をお受けできます。税金面は税理士へのご相談をご案内しています。
8 よくある質問
Q. 親がすでに認知症と診断されていても家族信託はできますか?
A. 契約時点で内容を理解できる判断能力が必要です。症状の程度によっては難しい場合があり、その場合は成年後見の利用を検討します。
Q. 家族信託をすると、親は自宅に住めなくなりますか?
A. 登記簿上の名義は受託者に変わりますが、親を受益者とすれば、親はこれまでどおり自宅に住み続けることができます。
Q. 費用はどのくらいかかりますか?
A. 信託する財産の額や内容によって大きく異なります。専門家への報酬のほか、公正証書の作成費用や登録免許税などの実費がかかります。
9 まとめ・ご相談の目安
家族信託は、判断能力があるうちに財産の管理・処分を家族に託す仕組みで、成年後見や遺言にはない柔軟性があります。次のような場合には、ご相談をご検討ください。
- 親の認知症に備えて、実家の管理・売却の方法を決めておきたい
- 成年後見・遺言・家族信託のどれが合っているか知りたい
- 信託契約書の作成や信託登記を任せたい
当事務所では、家族信託のご相談から信託登記まで、ご相談・ご依頼をお受けしています。
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