コラム

昭和の相続は法定相続分が今と違う?昭和56年1月1日より前の相続で注意すること

※ 本文中の事例は、実務で見られる典型的な問題を一般化した仮想の例であり、実在の依頼者・案件ではありません。この記事は令和8年9月時点の法令・制度に基づいています。

1 結論:法定相続分は「亡くなった日」で決まる規定が違います

相続分などのルールは、その相続が始まった時(被相続人が亡くなった時)の民法が基準になります。昭和56年1月1日より前に始まった相続には、改正前の民法が適用されるため、現在の法定相続分とは割合が異なります。古い相続を整理するときは、まず亡くなった日を戸籍で確認することが出発点です。

2 昭和56年1月1日が境目です

昭和55年に成立した法律(昭和55年法律第51号)により、配偶者の相続分などが見直されました。この法律は昭和56年1月1日から施行され、附則で、施行前に開始した相続については、なお改正前の民法の規定を適用すると定められています。

3 改正前後の法定相続分の比較

配偶者と、他の相続人が同順位でいる場合の割合は次のとおりです(改正前の配偶者の割合は法務省の資料、改正後は現行民法900条)。他の相続人の割合は、残りを等しく分けたものです。

相続人の組合せ 昭和56年1月1日以後に開始した相続 昭和56年1月1日より前に開始した相続
配偶者と子 配偶者2分の1/子(全員で)2分の1 配偶者3分の1/子(全員で)3分の2
配偶者と直系尊属(父母など) 配偶者3分の2/直系尊属(全員で)3分の1 配偶者2分の1/直系尊属(全員で)2分の1
配偶者と兄弟姉妹 配偶者4分の3/兄弟姉妹(全員で)4分の1 配偶者3分の2/兄弟姉妹(全員で)3分の1

4 具体例(仮想の例)

昭和50年代の前半に父が亡くなり、母と子3人が相続人だった場合を考えます。

  • 昭和56年1月1日より前の相続なので、改正前の規定で、母3分の1、子は全体で3分の2を3人で等分(1人9分の2)となります。
  • 仮に同じ家族で、現在の法定相続分を当てはめると、母2分の1、子は1人6分の1になり、結論が変わってしまいます。

5 そのほか注意したい点

  • 兄弟姉妹が相続人になる場合の代襲相続:昭和55年の改正で、兄弟姉妹の代襲相続は甥・姪までに制限されました(法務省資料)。改正前の相続には、この制限がありませんでした。
  • 嫡出でない子がいる場合:嫡出でない子の相続分を嫡出子の2分の1とする規定は、平成25年の改正で削除されましたが、改正後の規定が適用されるのは、原則として平成25年9月5日以後に開始した相続です(法務省の案内。最高裁決定を受けて、平成13年7月1日から平成25年9月4日までに開始した相続で遺産分割が終わっていないものも同等に扱われます)。それ以前の相続では、当時の規定を前提に、個別に確認が必要です。
  • さらに古い相続:昭和22年の民法改正で家督相続制度が廃止されています(法務省資料)。それ以前の相続は、別の制度が適用されるため、本記事の対象外です。専門家への相談をおすすめします。

6 司法書士実務上の注意点

  • 古い相続が未了のまま次の相続が重なっている(数次相続)場合は、それぞれの相続について、開始した時期に応じた規定を確認します。一次相続は改正前、二次相続は現行、ということも起こります。
  • 相続人の範囲は、戸籍で確認した亡くなった日を基準に整理します。亡くなった日が読み取りにくい古い戸籍は、判読に注意が必要です。
  • 法定相続分は、あくまで基準です。遺産分割協議で全員が合意すれば、法定相続分と異なる分け方も可能ですが、協議の前提として、相続人の範囲と法定相続分を正しく把握しておく必要があります。
  • 古い相続で登記が未了のままでも、相続登記の申請義務の対象になります。令和9年3月31日までの期限があります。

7 よくある質問

Q. 亡くなった日が昭和56年1月1日の前か後か、どこで分かりますか?

A. 被相続人の除籍謄本などの戸籍で、死亡日を確認できます。

Q. 昭和の相続でも、遺産分割協議はできますか?

A. できます。相続人全員が協議に参加し、合意すれば分け方を決められます。相続人が亡くなっている場合は、その相続人の相続人が参加します。

Q. 改正前の相続分で登記してしまっても、間違いになりませんか?

A. 相続分は、相続開始時の規定に従って判断します。登記する内容が、相続開始の時期と合っているかどうか、事前に確認することが大切です。

8 まとめ・ご相談の目安

昭和56年1月1日より前に始まった相続は、現在の法定相続分とは異なります。次のような場合は、ご相談ください。

  • 亡くなった日が、昭和56年1月1日の前か後かを確認したい
  • 相続人が多数で、数次相続が重なっている
  • 嫡出でない子の有無や、相続分の扱いが気になる

当事務所では、戸籍による相続人の調査・整理と、相続登記の申請について、ご相談・ご依頼をお受けしています。

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