※ この記事は、所有不動産記録証明制度(不動産登記法119条の2)に関する一般的な解説です。この記事は令和8年10月時点の法令・制度に基づいています。個別の事情により結論が異なることがありますので、具体的な判断は専門家にご相談ください。
亡くなった親がどこに不動産を持っていたか分からない――相続登記の相談で多い悩みです。令和8年(2026年)2月2日から、特定の人が登記名義人になっている不動産を全国から一覧にして証明してもらえる「所有不動産記録証明制度」が始まりました。この記事では、制度の内容と、相続の場面で使うときの注意点を解説します。
1 結論:相続人は、亡くなった人名義の不動産の一覧を法務局に請求できます
不動産登記法119条の2により、だれでも自分が所有権の登記名義人になっている不動産の一覧(所有不動産記録証明書)を請求できます。また、相続人その他の一般承継人は、亡くなった人(被承継人)の所有不動産記録証明書を請求できます(同条2項)。
ただし、検索は登記記録上の氏名・住所を手がかりに行うため、登記簿の住所・氏名が古いままの不動産や、未登記の建物は一覧に出てこないことがあります。この制度だけで「漏れなし」とは言い切れない点が、相続での使い方のポイントです。
2 制度が作られた背景
相続登記がされないまま所有者が分からなくなった土地(所有者不明土地)が増えたことを受け、令和6年4月1日から相続登記が義務化されました(相続登記の義務化)。しかし、相続人が不動産の存在そのものを知らなければ、登記のしようがありません。そこで、名義人ごとに不動産を横断的に調べられる仕組みとして、この制度が設けられました。
3 請求できる人・請求先・方法
- 請求できる人:所有権の登記名義人本人(法人を含む)、その相続人その他の一般承継人、これらの人から委任を受けた代理人
- 請求先:全国の法務局・地方法務局(支局・出張所を含む)
- 方法:窓口・郵送による書面請求、またはオンライン請求
- 検索条件:氏名(名称)と住所。過去の氏名・住所を検索条件にすることもできます(その氏名・住所を証する戸籍・除籍謄本などの提出が必要になる場合があります)
相続人が請求する場合は、亡くなった人との相続関係が分かる戸籍謄本などの添付が必要です。
4 手数料
手数料は、検索条件1件につき1通あたり、書面請求で1,600円、オンライン請求で郵送交付1,500円・窓口交付1,470円です(令和8年9月時点)。該当する不動産がない場合も「記録がない」旨の証明書が交付され、手数料は返還されません。
5 一覧に載らない不動産があることに注意
所有不動産記録証明書に載らない、または載らないおそれがある不動産として、次のものがあります。
- 登記簿上の住所・氏名が、検索条件と一致しない不動産(引越しや結婚の後に住所・氏名変更登記をしていない場合)
- 亡くなった人がさらに前の代から相続したが、相続登記をしていない不動産(登記名義が祖父母のままの場合など)
- 表題登記のない未登記建物や、表題部所有者だけが記録され所有権の登記がない不動産(表示に関する登記のみの不動産は検索の対象になりません)
- 登記簿がコンピュータ化されていない不動産
そのため、亡くなった人の過去の住所(住民票の除票・戸籍の附票で確認できるもの)や旧姓も検索条件に加えて請求することが考えられます。
6 ほかの調べ方と組み合わせる
不動産の調査では、従来の方法と組み合わせることが大切です(名寄帳・評価証明書・所有不動産記録証明書の使い分け)。
- 固定資産税の納税通知書:課税される不動産は分かりますが、非課税の土地(私道など)は載らないことがあります
- 名寄帳:市区町村ごとの一覧のため、他の市区町村にある不動産は分かりません。未登記建物が載っていることがあります
- 権利証(登記識別情報通知)・売買契約書などの書類:昔取得した不動産の手がかりになります
7 よくある質問
Q. 相続人の一人だけで請求できますか?
A. 相続人であれば、ほかの相続人の同意がなくても請求できます。相続関係を示す戸籍謄本などが必要です。
Q. 一覧に出てきた不動産はすべて相続登記が必要ですか?
A. 亡くなった人名義の不動産は、相続登記の義務の対象になります。ただし、共有持分や私道持分など見落としやすいものもあるため、登記事項証明書で内容を確認してから手続きを進めます。
Q. 昔の住所しか分からない場合はどうしますか?
A. 住民票の除票や戸籍の附票で過去の住所をたどり、検索条件に加えて請求します。保存期間を過ぎて取得できない場合もあります(戸籍の附票が取れない場合)。
8 まとめ・ご相談の目安
所有不動産記録証明制度は、相続財産の調査に役立つ一方、登記簿の住所・氏名が古いままの不動産は拾えないことがあります。名寄帳などと組み合わせ、見つかった不動産は相続登記と、必要に応じて住所・氏名変更登記まで済ませておくことが、将来の登記漏れを防ぐことにつながります(住所・氏名変更登記の義務化)。
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