※ 本文中の事例は、実務で見られる典型的な問題を一般化した仮想の例であり、実在の依頼者・案件ではありません。この記事は令和8年9月時点の法令・制度に基づいています。
1 結論:「亡くなった順番」で決まります
相続人になるはずだった人が亡くなっていたとき、その人の子などが相続に関わる形は2種類あります。亡くなった時期が、被相続人(亡くなった方)より先なら「代襲相続」、後なら「数次相続」です。同じように「相続人が亡くなっている」状況でも、手続きも当事者の範囲も変わるため、まず死亡の順番を戸籍で確認することが出発点になります。
2 数次相続とは
法務局の資料では、ある相続が開始し(一次相続)、その相続の登記が未了の間に、その相続人が死亡して新たに相続が開始した場合(二次相続)を、数次相続の場面として扱っています。たとえば父が亡くなり、遺産分割や登記が終わる前に長男が亡くなった場合です。相続人は、相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します(民法896条)。そのため、長男が父の相続人として持っていた立場は、長男自身の相続人(配偶者や子など)に引き継がれます。
このとき、父の遺産をどう分けるかの話し合いには、長男の相続人が、長男の立場で参加することになります。
3 代襲相続とは
反対に、長男が父より先に亡くなっていた場合、長男の子(父から見て孫)が、長男に代わって相続人になります。これが代襲相続です(民法887条2項)。この場合、長男の配偶者は代襲相続人にはなりません。
4 二つの違い
| 数次相続 | 代襲相続 | |
|---|---|---|
| 亡くなった順番 | 被相続人の死亡の後に相続人が死亡 | 被相続人の死亡の前に相続人が死亡 |
| 新たに関わる人 | 亡くなった相続人の相続人(配偶者・子など) | 亡くなった相続人の子(直系卑属) |
| 配偶者の関与 | 亡くなった相続人の配偶者も関与 | 亡くなった相続人の配偶者は代襲相続人にならない |
| 必要な戸籍 | 被相続人と、途中で亡くなった相続人の両方の戸籍 | 被相続人の戸籍と、先に亡くなった子の戸籍 |
5 数次相続が起きたときの手続き
- 戸籍を集める:被相続人の出生から死亡までの戸籍に加え、途中で亡くなった相続人についても、その相続人としての相続人を確認できる戸籍が必要になります。
- 相続人全員を確定する:亡くなった相続人の相続人が複数いると、話し合いの当事者が一気に増えます。
- 遺産分割協議:被相続人の遺産について、生存している相続人と、亡くなった相続人の相続人が全員で協議します。
- 相続登記:法務局の案内によると、最終の相続以外の相続について共同相続人が複数いる場合は、一件の申請でまとめて登記することができません。一方、最初の相続が単独相続である場合に限り、登記原因とその日付を連記して、登記名義人から最終の相続人へ直接、相続登記を申請できるとされています(途中の登記を省略できる場合)。どちらに当たるかは、戸籍で相続人の人数を確認して判断します。
- 主な添付書類:被相続人の出生から死亡までの戸籍、各相続人の戸籍、相続人全員の住民票の写しなどです(法務局の記載例による)。相続関係説明図を提出すれば、戸籍等の原本の還付を受けられます。
6 司法書士実務上の注意点
- 亡くなった人が複数いる場合は、相続の段階が増え、戸籍の収集範囲が大きく広がります。戸籍が足りないまま協議を進めると、後で相続人の漏れが見つかるおそれがあります。
- 承継する相続人の一部の所在が分からない、または疎遠で連絡を取りにくいケースがある場合があります。住所の調査には、戸籍の附票などを使います。
- 古い相続が未了のまま次の相続が重なっていると、当時の法律が今と違う可能性があり、法定相続分の確認が必要です。
- 相続登記の申請義務化の期限が関わる場合があります。
7 よくある質問
Q. 相続人が亡くなったことに、今まで気づかず遺産分割の話を進めていました。どうなりますか?
A. 亡くなった相続人の相続人が新たに当事者となる可能性があります。まず戸籍で、亡くなった時期と承継する人を確認する必要があります。
Q. 亡くなった相続人に配偶者がいる場合、その配偶者も遺産分割に参加しますか?
A. 数次相続では、亡くなった相続人の相続人として、配偶者も関わる場合があります。代襲相続との大きな違いです。
Q. 数次相続の登記は一度にまとめてできますか?
A. 最初の相続が単独相続である場合に限り、途中の相続を省略して、最終の相続人名義に直接登記できるとされています(法務局のQ&A)。最初の相続の相続人が複数いる場合は、相続ごとの登記が必要になります。
8 まとめ・ご相談の目安
相続人が途中で亡くなった場合は、死亡の順番を戸籍で確認し、数次相続か代襲相続かを見分けることが第一歩です。次のような場合には、ご相談をご検討ください。
- 亡くなった相続人が複数いる
- 承継する相続人の所在が分からない、連絡が取りにくい
- 相続人同士で意見が分かれ、話し合いが進まない(この場合は、必要に応じて弁護士への相談も検討します)
当事務所では、相続人の調査(戸籍の収集)、遺産分割協議書の作成、相続登記の申請について、ご相談・ご依頼をお受けしています。

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