コラム

一度書いた遺言書は書き直せる?遺言の撤回・変更の方法と、複数の遺言がある場合の扱い

※ この記事は、遺言の撤回・変更に関する一般的な解説です。この記事は令和8年9月時点の法令・制度に基づいています。

1 結論:遺言は、遺言者が生きている間であれば、いつでも撤回・変更できます

遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、遺言の全部または一部を撤回することができます(民法1022条)。「以前書いた遺言の内容を変えたい」「財産の状況が変わった」という場合でも、新しい遺言を作ることで対応できます。

2 撤回・変更の主な方法

2-1 新しい遺言で撤回する

「令和○年○月○日付けの遺言を全部撤回する」と書いた新しい遺言を作成する方法です。撤回のための遺言は、前の遺言と同じ方式である必要はなく、例えば公正証書遺言を自筆証書遺言で撤回することもできます(方式の要件を満たすことが前提です)。

2-2 内容が抵触する遺言を作る(みなし撤回)

前の遺言と後の遺言の内容が抵触する場合、抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます(民法1023条1項)。抵触しない部分は、前の遺言も有効なまま残ります。

2-3 遺言の内容と異なる生前処分をする

遺言で「自宅を長男に相続させる」と書いた後に、その自宅を売却した場合など、遺言後の生前処分が遺言と抵触するときも、その部分は撤回したものとみなされます(民法1023条2項)。

2-4 遺言書を故意に破棄する

遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、破棄した部分について撤回したものとみなされます(民法1024条)。ただし、公正証書遺言の原本は公証役場に保管されているため、手元の正本や謄本を破っても撤回にはなりません。公正証書遺言を撤回するには、新しい遺言を作成する必要があります。

3 自筆証書遺言の一部だけを直したい場合

自筆証書遺言の加除訂正は、変更の場所を指示し、変更した旨を付記して特に署名し、かつ変更の場所に押印しなければ効力を生じません(民法968条3項)。訂正の方法を誤ると、訂正が無効になったり、どちらが正しい内容か争いになったりするおそれがあります。訂正箇所が多い場合は、全文を書き直すほうが安全です。

法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用している場合は、保管の申請を撤回して遺言書の返還を受けたうえで書き直したり、新しい遺言書を改めて保管申請したりする方法があります。

4 複数の遺言が見つかった場合

  • 日付が新しい遺言が優先され、前の遺言と抵触する部分は撤回したものとみなされます。
  • 抵触しない部分は、両方の遺言がそれぞれ有効です。
  • 自宅などで見つかった自筆証書遺言は、それぞれ家庭裁判所の検認が必要です。

そのため、遺言書に日付を正確に書くことはとても重要です。新しい遺言を作る際は、前の遺言をどうするか(全部撤回するのか、一部だけ変更するのか)を明確に書いておくと、相続人の混乱を防げます。

5 撤回した遺言は復活するか

いったん撤回した遺言は、撤回した行為がさらに撤回されたり、効力を失ったりしても、原則として効力を回復しません(民法1025条)。以前の内容に戻したい場合は、改めて同じ内容の遺言を作成するのが確実です。

6 令和8年改正民法による見直し

令和8年6月24日に公布された改正民法により、自筆証書遺言の押印を任意とする見直し(公布から1年を超えない範囲で政令で定める日に施行予定)などが予定されています。施行日より前に作成・訂正する場合は、現行法どおり押印が必要です。

7 司法書士の役割

司法書士は、遺言の書き直しや撤回の方法のご相談、新しい遺言書の文案作成のサポート、公正証書遺言の作成支援、相続開始後の遺言に基づく相続登記について、ご相談・ご依頼をお受けできます。

8 よくある質問

Q. 遺言を撤回する権利を放棄する約束はできますか?

A. 遺言者は、遺言を撤回する権利を放棄することができません(民法1026条)。「もう書き直さない」と約束しても、その約束に法的な拘束力はありません。

Q. 家族に知られずに書き直せますか?

A. 遺言の作成・撤回に家族の同意は不要です。ただし、相続開始後に遺言が見つからないと意味がないため、保管方法には注意しましょう。

Q. 認知症と診断された後でも書き直せますか?

A. 遺言をする時点で意思能力があれば可能ですが、後で有効性が争われるおそれがあります。医師の診断書を用意するなど、慎重な対応が必要です。

9 まとめ・ご相談の目安

遺言は、生きている間であればいつでも撤回・変更できます。方法を誤ると意図しない結果になるおそれがあるため、次のような場合にはご相談をご検討ください。

  • 以前作った遺言の内容を変えたい
  • 公正証書遺言を撤回・変更したい
  • 複数の遺言書が見つかり、どれが有効か分からない

当事務所では、遺言書の作成・書き直しのサポート、遺言に基づく相続登記について、ご相談・ご依頼をお受けしています。

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