※ 本文中の事例は、実務で見られる典型的な問題を一般化した仮想の例であり、実在の依頼者・案件ではありません。この記事は令和8年9月時点の法令・制度に基づいています。
1 結論:数次相続の持分は「各段階の法定相続分を掛け合わせて」計算します
相続登記が済まないうちに、相続人の一人が亡くなり、次の相続(数次相続)が発生した場合、最終的にその人が承継する持分は、「一次相続での法定相続分」×「二次相続での法定相続分」という形で、段階ごとの相続分を掛け合わせて求めます。文章で説明すると分かりにくいため、以下、仮想の数値例で確認します。
2 数次相続とは(前提のおさらい)
数次相続とは、ある相続(一次相続)の登記が未了のうちに、その相続人の一人が亡くなり、新たな相続(二次相続)が始まることをいいます。「誰が相続人になるか」という論点は、代襲相続との違いを含めて別の記事で扱っています。本記事では、相続人が確定した後の「持分の計算方法」に絞って解説します。
3 具体例でみる持分の計算方法(仮想の数値例)
以下は、理解のための仮想の設例です。実在の家族構成・持分割合ではありません。
設例:被相続人(一次)の法定相続人が、配偶者と子2人(子Aと子B)の合計3人だったとします。この場合の法定相続分は、配偶者2分の1、子Aと子Bがそれぞれ4分の1ずつです(民法900条1号・4号)。
ところが、相続登記をする前に、子Aが亡くなり(二次相続)、子Aの相続人が、その配偶者と子(被相続人からみて孫)1人の合計2人だったとします。この場合、二次相続における法定相続分は、子Aの配偶者が2分の1、孫が2分の1です(民法900条1号・4号)。
このとき、一次相続の被相続人の不動産について、子Aが本来持っていたはずの持分(4分の1)は、二次相続によってさらに分割されます。
- 子Aの配偶者が承継する持分:4分の1 ×(二次相続の配偶者の相続分)2分の1 = 8分の1
- 孫が承継する持分:4分の1 ×(二次相続の子の相続分)2分の1 = 8分の1
最終的な一次相続の不動産の持分は、配偶者(一次)が2分の1、子Bが4分の1、子Aの配偶者(二次)が8分の1、孫(二次)が8分の1となり、合計すると2分の1+4分の1+8分の1+8分の1=1(全体)になります。
このように、数次相続の持分計算は、各段階の法定相続分を分数のまま掛け算し、最後に通分して確認する、という手順で行います。
4 相続登記義務化との関係
令和6年4月1日から、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をすることが義務化されました(改正不動産登記法)。数次相続が生じている場合、それぞれの相続について申請義務が生じ得るため、早い段階で持分関係を整理しておくことが、義務化への対応としても有用です。
5 計算時に注意したいポイント
- 相続放棄をした人がいる場合、その人は最初から相続人でなかったものとみなされるため(民法939条)、相続分の計算から除外されます。
- 数次相続が3段階以上に及ぶ場合も、考え方は同じで、各段階の相続分をさらに掛け合わせていきます。
- 遺産分割協議によって、法定相続分と異なる割合で分けることに相続人全員が合意した場合は、法定相続分どおりにはなりません。本記事の計算方法は、遺産分割協議が未了で法定相続分による場合の考え方です。
6 司法書士の役割
数次相続が生じている場合の持分計算、必要な戸籍の収集、相続関係説明図の作成、相続登記の申請については、司法書士がご相談・ご依頼をお受けしています。相続人の間で分割方法について意見が分かれる場合の交渉や調整は、司法書士の業務範囲を超えることがあり、その場合は弁護士へのご相談をご案内しています。
7 よくある質問
Q. 三次相続、四次相続と続いた場合はどうなりますか?
A. 考え方は同じで、各段階の法定相続分をそのまま掛け合わせていきます。段階が増えるほど分母が大きくなり、計算が複雑になるため、専門家に確認することをおすすめします。
Q. 持分の計算を間違えたまま登記してしまうとどうなりますか?
A. 登記された持分が実際の相続分と異なる場合、更正登記等の手続が必要になることがあります。事前の正確な計算が重要です。
Q. 遺産分割協議をすれば、この計算方法と異なる割合にできますか?
A. はい。相続人全員の合意があれば、法定相続分と異なる割合で分けることができます。本記事の計算は、法定相続分による場合の考え方です。
8 まとめ・ご相談の目安
数次相続が発生した場合の持分は、各段階の法定相続分を掛け合わせて計算します。次のような場合には、ご相談をご検討ください。
- 相続登記が済まないうちに、相続人の一人が亡くなった
- 自分の最終的な持分割合が分からない
- 不動産を売却する前に、持分関係を整理しておきたい
当事務所では、数次相続における持分の整理、戸籍の収集、相続関係説明図の作成、相続登記の申請について、ご相談・ご依頼をお受けしています。

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