※ この記事は、法務局における自筆証書遺言書保管制度に関する一般的な解説です。この記事は令和8年9月時点の法令・制度に基づいています。手数料・様式は、法務省の案内もあわせてご確認ください。なお、令和8年6月24日に遺言制度の見直しを含む改正民法が公布されており、施行後は一部の取扱いが変わる予定です(本文6-2参照)。
1 結論:1通3,900円で、自筆の遺言書を法務局(遺言書保管所)に預けられます
自筆証書遺言は手軽に作成できる反面、紛失・改ざん・発見されないといったリスクや、相続開始後に家庭裁判所の検認が必要になるという負担があります。自筆証書遺言書保管制度を利用すると、遺言書の原本と画像データが法務局で保管され、相続開始後の検認も不要になります(法務局における遺言書の保管等に関する法律11条)。
2 主な手数料
- 遺言書の保管の申請:1件(遺言書1通)につき3,900円
- 遺言書の閲覧(モニター):1回につき1,400円
- 遺言書の閲覧(原本):1回につき1,700円
- 遺言書情報証明書の交付:1通につき1,400円
- 遺言書保管事実証明書の交付:1通につき800円
手数料は収入印紙で納めます。保管の申請の撤回や、遺言者の住所等の変更の届出には手数料はかかりません。
3 預けるための様式のルール
法務局ではスキャナで遺言書を読み取るため、次のような様式が求められます。
- 用紙はA4サイズ
- 余白:上部5ミリメートル、下部10ミリメートル、左20ミリメートル、右5ミリメートル以上
- 片面のみに記載(財産目録も同様)
- 複数ページの場合は各ページにページ番号(例:1/2、2/2)
- ホチキス等で綴じない
財産目録は自書でなくパソコンでの作成や登記事項証明書のコピー等でも認められますが、その場合は目録の全ページに署名押印が必要です(民法968条2項)。本文は、全文・日付・氏名を自書し、押印することが必要です(同条1項)。
※ 押印の要件は、下記6-2の改正により任意とされる予定です。改正法の施行日より前に作成する遺言書は、現行法どおり押印してください。
4 申請の流れ
- 遺言書を作成する(封筒には入れず、封をしない)
- 保管の申請をする遺言書保管所(法務局)を決める(遺言者の住所地・本籍地・所有する不動産の所在地のいずれかを管轄する遺言書保管所)
- 申請書を作成し、予約をとる
- 遺言者本人が出頭して申請する(本人確認が行われます)
- 保管証を受け取る
代理人による申請はできません。体調等で出向くことが難しい場合は、公正証書遺言など他の方法も検討することになります。
5 制度のメリットと限界
5-1 メリット
- 紛失・改ざん・隠匿のおそれが小さい
- 相続開始後の検認が不要
- 遺言者があらかじめ希望すれば、遺言者の死亡後に指定した方へ遺言書が保管されている旨を通知してもらえる仕組みがある(指定者通知)
5-2 限界(注意点)
- 法務局は様式面を確認しますが、遺言の内容が有効か、意図どおりの効果が生じるかまでは確認しません。
- 財産の特定が不十分、相続人以外への遺贈の書き方が不明確、といった内容面の不備があると、相続手続で使えない・争いになるおそれがあります。
保管制度を使う場合も、内容については事前に専門家の確認を受けておくと安心です。
6 相続開始後の手続と今後の制度改正
6-1 相続開始後の手続
相続人などは、遺言書保管所で遺言書情報証明書の交付を受け、これを使って相続登記や預貯金の手続を進めます。遺言書情報証明書の交付を受けるには、遺言者の出生から死亡までの戸籍謄本等や相続人全員の戸籍謄本、住民票の写しなどが必要です(法定相続情報一覧図の写しで代えることもできます)。
6-2 改正民法(令和8年6月24日公布)による見直し
令和8年6月17日に成立し、同月24日に公布された「民法等の一部を改正する法律」により、遺言制度について次のような見直しが予定されています。
- 自筆証書遺言の押印を任意とする(公布から1年を超えない範囲で政令で定める日に施行予定)
- パソコン等で作成したデータ等を法務局に提供し、本人が遺言の全文を口述するなどしたうえで法務局が保管する「保管証書遺言」を創設する(公布から3年を超えない範囲で政令で定める日に施行予定)。保管証書遺言は、相続開始後の検認が不要とされています。
施行日は政令で定められるため、遺言書を作成する時点の制度を確認することが大切です。
7 司法書士の役割
司法書士は、遺言の内容の検討、遺言書の文案作成のサポート、保管申請書の作成、相続開始後の遺言書情報証明書の請求や相続登記の申請について、ご相談・ご依頼をお受けできます。
8 よくある質問
Q. 預けた遺言書を書き直したいときは?
A. 保管の申請を撤回して遺言書を返してもらうことができるほか、新しい遺言書を作成して改めて保管申請することもできます。前の遺言と内容が抵触する部分は、後の遺言で撤回したものとみなされます(民法1023条1項)。
Q. 公正証書遺言とどちらがよいですか?
A. 費用を抑えたい場合は保管制度、内容の確実性や本人出頭が難しい事情を重視する場合は公正証書遺言、というように、ご事情によって適した方法が異なります。
Q. 家族は遺言書が預けられていることをどう知るのですか?
A. 相続開始後、遺言書保管事実証明書の交付を請求すれば、遺言書が保管されているかどうかを確認できます。指定者通知を利用しておく方法もあります。
9 まとめ・ご相談の目安
自筆証書遺言書保管制度は、手数料3,900円で遺言書を安全に保管でき、検認も不要になる制度です。次のような場合には、ご相談をご検討ください。
- 自筆で遺言書を作りたいが、書き方や内容に不安がある
- 保管制度と公正証書遺言のどちらにするか迷っている
- 親が保管制度を利用していたので、相続手続を進めたい
当事務所では、遺言書作成のサポート、保管制度の利用、遺言に基づく相続登記について、ご相談・ご依頼をお受けしています。

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