コラム

相続放棄の「3か月」はいつから数える?熟慮期間の起算点と期間を延ばす方法

※ この記事は、相続放棄の期間に関する一般的な解説です。この記事は令和8年9月時点の法令・制度に基づいています。個別の事情により結論が異なることがありますので、具体的な判断は専門家にご相談ください。

1 結論:3か月は「亡くなった日」ではなく「自分が相続人になったと知った時」から数えます

相続放棄は、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」に家庭裁判所へ申述する必要があります(民法915条1項・938条)。この3か月を「熟慮期間」といいます。

よく「亡くなってから3か月」と説明されることがありますが、法律上の起算点は、あくまでその人自身が相続人になったことを知った時です。そのため、相続人ごとに起算点が異なることがあります。

2 起算点が問題になる典型的な場面

2-1 亡くなったことを後から知った場合

疎遠だった親族が亡くなり、しばらくしてから連絡を受けた場合には、通常は「亡くなったことを知り、自分が相続人になったと知った時」から3か月を数えます。いつ・どのように知ったのか(手紙、役所からの通知、親族からの連絡など)を説明できるよう、通知文書や封筒などは保管しておきましょう。

2-2 先順位の相続人が相続放棄をした場合

子が全員相続放棄をすると、次の順位である父母(直系尊属)、さらに兄弟姉妹へと相続人が移ります(民法939条・889条)。この場合、次順位の相続人にとっての3か月は、通常、先順位の相続人が放棄して自分が相続人になったことを知った時から数えることになります。

2-3 借金があることを後から知った場合

「相続財産は何もないと思っていたので放棄しなかったが、3か月を過ぎてから借金の督促が来た」という相談は少なくありません。判例(最高裁昭和59年4月27日判決)は、相続財産が全く存在しないと信じ、そう信じたことに相当な理由がある場合などには、例外的に、相続財産の全部または一部の存在を認識した時(または通常これを認識し得た時)から起算すべき場合があるとしています。

ただし、これはあくまで例外であり、事情によって判断が分かれます。3か月を過ぎていると気づいた場合でも、あきらめずに、できるだけ早く事情を整理してご相談ください。

3 3か月では判断できないとき:期間の伸長の申立て

相続財産の調査に時間がかかり、3か月以内に相続するか放棄するか決められない場合には、家庭裁判所に「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を申し立てることができます(民法915条1項ただし書)。

  • 申立ては、熟慮期間内に行う必要があります。
  • 申立先は、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所です。
  • 伸長が認められるかどうか、どのくらい延びるかは、家庭裁判所が事情を見て判断します。

4 期間内でも放棄できなくなることがある(単純承認)

3か月以内であっても、相続財産を処分した場合などには、相続を承認したものとみなされ(法定単純承認・民法921条)、相続放棄ができなくなることがあります。例えば、被相続人の預貯金を引き出して自分のために使う、不動産を売却する、といった行為には注意が必要です。

「どこまでの行為なら問題ないか」は事案によって判断が分かれるため、放棄を検討している間は、財産に手を付ける前に専門家へ確認することをおすすめします。

5 相続放棄の申述の基本

  • 申述先:被相続人の最後の住所地の家庭裁判所
  • 費用:申述人1人につき収入印紙800円分と、連絡用の郵便切手(金額は裁判所ごとに異なります)
  • 主な添付書類:被相続人の住民票除票または戸籍附票、申述人の戸籍謄本、被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本など(申述する人の順位によって追加の戸籍が必要です)

次順位の相続人(父母、兄弟姉妹など)が申述する場合は、先順位の相続人がいないこと(または全員が放棄したこと)を戸籍等で示す必要があるため、集める戸籍が多くなる傾向があります。

6 司法書士の役割

司法書士は、家庭裁判所に提出する相続放棄申述書や期間伸長申立書の作成、必要な戸籍の収集についてご相談・ご依頼をお受けできます。なお、債権者との交渉や、相続人間の争いの代理などは司法書士の業務範囲を超えることがあり、その場合は弁護士へのご相談をご案内しています。

7 よくある質問

Q. 3か月の最終日が土日祝日の場合はどうなりますか?

A. 期間の末日が日曜日・祝日などの休日に当たるときは、その翌日に満了するのが原則です(民法142条)。ただし、ぎりぎりの提出は避け、余裕をもって準備しましょう。

Q. 相続放棄をすると、次の順位の親族に知らせてもらえますか?

A. 家庭裁判所から次順位の相続人へ当然に通知されるわけではありません。親族間のトラブルを避けるため、次順位の方へ事前にお知らせしておくことも検討してください。

Q. 生命保険金を受け取っても相続放棄できますか?

A. 受取人が指定された生命保険金は、原則として受取人固有の財産と考えられており、受け取っても直ちに放棄できなくなるわけではないとされています。ただし、契約内容によって扱いが異なるため、個別に確認が必要です。

8 まとめ・ご相談の目安

相続放棄の3か月は「自分が相続人になったことを知った時」から数えます。次のような場合は、早めのご相談をご検討ください。

  • 亡くなったことを後から知った、または先順位の相続人が放棄して自分が相続人になった
  • 3か月を過ぎてから借金の存在が分かった
  • 財産調査が終わらず、3か月以内に判断できそうにない

当事務所では、相続放棄申述書・期間伸長申立書の作成、戸籍の収集について、ご相談・ご依頼をお受けしています。

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