コラム

相続放棄をしたら実家の空き家はどうなる?放棄した人に管理の責任が残るケース(令和5年改正)

※ この記事は、相続放棄をした人の財産の保存義務に関する一般的な解説です。この記事は令和8年9月時点の法令・制度に基づいています。個別の事情により結論が異なることがありますので、具体的な判断は専門家にご相談ください。

1 結論:相続放棄をした人が保存の義務を負うのは、放棄の時にその財産を「現に占有している」場合です

令和5年4月1日に施行された改正民法により、相続放棄をした人の財産の保存義務が明確になりました。現在の民法940条1項は、相続放棄をした人が、放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人または相続財産の清算人に引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならないと定めています。

つまり、放棄をしたからといって、すべての場合に直ちに責任がなくなるわけではありません。一方で、占有していない財産についてまで、管理を続ける義務を負うわけでもありません。

2 「現に占有している」とはどういう場合か

2-1 義務を負う可能性が高い例

  • 亡くなった親と同居していて、放棄した時点でもその家に住んでいる
  • 実家の鍵を預かり、家財を管理するなど、事実上その家を支配している

2-2 義務を負わない可能性が高い例

  • 遠方に住んでいて、長年実家に立ち入っておらず、鍵も持っていない
  • 被相続人の土地があることすら知らず、管理に関わったこともない

ただし、「占有」に当たるかどうかは事実関係によって判断が分かれるため、個別に確認が必要です。

3 保存義務の内容と終わり方

保存義務の程度は「自己の財産におけるのと同一の注意」であり、財産の現状を維持するために必要な行為(雨漏りの応急処置、施錠など)が中心になると考えられます。財産を売却したり、取り壊したりすることまで求められるものではありません。

この義務は、次の人に財産を引き渡すまで続きます。

  • 他の相続人(次順位の相続人を含む)がいる場合:その相続人
  • 相続人全員が放棄するなどして相続人がいない場合:家庭裁判所が選任した相続財産の清算人(民法952条1項)

相続人全員が放棄して引き渡す相手がいない場合、義務を終わらせるには、利害関係人として家庭裁判所に相続財産の清算人の選任を申し立てることを検討することになります。申立てには、官報公告の費用や、財産の状況に応じた予納金が必要となることがあります。

4 放棄前・放棄後に気をつけたいこと

  • 放棄前に家財を処分しない:相続財産を処分すると、単純承認したものとみなされ、放棄ができなくなるおそれがあります(民法921条1号)。ただし、保存行為は処分に当たりません。
  • 放棄後も勝手に処分しない:放棄後に相続財産を隠したり、自分のために消費したりすると、単純承認とみなされることがあります(民法921条3号)。
  • 次順位の相続人への連絡:自分が放棄すると、次の順位の人が相続人になります。管理の引継ぎのためにも、事前に知らせておくことが望ましいでしょう。

5 相続放棄以外の選択肢

空き家や使い道のない土地を手放したいという理由で相続放棄を考える場合、預貯金など他の財産もすべて手放すことになります。財産全体の状況によっては、いったん相続したうえで売却する方法や、相続土地国庫帰属制度(建物がある土地は対象外)の利用を検討する余地もあります。どの方法が適しているかは、財産と負債の全体を見て判断することが大切です。

6 司法書士の役割

司法書士は、相続放棄申述書の作成、相続財産の清算人選任申立書の作成、相続した不動産の相続登記・売却に伴う登記について、ご相談・ご依頼をお受けできます。近隣とのトラブルや損害賠償の問題など、紛争性のある事案の代理は司法書士の業務範囲を超えることがあり、その場合は弁護士へのご相談をご案内しています。

7 よくある質問

Q. 相続放棄をすれば、固定資産税は払わなくてよいですか?

A. 相続放棄をした人は、はじめから相続人でなかったものとみなされます(民法939条)。ただし、課税の扱いや、すでに発生した税の扱いは市区町村の判断によるため、個別に確認が必要です。

Q. 家の中の遺品を形見として持ち帰ってもよいですか?

A. 経済的価値の低いものであれば問題にならないこともありますが、価値のあるものを持ち帰ると処分に当たるおそれがあります。放棄を考えている場合は、事前に専門家へ相談しましょう。

Q. 改正前に相続放棄をしていた場合はどうなりますか?

A. 改正法の施行日(令和5年4月1日)より前の放棄については、経過措置の扱いを含めて個別に確認が必要です。

8 まとめ・ご相談の目安

相続放棄をした人が保存の義務を負うのは、放棄の時に財産を現に占有している場合です。次のような場合には、ご相談をご検討ください。

  • 空き家になった実家の相続放棄を考えている
  • 放棄した後、実家の管理をどうすればよいか分からない
  • 相続人全員が放棄しそうで、財産の引継ぎ先がない

当事務所では、相続放棄申述書、相続財産の清算人選任申立書の作成、相続登記について、ご相談・ご依頼をお受けしています。

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