※ この記事は、被相続人の借金(債務)の調べ方に関する一般的な解説です。この記事は令和8年9月時点の情報に基づいています。各機関の手続・手数料は変わることがあるため、申込み前に各機関の案内をご確認ください。
1 結論:まずは3つの信用情報機関への開示請求と、郵便物・通帳の確認から始めます
相続では、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も引き継ぎます。借金が多い場合は相続放棄を検討することになりますが、相続放棄には原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内という期間の制限があります(民法915条1項)。そのため、借金の有無はできるだけ早く調べることが大切です。
2 信用情報機関への開示請求
クレジットカード、カードローン、消費者金融、銀行ローンなどの契約情報は、信用情報機関に登録されています。日本には主に次の3つの機関があり、それぞれ加盟している会社が異なるため、3つすべてに開示請求をするのが確実です。
- 株式会社シー・アイ・シー(CIC):主にクレジットカード会社、信販会社など
- 株式会社日本信用情報機構(JICC):主に消費者金融など
- 全国銀行個人信用情報センター(KSC):主に銀行など
2-1 相続人による開示請求の一般的な流れ
各機関とも、亡くなった方の情報について、法定相続人などからの開示請求を受け付けています(申込みできる人の範囲は機関ごとに定められています)。一般的には、次のような書類が必要です。
- 開示申込書(各機関の所定の書式・申込みフォーム)
- 申込者の本人確認書類
- 被相続人が亡くなったことが分かる戸籍謄本等
- 申込者が相続人であることが分かる戸籍謄本等
- 所定の手数料
申込み方法(郵送・インターネット)や手数料、必要書類の細かな条件は機関ごとに異なり、変更されることもあるため、必ず各機関の最新の案内を確認してください。なお、日本信用情報機構(JICC)では、法定相続人等から委任を受けた弁護士・司法書士による開示手続も可能とされています。
2-2 信用情報で分からないもの
信用情報機関の開示で分かるのは、加盟会社との契約に関する情報です。次のような債務は載っていないことがあります。
- 個人(知人・親族)からの借入れ
- 事業上の買掛金、未払いの家賃・税金など
- 他人の借金の連帯保証人になっている場合(保証債務)
3 信用情報以外に確認したいもの
- 郵便物:督促状、利用明細、契約書類など
- 通帳・取引履歴:定期的な返済の引落としがないか
- 不動産の登記事項証明書:乙区に抵当権や根抵当権が設定されていないか
- 税金・公共料金:未納の住民税・固定資産税などがないか
- 自宅に残る書類:金銭消費貸借契約書、保証契約書など
抵当権の登記が残っていても、ローンが完済されていることもあります。登記簿の記載だけで判断せず、金融機関への確認もあわせて行いましょう。
4 調査が3か月に間に合わないとき
財産や借金の調査に時間がかかり、3か月以内に相続するか放棄するか決められない場合は、家庭裁判所に相続の承認又は放棄の期間の伸長を申し立てることができます(民法915条1項ただし書)。申立ては熟慮期間内に行う必要があります。
また、プラスの財産の範囲内でだけ借金を負担する限定承認という方法もありますが、相続人全員で行う必要があるなど、手続上の負担があります。
5 調査中にやってはいけないこと
借金の調査中に、被相続人の預金を引き出して使ったり、不動産を売却したりすると、相続を単純承認したものとみなされ、相続放棄ができなくなるおそれがあります(民法921条1号)。判断がつくまでは、財産に手を付けないようにしましょう。
6 司法書士の役割
司法書士は、相続人調査のための戸籍の収集、登記事項証明書の確認、相続放棄申述書や期間伸長申立書の作成について、ご相談・ご依頼をお受けできます。債権者との交渉(減額・分割払いの交渉など)の代理は、認定司法書士であっても対象となる額が140万円を超える場合には業務範囲外となるため、その場合は弁護士へのご相談をご案内しています。
7 よくある質問
Q. 開示請求をすると、相続を承認したことになりますか?
A. 信用情報の開示請求は財産の調査であり、それだけで相続を承認したことにはならないと考えられます。
Q. 督促状が届いたら、すぐに支払うべきですか?
A. 相続放棄を検討している場合、相続財産から支払うと単純承認とみなされるおそれがあります。支払う前に、専門家へ相談しましょう。
Q. 3か月を過ぎてから借金が見つかった場合は?
A. 事情によっては、借金の存在を知った時から3か月以内であれば相続放棄が認められる場合があります(最高裁昭和59年4月27日判決参照)。例外的な扱いのため、できるだけ早くご相談ください。
8 まとめ・ご相談の目安
被相続人の借金は、3つの信用情報機関への開示請求と、郵便物・通帳・登記簿などの確認で調べます。次のような場合には、ご相談をご検討ください。
- 亡くなった家族に借金があるかどうか分からない
- 督促状が届き、相続放棄をするか迷っている
- 3か月以内に調査が終わりそうにない
当事務所では、戸籍の収集、相続放棄申述書・期間伸長申立書の作成について、ご相談・ご依頼をお受けしています。

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