※ この記事は、相続した不動産に抵当権の登記が残っている場合の一般的な解説です。この記事は令和8年9月時点の法令・制度に基づいています。
1 結論:ローンを完済していても、抵当権の登記は自動では消えません。相続登記とあわせて抹消登記を申請します
相続登記の準備で登記事項証明書を取り寄せたところ、乙区に被相続人の住宅ローンの抵当権が残っていた、ということはよくあります。住宅ローンを完済すると抵当権は消滅しますが、登記は申請しない限り残ったままです。
所有者が亡くなっている場合、抹消登記は相続人が手続を行うことになり、実務上は相続登記と抵当権抹消登記を連続して申請するのが一般的です。
2 まず確認すること:ローンは完済されているか
2-1 生前に完済していた場合
完済時に金融機関から抹消用の書類(解除証書や弁済証書、登記識別情報または登記済証、委任状など)が送られてきているはずです。遺品の中に保管されていないか確認しましょう。
2-2 団体信用生命保険でローンが完済された場合
住宅ローンに団体信用生命保険(団信)が付いていた場合、死亡により保険金でローンが完済されることがあります。この場合も、金融機関への届出・手続を経て抹消書類が交付されるのが通常です。手続の流れは金融機関によって異なるため、ローンを借りていた金融機関へ問い合わせてください。
2-3 ローンが残っている場合
団信が付いていない、または保険の対象外であるなどでローンが残っている場合、その債務は相続の対象となります。相続放棄を含めて検討が必要になることがあるため、早めに状況を整理しましょう(相続放棄には期間の制限があります)。
3 抹消登記に必要な主な書類
- 金融機関から交付される書類:解除証書・弁済証書等(登記原因証明情報)、抵当権設定時の登記識別情報または登記済証、金融機関の委任状、金融機関の会社法人等番号など
- 相続人側:相続登記に必要な戸籍・遺産分割協議書等。実務上は相続登記を先に(または連続して)申請し、所有者となった相続人が抹消登記を申請する形が一般的です(ローンの完済が亡くなる前か後かなどによって、手続の組み立てが異なることがあります)。
登録免許税は、抵当権抹消登記について不動産1個につき1,000円です(登録免許税法別表第一)。土地と建物であれば、通常2個分となります。
4 注意したいポイント
4-1 抹消書類を紛失した場合
解除証書や登記識別情報などを紛失していても、金融機関に相談すると、再発行や代わりの書類の発行に応じてもらえる場合があります。対応は金融機関によって異なります。
4-2 金融機関が合併・名称変更している場合
登記簿上の抵当権者が、合併などにより現在の金融機関名と異なっていることがあります。この場合、抹消の前提として、抵当権者側の変更を証する書類や、手続の組み立てについて確認が必要になります。
4-3 古い書類の日付と委任状
完済から長期間たっている場合、当時の金融機関の委任状や資格証明に関する書類がそのまま使えないことがあります。書類の日付や内容を確認し、必要に応じて金融機関に再発行を依頼します。
4-4 非常に古い抵当権(休眠担保権)の場合
明治・大正・昭和初期に設定されたような古い抵当権で、抵当権者の所在が分からない場合には、通常とは異なる手続(不動産登記法70条など)を検討することになります。事案ごとの判断が必要です。
5 放置するとどうなるか
抵当権の登記が残ったままでも、直ちに不利益が生じるとは限りません。しかし、不動産を売却したり、新たに融資を受けて担保に入れたりする場面では、抹消が求められるのが通常です。時間がたつほど、書類の紛失や金融機関の組織変更などで手続が複雑になりやすいため、相続登記のタイミングであわせて整理しておくことをおすすめします。
6 司法書士の役割
司法書士は、登記事項証明書の確認、相続登記と抵当権抹消登記の申請、金融機関への必要書類の確認について、ご相談・ご依頼をお受けできます。残っている債務の支払方法などについて金融機関と交渉する代理は、内容や金額によっては司法書士の業務範囲を超えることがあり、その場合は弁護士へのご相談をご案内しています。
7 よくある質問
Q. 抵当権抹消だけ先に申請できますか?
A. 所有者が亡くなっている場合の手続の組み立ては事案によって異なりますが、実務上は相続登記と連続して申請するのが一般的です。個別にご確認ください。
Q. 抹消書類に期限はありますか?
A. 書類の種類によっては、発行からの期間に注意が必要なものがあります。受け取ったら早めに手続を進めるのが安心です。
Q. 根抵当権の場合も同じですか?
A. 根抵当権は、元本の確定の有無などによって手続が異なることがあります。登記事項証明書を確認のうえ、ご相談ください。
8 まとめ・ご相談の目安
完済済みの住宅ローンでも、抵当権の登記は抹消の申請をしない限り残ります。次のような場合には、ご相談をご検討ください。
- 相続した不動産の登記簿に、抵当権が残っていた
- 抹消書類が見当たらない、または古い書類しかない
- 相続登記とあわせて一度に手続を済ませたい
当事務所では、相続登記と抵当権抹消登記の申請、必要書類の確認について、ご相談・ご依頼をお受けしています。

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