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この記事は一般的な解説です。令和8年10月時点の法令・運用に基づいており、個別の事情により結論が変わることがあります。なお、この記事に登場する「Aさん」は、遺言書作成の流れを分かりやすく説明するための想定上の人物であり、実在の依頼者の事例ではありません。
結論:遺言書は、「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」のどちらで作るかを最初に決め、財産と相続人を整理してから内容を固めるとスムーズです。特に、方式の不備による無効、遺留分への配慮不足、遺言執行者の未指定は、あとで家族が困りやすい点です。
想定ケース:60代のAさんが遺言書を作る場合
Aさん(想定)は60代で、自宅の土地建物と預貯金があり、家族が将来もめないように遺言書を残したいと考えています。法律上の要件や書き方が分からず、何から始めればよいか悩んでいる、という状況を例にします。
遺言書作成の基本的な流れ
- 目的と希望を整理する誰に何を引き継ぎたいのか、その理由を書き出す
- 財産と相続人を確認する不動産・預貯金は資料で確認、相続人は戸籍で確認
- 遺言の方式を選ぶ公正証書遺言か自筆証書遺言か
- 文案を作る財産の特定方法、遺言執行者の指定を検討
- 作成・保管する公正証書は公証役場で作成/自筆証書は自書して保管方法を選ぶ
- 目的と希望を整理する:誰に何を引き継ぎたいのか、その理由を書き出します。
- 財産と相続人を確認する:不動産は登記事項証明書や固定資産税の納税通知書、預貯金は通帳などで確認します。相続人は戸籍で確認します。
- 遺言の方式を選ぶ:下の比較表を参考に決めます。
- 文案を作る:財産の特定方法(不動産は登記簿どおりに書く等)や、遺言執行者の指定を検討します。
- 作成・保管する:公正証書遺言は公証役場で作成し、自筆証書遺言は自書したうえで、自宅保管か法務局の保管制度を選びます。
公正証書遺言と自筆証書遺言の比較
| 項目 | 公正証書遺言 | 自筆証書遺言 |
|---|---|---|
| 作成方法 | 公証人が作成。証人2人以上の立会いが必要(民法969条) | 全文・日付・氏名を自書し押印(民法968条1項)。財産目録は自書でなくてもよい(同条2項) |
| 費用 | 財産額などに応じた公証人手数料がかかります(公証役場で見積りを確認) | 自宅保管なら不要。法務局の保管制度は1件3,900円(手数料は法務省で確認) |
| 無効のおそれ | 方式の不備は少ない | 日付・押印・訂正方法の不備で無効になることがある |
| 検認(家庭裁判所の手続) | 不要 | 自宅保管は必要。法務局の保管制度を使えば不要 |
| 紛失・改ざん | 原本は公証役場で保管され、心配が少ない | 自宅保管は紛失・改ざん・発見されないおそれがある |
確実性を重視するなら公正証書遺言、手軽さを重視するなら自筆証書遺言(できれば法務局の保管制度の利用)が目安です。Aさんは確実性を重視して、公正証書遺言を選ぶ想定とします。
想定ケースの進め方
1 初回の相談で希望を整理する
相談先(司法書士など)には、家族構成、財産の内容、遺言で実現したいことを伝えます。この段階で、希望が法律上可能か、遺留分に配慮が必要かを確認します。
2 必要書類を集める
公正証書遺言では、一般に、本人確認書類(印鑑登録証明書など)、相続人との続柄が分かる戸籍謄本、不動産の登記事項証明書と固定資産評価証明書(または納税通知書)、預貯金の通帳の写しなどが必要です。必要書類は公証役場によって案内が異なることがあるため、事前に確認します。
3 文案を作り、確認・修正する
財産の分け方、受け取る人、遺言執行者の指定などを盛り込んだ案を作り、希望と合っているかを何度か確認して修正します。
4 公証役場で作成する
公証人と証人2人の前で内容を確認し、署名押印をして完成します。証人には、相続人や受遺者(財産をもらう人)などはなれません。
遺言書作成の注意点
- 遺留分:兄弟姉妹以外の相続人には、最低限の取り分(遺留分)があります。偏った内容にすると、あとで遺留分侵害額請求をされる可能性があります(民法1042条以下)。
- 遺言執行者:遺言の内容を実現する手続を行う人です。あらかじめ指定しておくと、相続手続が進めやすくなります(民法1006条)。
- 財産の書き方:不動産は登記事項証明書のとおりに、預貯金は金融機関名・支店名・口座番号で特定します。
- 付言事項:法的な効力はありませんが、遺言を残した理由や家族への思いを書いておくと、気持ちの面でのトラブル防止に役立ちます。
- 見直し:家族構成や財産が変わったら、遺言も見直しましょう。書き直しはいつでもできます。
よくある質問
Q1 遺言書があれば、遺産分割協議は不要ですか。
遺言で全財産の分け方が決まっていれば、原則として遺産分割協議は不要です。ただし、遺言にない財産がある場合などは、協議が必要になることがあります。
Q2 遺言書は何歳から作れますか。
民法上、15歳以上であれば遺言をすることができます(民法961条)。ただし、遺言をする時点で意思能力があることが必要です。
Q3 司法書士にはどこまで相談できますか。
遺言書の文案作成の支援、必要書類の収集、公正証書遺言の手続の補助などについて、司法書士に相談できます。遺言の内容が紛争性のあるものや、税金の計算・申告が必要な場合は、弁護士や税理士などの専門家への相談が必要です。
まとめ
遺言書は、方式の選択と、財産・相続人の整理、遺留分への配慮が大切です。迷う場合は、早めに専門家へ相談し、ご自身の状況に合った方式で作成しましょう。
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この記事の監修者
司法書士 川西 祐輔(ウィルパートナー司法書士事務所 代表)
大阪司法書士会所属(登録番号 大阪第4855号)/簡裁訴訟代理等関係業務認定/公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート会員。相続登記・遺言・相続放棄・成年後見・債務整理・不動産登記・商業登記を取り扱っています。