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この記事は一般的な解説です。令和8年10月時点の法令・運用に基づいており、個別の事情により結論が変わることがあります。
相続した実家が空き家のままになっていると、「特定空き家に指定されると税金が上がる」と聞いて不安になる方もいるでしょう。この記事では、空家等対策の推進に関する特別措置法(空家特措法)の仕組みを整理し、特定空家等と管理不全空家等の違い、固定資産税の特例が外れる条件、相続した空き家でできる対策を解説します。
結論:税金の特例が外れるのは「勧告」を受けたときです
- 空き家の状態管理不全空家等(放置すると特定空家等になるおそれ)、または特定空家等(倒壊の危険・衛生上の問題などがある)
- 市町村の指導市町村長から指導(助言・指導)を受ける。この段階で改善すれば、勧告に進むのを防げます。
- 勧告改善されないと勧告を受ける。勧告を受けた敷地には、住宅用地の特例が適用されません。
- 税負担特例(200㎡以下の部分は6分の1、超える部分は3分の1)が外れ、固定資産税が大きく増えることがあります。
空き家であるだけで、直ちに特例が外れるわけではありません。
固定資産税には、住宅が建っている土地の税負担を軽くする「住宅用地の特例」があります。200㎡以下の部分(小規模住宅用地)は課税標準が評価額の6分の1、200㎡を超える部分(一般住宅用地)は3分の1になります。
市町村長から「勧告」を受けた特定空家等または管理不全空家等の敷地には、この特例が適用されません(地方税法349条の3の2)。空き家であるだけで直ちに特例が外れるわけではなく、市町村からの指導の段階で改善すれば、勧告に進むのを防げます。
特定空家等とは
空家特措法は、特定空家等を、次のいずれかの状態にあると認められる空家等と定めています(2条2項)。
- そのまま放置すれば倒壊など著しく保安上危険となるおそれのある状態
- そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
具体的な判断の目安は、国が定めたガイドラインに示されており、最終的には市町村が個別に判断します。
令和5年改正で加わった「管理不全空家等」
令和5年12月13日施行の改正で、「管理不全空家等」の制度が設けられました。そのまま放置すれば特定空家等になるおそれのある空き家について、市町村長は所有者に指導をし、それでも改善されず、特定空家等になるおそれが大きいときは勧告をすることができます(13条)。この勧告を受けた場合も、住宅用地の特例は外れます。
| 管理不全空家等 | 特定空家等 | |
|---|---|---|
| 状態 | 放置すると特定空家等になるおそれがある | すでに倒壊の危険、衛生上の問題などがある |
| 市町村ができること | 指導、勧告 | 助言・指導、勧告、命令、代執行 |
| 勧告を受けたときの税 | 住宅用地の特例が外れる | 住宅用地の特例が外れる |
| 命令違反の過料 | 命令の制度はありません | 50万円以下の過料(30条1項) |
特定空家等に対する措置の流れ
- 助言・指導:除却、修繕、立木竹の伐採などの措置をとるよう求められます(22条1項)
- 勧告:改善されない場合に、相当の猶予期限を付けて勧告されます(22条2項)。この段階で住宅用地の特例が外れます
- 命令:正当な理由なく勧告に従わない場合に、措置をとるよう命令されることがあります(22条3項)。命令に違反すると50万円以下の過料の対象になります
- 代執行:命令に従わない場合などに、市町村が所有者に代わって措置を行い、費用を所有者から徴収することがあります
所有者が分からない場合でも市町村が措置をとれる略式代執行の仕組みがあり、令和5年改正では、緊急時の代執行や、市町村長が裁判所に財産管理人の選任を請求できる制度も整備されました。
特例が外れると、どうなるか
特例が外れると、課税標準が評価額そのものになるため、固定資産税が大きく増えることがあります(都市計画税にも特例があります)。増える金額は、土地の面積や評価額、負担調整措置などによって異なります。勧告の時期と、いつの年度から税額に反映されるかは、市町村の税務担当窓口にご確認ください。
相続した空き家でできる対策
- 相続登記をして、管理する人をはっきりさせる:亡くなった人の名義のままだと、市町村からの連絡が相続人の誰にも届きにくくなります(相続登記の義務化とは?期限(3年以内)・過料・施行前の相続の扱いと、期限に間に合わないときの対処法)。
- 最低限の管理を続ける:定期的な換気・通水、郵便物の整理、草木の手入れ、屋根・外壁の破損の点検などです。
- 活用する:住む人を探す、賃貸に出す、空き家バンクに登録するなどの方法があります。
- 売却する:売却の流れは相続した実家を手放すには?売却までの流れと、売れないときの選択肢(国庫帰属・相続放棄)で解説しています。条件を満たす場合は、相続した空き家の譲渡所得の特別控除などの税の特例もあります。
- 建物を解体する:解体すると住宅用地の特例が使えなくなるため、税負担と活用計画を事前に確認します。解体費用の補助制度がある市町村もあります。
- 相続土地国庫帰属制度で国に引き渡す:建物の解体が前提です(相続土地国庫帰属制度とは?いらない土地を国に引き取ってもらう要件・費用・手続きの流れ)。
相続放棄をした場合の管理
相続放棄をしても、放棄の時に空き家を現に占有していた人は、ほかの相続人や相続財産の清算人に引き渡すまでの間、その家を保存する義務を負います(民法940条1項)。放棄すれば一切関係がなくなるとは限らない点に注意が必要です(相続放棄をしたら実家の空き家はどうなる?放棄した人に管理の責任が残るケース(令和5年改正))。
よくある質問
Q1 市町村から指導の通知が届いたらどうすればよいですか?
通知に書かれた問題点(屋根や外壁の破損、草木の越境など)を確認し、改善の予定を市町村の担当窓口に伝えます。指導の段階で改善すれば、勧告に進むのを防げます。期限までに対応が難しい場合は、事情を伝えて相談します。
Q2 空き家の名義が亡くなった親のままでも、指導は来ますか?
市町村は固定資産税の情報や戸籍などで相続人を調べ、相続人に連絡することがあります。名義を整理しておくと、対応する人がはっきりします。
Q3 空き家であるだけで、固定資産税は上がりますか?
空き家であるだけでは、住宅用地の特例は外れません。外れるのは、特定空家等または管理不全空家等として勧告を受けた場合です。ただし、建物を解体して更地にした場合は、住宅用地の特例が使えなくなります。
まとめ
空家特措法では、指導、勧告、命令、代執行と段階的に措置がとられ、固定資産税の特例が外れるのは勧告の時点です。相続した空き家は、まず相続登記で管理する人を決め、売却・活用・国庫帰属などの方針を早めに考えておくことが大切です。税額の具体的な計算は、市町村の税務担当窓口や税理士にご確認ください。
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この記事の監修者
司法書士 川西 祐輔(ウィルパートナー司法書士事務所 代表)
大阪司法書士会所属(登録番号 大阪第4855号)/簡裁訴訟代理等関係業務認定/公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート会員。相続登記・遺言・相続放棄・成年後見・債務整理・不動産登記・商業登記を取り扱っています。