コラム

相続した実家を手放すには?売却までの流れと、売れないときの選択肢(国庫帰属・相続放棄)

※ この記事は、相続した実家(空き家)の売却・処分の流れに関する一般的な解説です。この記事は令和8年10月時点の法令・制度に基づいています。個別の事情により結論が異なることがありますので、具体的な判断は専門家にご相談ください。

親が亡くなって実家が空き家になり、「住む予定はないので手放したい」というご相談は少なくありません。ただ、亡くなった人の名義のままでは売却できず、片付けや税金の準備も必要です。この記事では、相続した実家を手放すまでの流れを、手続きの順番に沿って解説します。

1 結論:売却の前に、相続登記で相続人の名義にする必要があります

不動産の売買による所有権移転登記は、登記名義人が売主となって申請します。亡くなった人の名義のままでは売主になれないため、まず遺言または遺産分割で実家を取得する人を決め、相続登記をします。相続登記は、相続で取得したことを知った日から3年以内の申請が義務になっています(相続登記の義務化)。

2 手放すまでの流れ

  1. 遺言書の有無を確認する(自筆の遺言書は家庭裁判所の検認が必要な場合があります。遺言書の検認)
  2. 相続人を確定し、遺産分割協議で実家を取得する人を決める
  3. 相続登記をする
  4. 抵当権など乙区の登記を確認し、残っていれば抹消する(完済済みの抵当権が残っていたら)
  5. 境界・測量の状況を確認し、遺品整理・仏壇などの整理をする
  6. 不動産会社に査定を依頼し、媒介契約を結ぶ
  7. 売買契約を結び、決済・引渡しと同時に所有権移転登記をする
  8. 翌年に譲渡所得の確定申告をする(所得が生じた場合)

相続人の一人が代表して売却し、売却代金を分ける「換価分割」にする場合は、遺産分割協議書にその旨を記載しておきます。全体の流れは相続した不動産を売却するにはでも解説しています。

3 売却前に確認しておきたいこと

住宅ローンと抵当権

亡くなった人が住宅ローンを利用していた場合、団体信用生命保険で完済されることが多いですが、抵当権の登記は自動では消えません。金融機関から書類を受け取って抹消登記をします。

境界と測量図

土地の売買では、隣地との境界を明らかにするよう買主から求められることがあります。法務局にある地積測量図の有無を確認し、必要に応じて土地家屋調査士に相談します。

購入時の契約書などの書類

譲渡所得の計算では、亡くなった人が実家を購入したときの代金(取得費)を使います。売買契約書や領収書が見つからないと、税負担が大きくなることがあります。

4 売却にかかる税金の特例(概要)

相続した空き家を売った場合、一定の要件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります(令和9年12月31日までの譲渡が対象。令和6年1月1日以後の譲渡で、その家屋と敷地を取得した相続人が3人以上の場合は1人あたり2,000万円。国税庁タックスアンサーNo.3306)。また、相続税を納めた人が一定期間内に相続財産を売った場合に、相続税額の一部を取得費に加算できる特例もあります。適用できるかどうかや税額の計算は、税理士または税務署にご確認ください。

5 売れない・買い手がつかないときの選択肢

  • 価格を見直す、空き家バンクや隣地所有者への打診など売却先の幅を広げる
  • 相続土地国庫帰属制度で土地を国に引き渡す(建物は解体が必要。要件と負担金があります。相続土地国庫帰属制度とは)
  • 相続放棄をする(実家だけでなく預金なども含めて一切引き継がないことになります。原則として相続を知った時から3か月以内。相続放棄をしたら実家の空き家はどうなる?)
  • 当面は管理を続ける(管理が不十分だと市町村から指導・勧告を受けることがあります。特定空き家とは)

6 よくある質問

Q. 相続人の一人が反対している場合でも売れますか?

A. 実家を誰が取得するか(または共有のまま売るか)が決まらなければ売却できません。共有のまま売る場合は共有者全員が売主になります。話合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停を検討することになります。

Q. 相続登記をしないで、相続人全員で売ることはできますか?

A. できません。いったん相続人名義への相続登記をしてから、買主への所有権移転登記をします。決済の日に二つの登記を続けて申請することもあります。

7 まとめ・ご相談の目安

実家を手放すには、相続人の確定・遺産分割・相続登記という前提の手続きが欠かせません。抵当権が残っている、相続人が多い、昔の名義のままといった事情があると、売却の準備に時間がかかります。売却の予定が決まったら、早めに登記の状況を確認しておくと安心です。

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