コラム

相続した不動産を売却するには?相続登記から売買までの流れと、専門家の役割

※ 本文中の事例は、実務で見られる典型的な問題を一般化した仮想の例であり、実在の依頼者・案件ではありません。この記事は令和8年9月時点の法令・制度に基づいています。

1 結論:亡くなった方の名義から、買主へ直接名義を移すことはできません。先に相続登記が必要です

法務局のQ&Aでは、相続登記をしないまま第三者に売却した場合でも、登記名義を被相続人から第三者に直接移転することはできず、被相続人から相続人への相続登記をした後に、相続人から第三者への売買による所有権移転登記を行うこととされています。

2 売却までの流れ

  1. 相続人の確定:戸籍で、相続人全員を確認します。
  2. 遺産分割協議:不動産を売却して代金を分ける(換価分割)か、誰かが取得して売却するかなど、方針を全員で決めます。
  3. 相続登記:相続人名義に変更します。
  4. 売買契約・決済:買主との売買契約を結び、代金の決済と同時に、買主への所有権移転登記を行います。

相続登記の申請から売買の登記まで、日程を逆算して進める必要があります。

3 誰に何を相談するか

場面 相談先の目安
相続人の調査・戸籍の収集、遺産分割協議書の作成、相続登記・売買の登記申請 司法書士
不動産の査定・買主探し・売買契約の仲介 不動産会社
売却や相続に伴う税金の申告・税額の計算・相談 税理士
相続人間の争いや交渉の代理、行方不明の相続人への対応 弁護士

司法書士は、登記手続の代理や、登記に関する書類の作成、それらの相談を業とします(司法書士法3条)。売却の価格や条件の交渉の代理、税務申告や税額の判断は、司法書士の業務ではありません(税務代理・税務書類の作成・税務相談は税理士の業務で、税理士でない者は行えません。税理士法2条・52条)。また、報酬を得る目的で、他人の法律事件に関して代理・和解などの法律事務を取り扱うことは、弁護士でない者には原則として認められていません(弁護士法72条)。司法書士が代理できる紛争の範囲には限りがあり、相続人間の争いは、弁護士への相談が適しています。

4 実務上の注意点

  • 売主となる相続人全員の協力が必要です。一人でも所在不明・非協力だと、売却が止まりやすくなります。
  • 相続人が多い、または数次相続がある場合は、売却までに時間がかかります。
  • 被相続人の住所が登記簿とつながらない場合、追加の書類が必要になります。
  • 売却を急ぐあまり、遺産分割協議の内容を十分に確認しないまま進めると、後で相続人間でトラブルになるおそれがあります。
  • 売却しても、相続登記の申請義務の期限が関わる場合があります。

5 よくある質問

Q. 相続登記をせず、売買と同時に名義を変えられますか?

A. できません。登記の順番は、相続登記が先で、その後に相続人から買主への売買による移転登記を行います(法務局のQ&A)。

Q. 相続人の一人が売却に反対しています。

A. 全員の同意が必要な場面が多く、話し合いが難航する場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

Q. 売却の代金の分け方も、司法書士に相談できますか?

A. 遺産分割協議書の作成はできます。代金の配分をめぐる交渉の代理は弁護士、税金の申告や税額の判断は税理士の業務です。

6 まとめ・ご相談の目安

売却の前に、まず相続人の確定と相続登記が必要です。次のような場合は、ご相談ください。

  • 売却の日程が決まっている、または急ぎたい
  • 相続人が多い・遠方にいる
  • 名義が古い相続のままになっている

当事務所では、相続人の調査、遺産分割協議書の作成、相続登記と売買による所有権移転の登記申請について、ご相談・ご依頼をお受けしています。

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