※ この記事は、未成年者が相続人となる場合の遺産分割に関する一般的な解説です。この記事は令和8年9月時点の法令・制度に基づいています。
1 結論:親と未成年の子がともに相続人なら、子のために家庭裁判所で「特別代理人」を選んでもらう必要があります
未成年者(18歳未満)は、原則として単独で遺産分割協議に参加できず、親権者が法定代理人として代わりに協議をします。ところが、親権者自身も同じ相続の相続人である場合、親と子の利益がぶつかる(利益相反)ため、親は子を代理できません。この場合、親権者は家庭裁判所に特別代理人の選任を請求する必要があります(民法826条1項)。
2 どんな場合に特別代理人が必要になるか
2-1 典型例:夫が亡くなり、妻と未成年の子が相続人になった場合
妻(母)と未成年の子は、いずれも夫(父)の相続人です。遺産分割協議で母の取り分を増やせば子の取り分が減るため、母が子を代理すると利益相反になります。家庭裁判所の案内でも、父が死亡した場合に共同相続人である母と未成年の子が行う遺産分割協議が、利益相反の例として挙げられています。
2-2 未成年の子が複数いる場合
親権者が1人で複数の子を代理することも、子どうしの利益がぶつかるため認められません(民法826条2項)。この場合は、子ごとに別々の特別代理人が必要になります。
2-3 特別代理人が不要なケース
- 遺言で取得者が決まっており、遺産分割協議をしない場合
- 法定相続分どおりの相続登記をする場合(遺産分割協議を伴わないため)
- 親権者自身が相続放棄をしたうえで、子を代理する場合(事情により判断が分かれるため、個別の確認が必要です)
3 特別代理人選任の申立ての基本
- 申立人:親権者、利害関係人
- 申立先:子の住所地の家庭裁判所
- 費用:子1人につき収入印紙800円分と、連絡用の郵便切手(金額は裁判所ごとに異なります)
- 主な必要書類:未成年者の戸籍謄本、親権者の戸籍謄本、特別代理人候補者の住民票または戸籍附票、遺産分割協議書の案など利益相反に関する資料
特別代理人の候補者には、利害関係のない親族(祖父母、おじ・おばなど)を挙げることが多く、専門職を候補者とすることもあります。
4 遺産分割協議書の案が重要な理由
特別代理人の選任申立てでは、どのような内容の遺産分割をするのかを示す協議書案を提出するのが一般的です。家庭裁判所は、その内容が未成年者の利益を不当に害しないかという観点から確認します。
未成年者の取得分が極端に少ない内容の場合には、その理由(例えば、親権者が子の養育費や住居を確保する目的で自宅を取得する事情など)の説明を求められることがあります。どのような内容が認められるかは事案ごとの判断となるため、協議書案の作成段階で十分に検討することが大切です。
5 選任後の流れ
- 家庭裁判所が特別代理人を選任(審判書が届きます)
- 特別代理人が、未成年者に代わって遺産分割協議書に署名・押印(実印)する
- 相続登記では、特別代理人選任の審判書(謄本)と特別代理人の印鑑証明書を添付する
特別代理人の役割は、審判で定められた行為(この遺産分割協議)に限られ、終われば任務も終了します。
6 司法書士の役割
司法書士は、特別代理人選任申立書の作成、遺産分割協議書案の作成、戸籍の収集、選任後の相続登記の申請について、ご相談・ご依頼をお受けできます。相続人間で分割内容について争いがある場合の交渉は司法書士の業務範囲を超えることがあり、その場合は弁護士へのご相談をご案内しています。
7 よくある質問
Q. 子が18歳になるまで待ってから遺産分割をしてもよいですか?
A. 待つこと自体は可能ですが、その間も相続登記の申請義務(相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内)は進行します。相続人申告登記など、義務との関係も含めて検討が必要です。
Q. 胎児がいる場合はどうなりますか?
A. 胎児は相続については既に生まれたものとみなされます(民法886条1項)。ただし、胎児のままでは遺産分割協議を行うことができないと考えられており、出生を待ってから協議するのが一般的です。
Q. 特別代理人は親族でなければいけませんか?
A. 親族に限られません。適任者がいない場合は専門職が選ばれることもあります。
8 まとめ・ご相談の目安
親権者と未成年の子がともに相続人となる遺産分割では、家庭裁判所で特別代理人を選任してもらう必要があります。次のような場合には、ご相談をご検討ください。
- 配偶者が亡くなり、自分と未成年の子が相続人になった
- 未成年の子が複数いて、手続が複雑そう
- 協議書案をどのような内容にすればよいか分からない
当事務所では、特別代理人選任申立書・遺産分割協議書案の作成、相続登記の申請について、ご相談・ご依頼をお受けしています。

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