コラム

「相続分の譲渡」「相続分の放棄」とは?家庭裁判所の相続放棄との違いと、借金への影響

※ この記事は、相続分の譲渡・相続分の放棄に関する一般的な解説です。この記事は令和8年9月時点の法令・制度に基づいています。個別の事情により結論が異なることがありますので、具体的な判断は専門家にご相談ください。

1 結論:「財産はいらない」と伝えることと、家庭裁判所での「相続放棄」は、法的な効果がまったく違います

「遺産は何もいらないので、ほかの相続人で分けてほしい」という場合、方法はいくつかあります。代表的なのは、次の3つです。

  • 相続放棄:家庭裁判所に申述し、はじめから相続人でなかったものとみなされる手続(民法938条・939条)
  • 相続分の譲渡:自分の相続分を、他の相続人や第三者に譲り渡すこと(民法905条参照)
  • 相続分の放棄(事実上の放棄):遺産分割協議の中で、自分は何も取得しないと合意すること

最大の違いは、被相続人の借金(相続債務)を免れられるかどうかです。

2 相続放棄(家庭裁判所の手続)

相続放棄をすると、その人は最初から相続人でなかったものとみなされるため、プラスの財産もマイナスの財産(借金)も引き継ぎません。原則として、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所へ申述する必要があります(民法915条1項)。

なお、放棄した人の分は他の同順位の相続人に回り、同順位の相続人全員が放棄すると次の順位の相続人(父母、兄弟姉妹など)が相続人になります。

3 相続分の譲渡

3-1 どんな手続か

相続分の譲渡は、遺産分割前に、自分の相続分(遺産全体に対する割合的な持分)を他人に譲り渡すことです。有償でも無償でもよく、家庭裁判所の手続は不要で、当事者間の合意(相続分譲渡証書の作成など)で行います。譲渡を受けた人は、その相続分を持って遺産分割協議に参加します。

3-2 第三者に譲渡された場合の取戻し

相続人の一人が遺産分割前に相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額と費用を償還して、その相続分を取り戻すことができます。この権利は1か月以内に行使しなければなりません(民法905条)。

3-3 メリット

相続人が多い場合に、財産を取得しない人があらかじめ特定の相続人に相続分を譲渡しておくと、遺産分割協議に参加する人数が減り、手続を進めやすくなることがあります。

4 相続分の放棄(遺産分割で何も取得しない)

遺産分割協議で「自分は何も取得しない」と合意する方法です。一般に「相続を放棄した」と言われることがありますが、家庭裁判所での相続放棄とは別のものです。財産を取得しない人も、遺産分割協議書に署名し、実印を押して印鑑証明書を提供する必要があります。

5 借金との関係(最重要)

相続分の譲渡や、遺産分割で何も取得しない方法では、相続債権者(お金を貸していた側)との関係では、借金の負担を免れることはできないと考えられています。相続人間で「借金は長男が引き継ぐ」と決めても、債権者は、原則として各相続人に法定相続分に応じた支払いを求めることができると考えられています。

被相続人に借金がある、または借金があるかどうか分からない場合には、家庭裁判所での相続放棄を含めて、早めに検討することが大切です。3か月の期間が過ぎると相続放棄ができなくなるおそれがあります。

6 相続登記での扱い

  • 相続放棄をした人がいる場合:相続放棄申述受理証明書などを添付して、残りの相続人で登記を申請します。
  • 相続分の譲渡があった場合:相続分譲渡証書(印鑑証明書付き)などを添付して、遺産分割協議の結果に基づく登記を申請するのが一般的です。
  • 遺産分割で何も取得しない人がいる場合:その人を含む相続人全員の遺産分割協議書と印鑑証明書を添付します。

具体的な添付書類は事案によって異なるため、事前に確認が必要です。

7 司法書士の役割

司法書士は、相続放棄申述書の作成、相続分譲渡証書や遺産分割協議書の作成、相続登記の申請について、ご相談・ご依頼をお受けできます。相続人間の交渉や、債権者との交渉の代理は、内容や金額によっては司法書士の業務範囲を超えることがあり、その場合は弁護士へのご相談をご案内しています。

8 よくある質問

Q. 相続分を譲渡すると、税金はかかりますか?

A. 譲渡の相手や有償・無償などによって、課税関係が異なることがあります。税金については税理士にご確認ください。

Q. 一度相続放棄をしたら、取り消せますか?

A. 相続放棄の申述が受理された後は、原則として撤回できません(民法919条1項)。慎重に判断しましょう。

Q. 相続分の譲渡は口頭でもよいですか?

A. 登記などの手続で証明が必要になるため、書面(相続分譲渡証書)を作成し、実印の押印と印鑑証明書を添えるのが一般的です。

9 まとめ・ご相談の目安

「財産はいらない」という場合でも、借金を免れたいなら家庭裁判所での相続放棄が必要です。次のような場合には、ご相談をご検討ください。

  • 遺産を受け取るつもりはないが、どの方法が適しているか分からない
  • 被相続人に借金があるかもしれない
  • 相続人が多く、手続を簡単にしたい

当事務所では、相続放棄申述書、相続分譲渡証書、遺産分割協議書の作成、相続登記について、ご相談・ご依頼をお受けしています。

お電話でのお問い合わせ

お電話でのお問合せはこちら
TEL:06-7777-3812
営業時間:9:00〜19:00【全国対応】
定休日 :土日祝も相談できます。
お電話いただければ、時間外や土日祝日も含め、柔軟にご相談に応じております。お気軽にお問い合わせください。

関連記事

TOP