※ この記事は、共有不動産の共有者が亡くなった場合の一般的な解説です。この記事は令和8年9月時点の法令・制度に基づいています。税金の取扱いは税理士・税務署にご確認ください。個別の事情により結論が異なることがありますので、具体的な判断は専門家にご相談ください。
1 結論:亡くなった共有者の持分は、その人の相続人が相続します
共有不動産の共有者の一人が亡くなった場合、その人の持分は、他の共有者ではなく、亡くなった共有者の相続人が相続します。例えば、兄弟AとBが2分の1ずつ共有している土地で、Aが亡くなった場合、Aの持分2分の1は、Aの配偶者や子などの相続人に引き継がれます。Bの持分が増えるわけではありません。
「共有者が亡くなれば、残った共有者のものになる」と誤解されていることがありますが、残った共有者に持分が移るのは、後で説明する「相続人がいない場合」など、限られた場面です。
2 持分の相続登記が必要です
2-1 登記の義務
令和6年4月1日から相続登記は義務化されており、不動産の持分も対象です。相続人は、相続により持分を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請する必要があります。
2-2 持分の相続登記の概要
- 登記の内容:「A持分全部移転」として、Aの持分を相続人に移転する登記をします。他の共有者Bの持分はそのままです。
- 申請する人:Aの持分を取得する相続人(他の共有者Bの協力は不要です)。
- 必要書類:Aの出生から死亡までの戸籍、相続人の戸籍、遺産分割協議書と相続人の印鑑証明書(遺産分割をした場合)、取得する相続人の住民票 など。
- 登録免許税:固定資産税評価額のうちAの持分に相当する額 × 1,000分の4(免税措置の対象になる場合があります)。
2-3 遺産分割でAの持分を誰が取得するか決める
Aの相続人が複数いる場合は、Aの持分を誰が取得するか遺産分割協議で決めることができます。決まらない場合は、Aの相続人全員が法定相続分でAの持分を共有することになり、共有者の数が増えていきます。例えば、Aの持分2分の1を配偶者と子2人が相続すると、配偶者4分の1、子が各8分の1となり、B(2分の1)を含めて共有者が4人になります。
3 共有者が次々に亡くなると、権利関係が複雑になります
共有者が亡くなるたびに相続登記をしないでいると、共有者の相続人、そのまた相続人と、権利者がどんどん増えていきます。持分の計算も複雑になり、売却や管理に必要な同意を集めることが難しくなります。数次相続が起きた場合の持分の計算方法は、関連記事で詳しく解説しています。
4 亡くなった共有者に相続人がいない場合
4-1 他の共有者に帰属することがある
民法は、共有者の一人が死亡して相続人がないときは、その持分は他の共有者に帰属すると定めています(民法255条)。ただし、判例(最高裁平成元年11月24日判決)により、まず特別縁故者(内縁の配偶者など)への財産分与の手続きが優先され、分与されずに残った場合に、他の共有者に帰属するとされています。
4-2 相続財産清算人の選任が必要
相続人がいないことを確定させ、持分を他の共有者に移すためには、通常、家庭裁判所で相続財産清算人を選任してもらい、相続人の捜索や債権者への弁済などの手続きを経る必要があります。相続人全員が相続放棄をした場合も、相続人がいない状態になります。
4-3 税金の扱い
国税庁の相続税法基本通達では、共有者が死亡してその相続人がないときは、その持分は、他の共有者がその持分に応じて遺贈により取得したものとして取り扱うとされています(相続税法基本通達9-12)。相続税の申告が必要になるかどうかは、税理士にご確認ください。
5 他の共有者の立場で確認しておきたいこと
- 亡くなった共有者の相続人が誰になるのか(今後、話し合う相手が変わります)
- 固定資産税の負担や管理の分担を、新しい共有者とどう決めるか
- この機会に、相続人から持分を買い取るなどして共有状態を解消するか
他の共有者が、亡くなった共有者の相続人に代わって相続登記を申請することはできません。持分を買い取る場合も、まず相続人名義への相続登記を済ませたうえで、持分移転の登記をするのが通常です。
6 司法書士の役割
司法書士は、亡くなった共有者の相続人の調査(戸籍の収集)、遺産分割協議書の作成、持分の相続登記、その後の持分売買の登記、相続財産清算人の選任申立書の作成についてご相談・ご依頼をお受けできます。相続人との交渉の代理が必要な場合は、司法書士が対応できる範囲に限りがあるため、弁護士へのご相談をご案内しています。
7 よくある質問
Q. 亡くなった共有者の相続人が相続放棄をしたら、持分はどうなりますか?
A. 相続放棄をした人は初めから相続人でなかったことになるため、次の順位の相続人が持分を相続します。全員が放棄して相続人がいなくなった場合は、上記4の手続きになります。
Q. 共有者が亡くなったことをどうやって知ればよいですか?
A. 登記簿には死亡の事実は自動的には記載されません。固定資産税の納税通知や親族からの連絡で知ることが多いです。気になる場合は、共有者の親族に確認するなどして、早めに状況を把握しておきましょう。
8 まとめ・ご相談の目安
共有者の一人が亡くなると、その持分は相続人に引き継がれ、持分の相続登記が必要になります。相続人がいない場合に限り、特別縁故者への分与などを経て、他の共有者に帰属することがあります。次のような場合は、ご相談をご検討ください。
- 共有者が亡くなったが、その相続人が誰か分からない
- 亡くなった共有者の持分を買い取りたい
- 共有者の相続人がいない、または全員が相続放棄をした
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