コラム

遺言執行者とは?役割・権限と、遺言で指定されていないときの選任申立て

※ この記事は、遺言執行者に関する一般的な解説です。この記事は令和8年9月時点の法令・制度に基づいています。

1 結論:遺言執行者は、遺言の内容を実現するために必要な一切の行為をする権限を持つ人です

遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を持ちます(民法1012条1項)。遺言で指定しておくことができ、指定がない場合や指定された人が就任しない場合には、家庭裁判所に選任してもらうこともできます(民法1006条・1010条)。

2 遺言執行者がいると何が変わるか

2-1 手続を一人で進められる

遺言執行者がいれば、預貯金の解約・払戻しや、遺贈の登記など、遺言の内容を実現する手続を遺言執行者が中心となって進めます。相続人全員から書類を集める必要がなくなる場面もあり、相続人が多い場合や疎遠な相続人がいる場合に特に役立ちます。

2-2 遺贈の履行は遺言執行者のみが行う

遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は遺言執行者のみが行うことができます(民法1012条2項)。例えば、相続人以外の人への不動産の遺贈の登記は、遺言執行者と受遺者が共同で申請するのが一般的です。

2-3 相続人は遺言の執行を妨げられない

遺言執行者がある場合、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げる行為をすることができません(民法1013条1項)。

3 遺言執行者の主な仕事の流れ

  1. 就任を承諾したら、直ちに任務を開始する(民法1007条1項)
  2. 遺言の内容を相続人に遅滞なく通知する(民法1007条2項)
  3. 相続財産の目録を作成し、相続人に交付する(民法1011条1項)
  4. 遺言の内容に従い、預貯金の解約、不動産の名義変更、遺贈の履行などを行う
  5. 任務が終わったら、相続人等に報告する

遺言執行者は、相続人や受遺者に対して、善良な管理者の注意をもって職務を行う義務を負います(民法1012条3項・644条)。

4 誰が遺言執行者になれるか

未成年者と破産者は遺言執行者になることができません(民法1009条)。それ以外であれば、相続人の一人や受遺者がなることもでき、司法書士・弁護士などの専門職が指定されることもあります。

相続人の一人を遺言執行者にすると費用を抑えられる一方、他の相続人との関係で手続が進めにくくなることもあります。遺言の内容や家族関係を踏まえて検討しましょう。

5 遺言執行者の選任の申立て

遺言執行者が指定されていない場合や、指定された人が亡くなっている・就任を断った場合には、家庭裁判所に選任を申し立てることができます。

  • 申立人:利害関係人(相続人、遺言者の債権者、遺贈を受けた者など)
  • 申立先:遺言者の最後の住所地の家庭裁判所
  • 費用:遺言書1通につき収入印紙800円分と、連絡用の郵便切手(金額は裁判所ごとに異なります)
  • 主な必要書類:遺言者の死亡の記載のある戸籍謄本、遺言執行者候補者の住民票または戸籍附票、遺言書の写しまたは検認調書謄本の写し、利害関係を証する資料など

申立書には候補者を記載できますが、最終的に誰を選任するかは家庭裁判所が判断します。

6 遺言執行者が必要になりやすいケース

  • 相続人以外の人(孫、子の配偶者、お世話になった人など)に不動産を遺贈する場合
  • 遺言で子の認知をする場合(遺言執行者による届出が必要とされています。戸籍法64条)
  • 遺言で相続人の廃除やその取消しをする場合(民法893条・894条2項)
  • 相続人が多い、疎遠な相続人がいるなど、協力を得にくい事情がある場合

7 司法書士の役割

司法書士は、遺言書作成時の遺言執行者の指定についてのご相談、遺言執行者選任申立書の作成、遺言に基づく相続登記・遺贈の登記の申請について、ご相談・ご依頼をお受けできます。また、司法書士が遺言執行者に就任することもあります。遺言の有効性をめぐる争いや、遺留分をめぐる請求・交渉の代理は司法書士の業務範囲を超えることがあり、その場合は弁護士へのご相談をご案内しています。

8 よくある質問

Q. 遺言執行者に指定されましたが、断ることはできますか?

A. 就任するかどうかは、指定された人が判断できます。相続人などから就任するかどうかの確答を求められ、期間内に確答しないときは、就任を承諾したものとみなされます(民法1008条)。

Q. 遺言執行者の報酬はどうなりますか?

A. 遺言で定められていればそれに従い、定めがなければ家庭裁判所が報酬を定めることができます(民法1018条1項)。

Q. 自筆の遺言書でも遺言執行者は指定できますか?

A. できます。ただし、自宅などで保管されていた自筆証書遺言は、家庭裁判所の検認を受けてから手続に使うのが通常です。

9 まとめ・ご相談の目安

遺言執行者は、遺言の内容を実現するための手続を担う人です。次のような場合には、ご相談をご検討ください。

  • 遺言書に遺言執行者が指定されていない、または指定された人が就任できない
  • 遺言執行者に指定されたが、何をすればよいか分からない
  • これから遺言書を作るので、遺言執行者を誰にするか検討したい

当事務所では、遺言書作成のサポート、遺言執行者選任申立書の作成、遺言に基づく登記について、ご相談・ご依頼をお受けしています。

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