※ この記事は、所在等不明共有者の持分の取得・譲渡に関する一般的な解説です。この記事は令和8年9月時点の法令・制度に基づいています。手続の詳細は、管轄の地方裁判所の案内もあわせてご確認ください。
1 結論:他の共有者の所在が分からないときは、裁判所の決定でその持分を取得できる制度があります
不動産を共有していて、他の共有者が誰か分からない、または所在が分からないため、売却や建替えの話し合いができない、という問題があります。令和5年4月1日に施行された改正民法により、裁判所の決定を得て、所在等不明共有者の持分を取得する制度(民法262条の2)と、所在等不明共有者の持分を含めて不動産全体を第三者に譲渡する権限を得る制度(民法262条の3)が設けられました。
2 2つの制度の違い
2-1 持分の取得(民法262条の2)
共有者の請求により、裁判所が、その共有者に所在等不明共有者の持分を取得させる決定をします。持分を取得した共有者は、所在等不明共有者に対して、取得した持分の時価相当額を支払う義務を負います(同条4項)。
2-2 持分の譲渡権限の付与(民法262条の3)
所在等不明共有者以外の共有者全員が、特定の第三者に持分全部を譲渡することを条件として、所在等不明共有者の持分もその第三者に譲渡する権限を与える決定です。共有者全員で不動産全体を売却したい場合に使われます。
3 相続が絡む場合の「10年ルール」
所在等不明共有者の持分が相続財産に属し、共同相続人間で遺産分割をすべき場合には、相続開始の時から10年を経過していないと、この決定を受けることができません(民法262条の2第3項・262条の3第2項)。
例えば、兄弟で相続した実家について、遺産分割が終わらないまま兄弟の一人が行方不明になった、というケースでは、原則として相続開始から10年が経過するまで、この制度は使えないことになります。10年経過前であれば、不在者財産管理人の選任など、別の方法を検討することになります。
4 手続の概要
- 申立先:不動産の所在地を管轄する地方裁判所(非訟事件手続法87条1項)
- 所在等不明であることの資料:登記簿・住民票・戸籍の調査結果、郵便物が返送された資料など、探索を尽くしたことを示す資料が求められます。
- 公告:裁判所は、申立てがあったことや、異議の届出ができる期間などを公告します。これらの期間は3か月を下ってはならないとされています(同条2項)。
- 供託:裁判所が定める額(所在等不明共有者の持分の時価相当額を考慮した額)を、申立人が供託する必要があります(同条5項)。
申立手数料や官報公告費用、供託金の額は事案や裁判所によって異なります。持分の評価資料(固定資産評価証明書、査定書など)の準備も必要になります。
5 決定後の登記
持分取得の決定が確定した後は、その決定に基づいて、所在等不明共有者から申立人への持分移転の登記を申請することになります。どのような添付書類が必要かは、事前に確認して進めます。
6 ほかの選択肢との比較
- 不在者財産管理人の選任:行方不明の人の財産を管理する人を家庭裁判所に選んでもらい、その管理人と遺産分割や売却を行う方法です。相続開始から10年を経過していない場合にも使えます。
- 所有者不明土地・建物管理制度:所有者(共有者)が分からない土地・建物について、裁判所が管理人を選任する制度です(民法264条の2以下)。
どの手続が適しているかは、行方不明の人との関係、相続の有無と時期、不動産をどうしたいか(取得したい・売却したい)によって異なります。
7 司法書士の役割
司法書士は、登記簿や戸籍・住民票による共有者の調査、裁判所に提出する申立書類の作成、決定後の登記申請について、ご相談・ご依頼をお受けできます。所在等不明共有者以外の共有者との間で意見が対立している場合の交渉や、訴訟の代理は、内容や金額によっては司法書士の業務範囲を超えることがあり、その場合は弁護士へのご相談をご案内しています。
8 よくある質問
Q. 共有者の住所は分かるが、連絡しても返事がない場合も使えますか?
A. この制度は、共有者を知ることができない、またはその所在を知ることができない場合のものです。所在は分かるが協力が得られない場合は、共有物分割の手続など、別の方法を検討することになります。
Q. 相続登記がされておらず、共有者が亡くなった人のままの場合は?
A. 登記名義人の相続人を戸籍で調査する必要があります。相続人が判明すれば、その相続人が共有者として扱われるため、まずは調査が出発点になります。
Q. 行方不明の人が後から現れたらどうなりますか?
A. 所在等不明共有者は、持分を取得した共有者に対し、時価相当額の支払を請求できます。そのための供託が手続上求められています。
9 まとめ・ご相談の目安
共有者の所在が分からない不動産でも、裁判所の決定により持分を取得したり、全体を売却したりできる制度があります。次のような場合には、ご相談をご検討ください。
- 共有者の一人が行方不明で、不動産の売却や活用ができない
- 登記簿上の共有者が古い名義のままで、誰が共有者か分からない
- 相続した不動産について、どの手続を使えるか知りたい
当事務所では、共有者や相続人の調査、裁判所提出書類の作成、登記申請について、ご相談・ご依頼をお受けしています。

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