コラム

内縁の妻(夫)・事実婚のパートナーは相続人になる?財産を残すための方法と特別縁故者

※ この記事は、内縁関係(事実婚)にあるパートナーの相続に関する一般的な解説です。この記事は令和8年9月時点の法令・制度に基づいています。個別の事情により結論が異なることがありますので、具体的な判断は専門家にご相談ください。

1 結論:内縁の配偶者は法律上の相続人ではありません。財産を残すには生前の準備が重要です

民法で相続人になる「配偶者」は、婚姻届を出した法律上の配偶者に限られます(民法890条)。長年一緒に暮らしていても、婚姻届を出していない内縁の配偶者(事実婚のパートナー)は、法定相続人にはなりません。

そのため、何も準備をしないまま一方が亡くなると、財産は子や親、兄弟姉妹などの法定相続人が相続し、パートナーには原則として相続権がないことになります。

2 パートナーに財産を残すための主な方法

2-1 遺言書で遺贈する

最も基本的な方法は、遺言書で「内縁の妻(氏名)に自宅を遺贈する」などと定めておくことです。遺言執行者も指定しておくと、手続を進めやすくなります。

ただし、子や親などの法定相続人には遺留分(一定の取り分)があるため(民法1042条)、遺言の内容によっては、相続人から遺留分侵害額の請求を受ける可能性があります。

2-2 生前贈与

生前に不動産などを贈与する方法もあります。ただし、贈与税がかかる場合があるため、税理士への確認が必要です。

2-3 生命保険の受取人に指定する

保険会社によっては、一定の条件のもとで内縁の配偶者を受取人に指定できる場合があります。取扱いは保険会社ごとに異なります。

3 登記の手続と費用の違い

内縁の配偶者は相続人ではないため、遺言で不動産を取得する場合は「遺贈」による所有権移転登記となり、相続人と比べて次のような違いがあります。

  • 申請方法:遺言執行者(いない場合は相続人全員)と受遺者との共同申請が原則です。
  • 登録免許税:相続人以外への遺贈は、不動産の価額の1,000分の20です(相続の場合は1,000分の4)。

遺言執行者を指定していないと、疎遠な相続人の協力が必要になり、手続が進まないおそれがあります。

4 相続人が誰もいない場合:特別縁故者への財産分与

被相続人に法定相続人が一人もいない場合(または全員が相続放棄した場合)には、家庭裁判所が選任した相続財産の清算人による手続を経て、被相続人と生計を同じくしていた者、療養看護に努めた者その他特別の縁故があった者が請求すれば、家庭裁判所の判断で財産の全部または一部を受け取れることがあります(民法958条の2第1項)。

  • この請求は、相続人の捜索の公告で定められた期間の満了後3か月以内にしなければなりません(同条2項)。
  • 分与が認められるか、どの程度認められるかは家庭裁判所の判断であり、必ず受け取れるものではありません。

なお、相続人がいる場合には、この制度は使えません。また、被相続人の親族が無償で療養看護などをした場合の「特別寄与料」(民法1050条)は、被相続人の親族が対象であり、内縁の配偶者は対象に含まれません。

5 住まいについての注意点

配偶者居住権(民法1028条)は、法律上の配偶者のための制度であり、内縁の配偶者には認められません。パートナーの名義の家に住み続けたい場合は、遺言で自宅を遺贈しておくなど、生前の対策を検討する必要があります。

6 司法書士の役割

司法書士は、遺言書作成のサポート、遺贈による所有権移転登記、生前贈与の登記、相続財産の清算人選任や特別縁故者への財産分与の申立書の作成について、ご相談・ご依頼をお受けできます。相続人との間で遺留分などをめぐる争いがある場合の交渉や代理は司法書士の業務範囲を超えることがあり、その場合は弁護士へのご相談をご案内しています。

7 よくある質問

Q. 内縁の配偶者との間の子は相続人になりますか?

A. 父との関係では、認知されていれば子として相続人になります。母との関係では、出産により親子関係が生じるため、相続人になります。

Q. 住民票で「妻(未届)」と記載されていれば相続できますか?

A. 住民票の記載によって相続権が生じるわけではありません。遺言などの準備が必要です。

Q. 遺言書は自筆でもよいですか?

A. 自筆証書遺言でも可能ですが、方式の不備で無効になるおそれや、相続人との争いに備える観点から、公正証書遺言や法務局の保管制度の利用も検討するとよいでしょう。

8 まとめ・ご相談の目安

内縁の配偶者は法定相続人ではないため、財産を残したい場合は遺言などの生前の準備が欠かせません。次のような場合には、ご相談をご検討ください。

  • 事実婚のパートナーに自宅を残したい
  • パートナーが亡くなり、相続人がいない、または相続人と連絡が取れない
  • 遺贈による名義変更の手続を進めたい

当事務所では、遺言書作成のサポート、遺贈の登記、家庭裁判所に提出する書類の作成について、ご相談・ご依頼をお受けしています。

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