※ この記事は、相続により農地を取得した場合の手続に関する一般的な解説です。この記事は令和8年9月時点の法令・制度に基づいています。届出の方法や期限の運用は、農地のある市町村の農業委員会にご確認ください。
1 結論:相続で農地を取得したら、相続登記とは別に農業委員会への届出が必要です
農地(田や畑)を売買や贈与で取得するには、原則として農業委員会の許可が必要です(農地法3条)。一方、相続によって農地を取得する場合は、この許可は不要ですが、農地のある市町村の農業委員会に届け出なければなりません(農地法3条の3)。
この届出は、法務局への相続登記とは別の手続です。相続登記をしても、農業委員会への届出が自動的に行われるわけではありません。
2 届出の概要
- 届出をする人:相続(遺産分割・包括遺贈などを含む)により農地の権利を取得した人
- 届出先:農地のある市町村の農業委員会
- 期限:法律上は「遅滞なく」とされています。具体的な期限の目安は、農業委員会で確認しましょう。
- 主な記載事項:届出者の氏名・住所、農地の所在・地番・地目・面積、権利を取得した日、取得の事由(相続など)、取得した権利の種類など
正当な理由なく届出をしなかったり、虚偽の届出をしたりすると、10万円以下の過料に処せられることがあります(農地法69条)。
3 相続登記も忘れずに
農地であっても、相続登記の申請義務の対象です。相続により取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があり、2024年4月1日より前の相続は、原則として2027年(令和9年)3月31日までが期限です。評価額が100万円以下の土地であれば、2027年3月31日まで登録免許税が免除される措置もあります。
4 耕作できない場合の選択肢
相続した農地を自分で耕作できない場合でも、農地の管理責任は残ります。主な選択肢は次のとおりです。
- 貸す:農業委員会や農地中間管理機構(農地バンク)を通じて、担い手に貸し出す方法があります。
- 売る:農地のまま売る場合は農業委員会の許可が、宅地などに転用して売る場合は転用の許可(または届出)が必要です。
- 国に引き取ってもらう:一定の要件を満たせば、相続土地国庫帰属制度を利用できる場合があります。
- 相続放棄:農地だけを放棄することはできず、他の財産もすべて放棄することになります。期限(原則3か月)にも注意が必要です。
農業委員会に届け出る際に、貸し付けなどの希望を伝えると、あっせんなどの情報を得られることがあります。
5 遺産分割で気をつけたいこと
- 農地を複数の相続人の共有にすると、貸し出しや売却の際に全員の協力が必要になり、手続が難しくなることがあります。
- 農業を続ける相続人がいる場合は、その人が取得するよう協議することも検討しましょう。
- 相続税の納税猶予の特例など、税金面の制度もあります。適用の可否は税理士にご確認ください。
6 司法書士の役割
司法書士は、農地を含む相続登記の申請、遺産分割協議書の作成、相続土地国庫帰属制度の申請書類の作成などについて、ご相談・ご依頼をお受けできます。農地法の許可申請など他の専門分野については、適切な専門家をご案内します。
7 よくある質問
Q. 登記簿の地目が「田」でも、実際には宅地として使っている場合は?
A. 農地かどうかは、登記簿の地目ではなく現況で判断されるのが原則です。扱いについては農業委員会に確認しましょう。
Q. 相続人以外が遺言で農地をもらった場合も届出だけでよいですか?
A. 包括遺贈や相続人に対する特定遺贈は許可が不要とされていますが、相続人以外に対する特定遺贈は、原則として農業委員会の許可が必要です。
Q. 届出書はどこで入手できますか?
A. 農業委員会の窓口やホームページで入手できることが多いです。
8 まとめ・ご相談の目安
農地を相続したら、相続登記とは別に農業委員会への届出が必要です。次のような場合には、ご相談をご検討ください。
- 相続した農地の登記がまだ済んでいない
- 農地を誰が相続するか、遺産分割の進め方に迷っている
- 耕作しない農地を手放す方法を知りたい
当事務所では、農地を含む相続登記や遺産分割協議書の作成について、ご相談・ご依頼をお受けしています。
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