※ この記事は、成年後見人(親族後見人)に選任された方向けの一般的な解説です。この記事は令和8年9月時点の法令・制度に基づいています。家庭裁判所ごとに提出書類の書式や運用が異なるため、選任された家庭裁判所の案内をご確認ください。成年後見制度は、令和8年6月24日公布の改正民法により見直しが予定されています(本文7参照)。
1 結論:選任後は、まず1か月以内に財産を調査して目録を作り、その後は家庭裁判所に定期的に報告します
成年後見人は、判断能力が十分でない本人に代わって財産を管理し、生活や療養看護に関する契約などを行う立場です。後見人には、本人の意思を尊重し、心身の状態や生活の状況に配慮する義務があります(民法858条)。選任されたら、次のような流れで職務を進めます。
2 選任直後にやること
2-1 審判書の受領と登記
後見開始の審判が確定すると、家庭裁判所の依頼により、後見の内容が法務局に登記されます。金融機関などで後見人であることを示すため、法務局で「登記事項証明書」を取得して使います。
2-2 財産の調査と財産目録の作成(1か月以内)
後見人は、遅滞なく本人の財産の調査に着手し、原則として1か月以内に調査を終えて財産目録を作成しなければなりません(民法853条1項)。預貯金、不動産、保険、有価証券、負債などを確認し、家庭裁判所に提出します。あわせて、本人の収入と支出の見込み(収支予定表)も作成するのが一般的です。
2-3 各機関への届出
金融機関、年金事務所、市区町村(介護保険・税金など)、保険会社などに、後見人が選任されたことを届け出て、郵便物の送付先や手続の窓口を後見人に変更します。
3 日常の財産管理
- 本人の財産と後見人自身の財産を分けて管理する(混同しない)
- 収入・支出を記録し、領収書を保管する
- 本人のための支出であることを説明できるようにしておく
- 本人の財産を後見人や親族のために使わない(贈与や貸付けも原則として不可)
4 家庭裁判所の許可や報告が必要な場面
- 居住用不動産の処分:本人の自宅を売却・賃貸・取壊し・抵当権設定などする場合は、家庭裁判所の許可が必要です(民法859条の3)。
- 利益相反行為:後見人と本人がともに相続人となる遺産分割など、利益が対立する場合は、後見監督人がいなければ特別代理人の選任が必要です。
- 定期報告:家庭裁判所から指定された時期に、後見事務の報告書、財産目録、通帳の写しなどを提出します。
- 重要な変化:本人の入院・施設入所、住所変更、多額の入出金、本人の死亡などがあった場合は、速やかに家庭裁判所へ連絡します。
5 後見人の報酬
後見人は、家庭裁判所に報酬付与の申立てをし、認められた額を本人の財産から受け取ることができます(民法862条)。勝手に本人の財産から報酬を差し引くことはできません。
6 本人が亡くなったとき
本人が亡くなると後見は終了し、後見人は家庭裁判所への報告、後見終了の登記の申請、管理していた財産の相続人への引継ぎなどを行います。原則として2か月以内に管理の計算(収支の報告)をする必要があります(民法870条)。
7 成年後見制度の改正(令和8年6月24日公布)
改正民法により、後見・保佐を補助の制度に一元化し、特定の行為について権限を付与する仕組みを基本とする見直しや、必要がなくなった場合に制度の利用を終了できる仕組みが設けられる予定です。施行は公布から2年6月を超えない範囲で政令で定める日とされています。施行までは現行制度が適用されます。
8 司法書士の役割
司法書士は、財産目録・収支予定表・定期報告書の作成のサポート、居住用不動産処分許可の申立書の作成、本人の不動産に関する登記、後見終了時の手続について、ご相談・ご依頼をお受けできます。また、司法書士が専門職後見人として選任されることもあります。
9 よくある質問
Q. 家族の生活費を本人の財産から出してもよいですか?
A. 本人に扶養義務がある配偶者や未成年の子の生活費など、一定の場合を除き、本人以外のために財産を使うことは原則としてできません。判断に迷う場合は、事前に家庭裁判所に相談しましょう。
Q. 後見人を辞めることはできますか?
A. 正当な事由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を得て辞任できます(民法844条)。
Q. 報告書の書き方が分かりません。
A. 家庭裁判所の書式や記載例を確認するほか、専門家に作成のサポートを依頼することもできます。
10 まとめ・ご相談の目安
成年後見人に選ばれたら、1か月以内の財産目録の作成、日常の財産管理、家庭裁判所への定期報告が主な職務になります。次のような場合には、ご相談をご検討ください。
- 財産目録や定期報告書の作成に不安がある
- 本人の自宅の売却を検討している
- 本人が亡くなり、後見終了の手続が必要になった
当事務所では、成年後見に関する書類作成や登記について、ご相談・ご依頼をお受けしています。
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