コラム

任意後見制度とは?元気なうちに将来の後見人を決めておく契約の流れと、法定後見との違い

※ この記事は、任意後見制度に関する一般的な解説です。この記事は令和8年9月時点の法令・制度に基づいています。令和8年6月24日公布の改正民法等により、任意後見制度にも見直しが予定されています(本文6参照)。

1 結論:任意後見は、判断能力があるうちに「将来の後見人」と「任せる内容」を契約で決めておく制度です

任意後見制度は、本人が判断能力のあるうちに、将来判断能力が不十分になったときに備えて、信頼できる人(任意後見受任者)に、財産管理や生活・療養看護に関する事務を任せる契約をしておく制度です(任意後見契約に関する法律)。任意後見契約は、公正証書で作成しなければなりません(同法3条)。

2 法定後見との違い

  • 後見人を選ぶ人:法定後見は家庭裁判所が選びますが、任意後見は本人が自分で選べます。
  • 任せる内容:法定後見は法律で権限が定まりますが、任意後見は契約で代理権の範囲を決めます。
  • 始まる時期:法定後見は判断能力が低下した後に申し立てますが、任意後見は元気なうちに契約し、判断能力が不十分になった後に効力が生じます。
  • 取消権:任意後見人には、本人がした契約を取り消す権限(取消権)がありません。

3 任意後見の流れ

  1. 任せる相手(任意後見受任者)と、任せる内容(代理権の範囲)を決める
  2. 公証役場で任意後見契約の公正証書を作成する(契約内容は法務局に登記されます)
  3. 本人の判断能力が不十分になったら、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立てる
  4. 任意後見監督人が選任されると、任意後見契約の効力が生じ、任意後見人が事務を開始する

任意後見監督人の選任を申し立てることができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族、任意後見受任者です(同法4条1項)。任意後見人は、任意後見監督人の監督を受けながら職務を行います。

4 よく組み合わせて使われる契約

  • 見守り契約:任意後見が始まるまでの間、定期的に連絡・面談して本人の状況を確認する契約
  • 財産管理委任契約:判断能力はあるものの、体が不自由なときなどに、財産管理を任せる契約
  • 死後事務委任契約:亡くなった後の葬儀や各種届出などを任せる契約
  • 遺言:亡くなった後の財産の承継先を決める

任意後見は本人が亡くなると終了するため、亡くなった後のことは遺言や死後事務委任契約で準備しておく必要があります。

5 注意したいポイント

  • 判断能力が低下した後では、任意後見契約を結ぶことはできません。
  • 代理権の範囲は具体的に定めておかないと、必要なときに手続ができないことがあります(例:不動産の売却、施設入所の契約など)。
  • 任意後見監督人の報酬が本人の財産から支払われます。
  • 本人の判断能力が低下しても、誰も申立てをしなければ任意後見は始まりません。

6 改正民法等による見直し(令和8年6月24日公布)

改正により、任意後見については、家庭裁判所が明らかに監督の必要がないと認めるときに任意後見監督人を選任せず直接監督できるようにすることや、本人が公正証書で指定した者にも任意後見契約を発効させる手続の申立てを認めることなどが予定されています。施行は公布から2年6月を超えない範囲で政令で定める日とされ、施行までは現行制度が適用されます。

7 司法書士の役割

司法書士は、任意後見契約の内容の検討、公正証書作成に向けた文案作成のサポート、任意後見受任者への就任、任意後見監督人選任申立書の作成について、ご相談・ご依頼をお受けできます。

8 よくある質問

Q. 家族を任意後見人にできますか?

A. できます。ただし、任意後見人には一定の事務負担と責任があるため、本人・家族でよく話し合っておくことが大切です。専門職を任意後見人にすることもできます。

Q. 任意後見と家族信託はどう違いますか?

A. 任意後見は財産管理と身上保護(契約手続など)を幅広く代理できる一方、家庭裁判所・監督人の関与があります。家族信託は財産の管理・処分を柔軟に設計できますが、身上保護は対象外です。両方を組み合わせることもあります。

Q. 契約した後に内容を変えられますか?

A. 任意後見監督人が選任される前であれば、公証人の認証を受けた書面によっていつでも契約を解除でき(任意後見契約に関する法律9条1項)、改めて新しい契約を結ぶことができます。

9 まとめ・ご相談の目安

任意後見は、元気なうちに将来の後見人と任せる内容を自分で決めておける制度です。次のような場合には、ご相談をご検討ください。

  • 認知症に備えて、信頼できる人に財産管理を任せたい
  • 任意後見・法定後見・家族信託の違いを知りたい
  • 亡くなった後の手続も含めて準備しておきたい

当事務所では、任意後見契約や遺言など、生前の備えについてご相談・ご依頼をお受けしています。

関連記事

お電話でのお問い合わせ

お電話でのお問合せはこちら
TEL:06-7777-3812
営業時間:9:00〜19:00【全国対応】
定休日 :土日祝も相談できます。
お電話いただければ、時間外や土日祝日も含め、柔軟にご相談に応じております。お気軽にお問い合わせください。

関連記事

TOP