コラム

亡くなった人の預貯金の相続手続き 残高証明・取引履歴の取り寄せから解約まで、金融機関ごとの違い

※ この記事は、亡くなった方の預貯金の相続手続きに関する一般的な解説です。この記事は令和8年10月時点の法令に基づいています。金融機関の手続きや必要書類は金融機関ごとに異なり、変更されることもありますので、実際の手続きは各金融機関の案内をご確認ください。

1 預貯金の相続手続きの全体像

口座の名義人が亡くなったことを金融機関が知ると、一般に、その口座の入出金はできなくなります。その後は、相続人が金融機関所定の書類と戸籍などを提出して、解約(払戻し)や名義変更をします。大まかな流れは次のとおりです。

  1. 金融機関に死亡を連絡し、相続手続きの書類を取り寄せる
  2. 残高証明書・取引履歴(入出金の明細)を請求し、遺産の内容を確認する
  3. 誰が預貯金を取得するかを決める(遺言書の確認、遺産分割協議)
  4. 相続届などの書類に署名押印し、戸籍・印鑑証明書などと一緒に提出する
  5. 払戻し(指定口座への入金)や名義変更を受ける

2 当事務所の実務から:金融機関ごとに「最初の一歩」が違います

当事務所では、預貯金の相続手続きをお手伝いする際に、金融機関ごとの手順を書き出した流れ表を作り、ご依頼者にお渡ししています。そこから分かるのは、書類の取り寄せ方が金融機関によって大きく違うということです。

  • 相続専用の窓口に電話する金融機関:電話で死亡の事実(被相続人の生年月日・死亡日)と、残高証明書・取引履歴が必要なことを伝えると、相続届などの書類が郵送されてくる。残高証明書の請求は、取引支店に来店予約をして行う。
  • 窓口で照会の書類を出す金融機関:ホームページから委任状や照会書・残高証明書の請求書などをダウンロードして記入し、窓口に提出すると、後日「相続に関する必要書類のご案内」が送られてくる。

現在は、Webの受付フォームやアプリから死亡の連絡や相続の届出ができる金融機関もあります(2026年10月、大手銀行・ゆうちょ銀行の案内で確認)。

また、相続届に誰が署名押印(実印)するかも、遺産の分け方によって変わります。当事務所で扱った金融機関の書類では、例えば次のように案内されていました。

  • 遺産分割協議書がある場合:相続人全員
  • 遺言書があり、遺言執行者がいる場合:遺言執行者(と受遺者)
  • 遺言書があり、遺言執行者がいない場合:受遺者(預金を受け取る人)

遺産分割協議書がある場合でも、協議書に相続人全員が署名押印(実印)していれば、相続届は預金を取得する相続人だけの署名押印でよいとする金融機関もあります。このように、誰の署名押印が必要かは金融機関ごとに異なります。

自筆の遺言書の場合は、法務局で保管されていたものを除き、家庭裁判所の検認を受けたことの証明書も求められます(遺言書の検認の流れ)。金融機関によって細部が異なるため、当事務所では、最初に各金融機関の案内を取り寄せてから、必要書類を一覧にしてご案内しています。

3 証券口座(株式・投資信託)がある場合

証券会社に株式や投資信託がある場合は、預金のように払い戻すのではなく、相続人名義の口座(特定口座など)に移す手続きが基本になります。相続人が口座を持っていなければ、先に口座を開設する必要があります。投資信託を引き継ぐ場合は、承継する相続人に対して商品のリスクの説明が行われるのが一般的で、手続きに時間がかかることがあります。

4 遺産分割の前にお金が必要なとき

葬儀費用など、遺産分割の前にお金が必要な場合は、各相続人が単独で、一定額まで預貯金の払戻しを受けられる制度があります(民法909条の2)。金額の上限は、口座の残高の3分の1に法定相続分を掛けた額で、1つの金融機関につき150万円までです。払い戻した分は、その相続人が遺産の一部を先に取得したものとして扱われます。詳しくは相続預金の払戻し制度をご覧ください。

5 注意したいこと

  • 相続放棄を考えている場合は、預金に手を付けない:相続財産を処分すると、相続を承認したものとみなされ、相続放棄ができなくなることがあります(民法921条)。
  • 残高証明書は早めに取る:遺産の全体を確認し、遺産分割協議書を作るための基礎資料になります。相続税の申告が必要かどうかの検討にも使われます(申告は税理士にご相談ください)。
  • 預貯金以外の届出も忘れずに:健康保険証の返還、固定資産税の課税名義の変更、生命保険金の請求、公共料金の名義変更など、預貯金以外の手続きも並行して進めます。

6 亡くなった人の貸金庫を開けるには

貸金庫は相続人の一人だけでは開けられないのが一般的

銀行の貸金庫の利用者が亡くなると、銀行は貸金庫の開扉を止めます。貸金庫の中身は相続財産であり、貸金庫を借りる契約上の地位も相続人全員に引き継がれるため、多くの銀行では、相続人全員の同意(または全員の立会い)がなければ開扉に応じません。

貸金庫があるかを調べる

  • 自宅で貸金庫の鍵やカードが見つかる
  • 通帳に貸金庫の利用料の引落しがある
  • 銀行から利用料の案内が届いている

このような手がかりがあれば、その銀行に貸金庫契約の有無を問い合わせます。

開扉の手続き

必要書類は銀行によって異なりますが、一般的には次のものを求められます。

  • 亡くなった方の死亡と相続人全員が分かる戸籍(または法定相続情報一覧図の写し)
  • 相続人全員の印鑑証明書と、銀行所定の同意書(立ち会わない相続人の分)
  • 立ち会う相続人の本人確認書類・実印
  • 貸金庫の鍵・カード(紛失している場合は、鍵の交換費用がかかることがあります)

遺言で遺言執行者が指定されている場合は、遺言執行者が開扉できる取扱いをしている銀行もあります。

中身の記録を残す

貸金庫の中身は、後の遺産分割でトラブルにならないように、開扉の場で記録を残しておくことが大切です。

  • 開扉には、できるだけ複数の相続人が立ち会う
  • 中身を一点ずつ確認し、写真を撮ったり目録を作ったりする
  • 現金・貴金属・権利証・預金通帳・有価証券などを分けて記録する

立ち会えない相続人がいる場合は、公証人に立会いを依頼して状況を記録してもらう方法(事実実験公正証書)もあります。

遺言書が入っていたら

貸金庫から自筆の遺言書が見つかった場合は、開封せずに家庭裁判所で検認を受けます。公正証書遺言であれば検認は不要です。検認の流れは自宅で遺言書が見つかったらをご覧ください。

7 当事務所でのご相談から:時間がかかりやすい点と、ご依頼の多い事情

預貯金の相続手続きでは、戸籍の収集・確認や、金融機関ごとの必要書類の準備に時間がかかることがあります。相続人が複数いる場合や遠方に住んでいる場合は、書類の取りまとめにも時間がかかりやすくなります。

当事務所には、遠方に住んでいる、平日に金融機関へ行くことが難しい、複数の金融機関に口座がある、相続人が多いといった事情からご依頼いただくことがあります。相続人の確定から金融機関への提出書類の準備まで、まとめて進めたいというご相談もあります。

8 よくある質問

Q. 相続人の一人が、代表して手続きできますか?

A. 手続きの窓口を代表者が務めることは多いです。ただし、遺産分割協議書には相続人全員の署名押印(実印)と印鑑証明書が必要です。金融機関の相続届に誰が署名押印するかは、金融機関や遺産の分け方によって異なります(協議書がある場合は、預金を取得する人だけでよいとする金融機関もあります)。

Q. 不動産の相続登記と一緒に頼めますか?

A. 当事務所では、相続人調査と遺産分割協議書の作成を相続登記と共通で行い、預貯金の手続きもあわせてご相談をお受けしています。

9 まとめ・ご相談の目安

預貯金の相続手続きは、金融機関ごとに書類の取り寄せ方や必要書類が異なります。口座が複数の金融機関にある場合は、戸籍などの書類を使い回す順番も含めて、計画的に進めることが大切です。次のような場合は、ご相談をご検討ください。

  • 口座が複数の金融機関にあり、手続きの負担が大きい
  • 相続人が多い、または遠方に住んでいる
  • 不動産の相続登記もあわせて進めたい

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