コラム

子どもがいない夫婦の相続は誰が相続人?配偶者と兄弟姉妹(甥・姪)の相続分と手続き

※ 本文中の事例は、実務で見られる典型的な問題を一般化した仮想の例であり、実在の依頼者・案件ではありません。この記事は令和8年9月時点の法令・制度に基づいています。

1 結論:子も親(祖父母)もいなければ、配偶者と兄弟姉妹が相続人です

子どもがいない方が亡くなった場合、相続人は、①配偶者(常に相続人)と、②その次の順位の人です。子(子が先に亡くなっているときはその子=孫など)がいなければ直系尊属(父母・祖父母)、直系尊属もいなければ兄弟姉妹が、配偶者と一緒に相続人になります(民法887条・889条・890条)。

2 相続人になる順位

  • 配偶者:常に相続人になります(民法890条)。
  • 第1順位:子(民法887条1項)
  • 第2順位:直系尊属(父母、父母が亡くなっていれば祖父母など。親等の近い人が先)(民法889条1項1号)
  • 第3順位:兄弟姉妹(民法889条1項2号)

上の順位の人が1人でもいれば、下の順位の人は相続人になりません。兄弟姉妹が相続人になるのは、子も直系尊属もいない場合に限られます。

3 相続分(現行の民法)

相続人の組合せ 相続分
配偶者と兄弟姉妹 配偶者4分の3、兄弟姉妹(全員で)4分の1(民法900条3号)
兄弟姉妹が数人 原則として等分。ただし、父母の一方だけを同じくする兄弟姉妹は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の2分の1(民法900条4号ただし書)

具体例(仮想の例):夫が亡くなり、子も親もおらず、夫の兄と妹(どちらも父母が同じ)が生存している場合、妻4分の3、兄8分の1、妹8分の1です。

父母の一方だけが同じ兄弟姉妹がいる場合(仮想の例):妻のほかに、父母が同じ兄1人と、父だけが同じ弟1人がいる場合、兄弟姉妹全体の4分の1を「兄:弟=2:1」で分けます。兄6分の1、弟12分の1、妻4分の3です。

4 兄弟姉妹が先に亡くなっている場合(甥・姪まで)

兄弟姉妹が相続の開始以前に亡くなっていたときは、その兄弟姉妹の子(被相続人から見て甥・姪)が代わりに相続人になります(代襲相続。民法889条2項、887条2項)。

  • 代襲は甥・姪までです。 甥・姪も先に亡くなっている場合、その子(さらに下の世代)は相続人になりません。子の場合と違い、兄弟姉妹の代襲には、さらにその子が代襲する規定(再代襲、民法887条3項)は準用されていません(民法889条2項は887条2項のみを準用)。
  • 兄弟姉妹の配偶者は、代襲相続人になりません。
  • 代襲する人の相続分は、亡くなった兄弟姉妹が受けるはずだった分と同じです。代襲する人が数人いれば、その分を等分します(民法901条1項・2項)。

具体例(仮想の例):妻と、夫の兄(先に亡くなり、兄の子が2人)と、夫の妹(生存)が相続人になる場合。妻4分の3、妹8分の1、兄の枠(8分の1)を甥・姪が2人で分けて、1人16分の1です。

5 兄弟姉妹には遺留分がありません

遺留分(一定の相続人が最低限受け取れる割合)は、兄弟姉妹以外の相続人に認められています(民法1042条1項)。そのため、遺言で「全財産を配偶者に」と定めた場合、兄弟姉妹は遺留分を主張できません。遺言書を作成する場合の内容や方式は、専門家にご相談ください。

6 手続きの流れと、司法書士実務上の注意点

  1. 相続人を戸籍で確定する:被相続人の出生から死亡までの戸籍に加え、子や直系尊属がいないこと、兄弟姉妹(先に亡くなっている場合は甥・姪)の範囲を確認できる戸籍が必要になります。具体的にどの戸籍が必要かは、家族関係によって異なります。 法務局または専門家にご確認ください。
  2. 遺産分割協議:配偶者と、兄弟姉妹(または甥・姪)の全員で協議します。相続人全員の合意が必要です。
  3. 相続登記:不動産を相続したときは、相続で取得したことを知った日から3年以内に登記の申請をする義務があります。
  4. 注意点:
  • 兄弟姉妹や甥・姪は、亡くなった方や配偶者と疎遠であることがあり、連絡先の調査が必要になる場合があります。住所は戸籍の附票などで調べます。
  • 兄弟姉妹の全員が先に亡くなり、甥・姪が多数に及ぶ場合は、戸籍の収集範囲が大きく広がります。
  • 亡くなった時期が昭和56年1月1日より前の相続は、当時の民法が適用されるため、相続分などが異なります。個別に確認が必要です。

業務範囲について:相続人の調査(戸籍の収集)、遺産分割協議書の作成、相続登記の申請は、司法書士がご相談をお受けしています。一方、他の相続人との交渉や争いへの対応は、司法書士が代理して行える範囲が法律で限られており、弁護士への相談が適しています。相続税の申告や税額の判断は、税理士の業務です(税理士法2条・52条)。

7 よくある質問

Q. 夫が亡くなりました。子どもがいなければ、夫の兄弟にも財産を分けなければなりませんか?

A. 子も直系尊属(父母・祖父母)もいない場合は、夫の兄弟姉妹が配偶者と一緒に相続人になります。遺言がなければ、遺産分割協議に兄弟姉妹(先に亡くなっていればその子)も参加します。

Q. 夫の両親が亡くなっているかどうかは、どう確認しますか?

A. 戸籍で確認します。父母が亡くなっていれば、さらに祖父母の生死も問題になるため、必要な戸籍の範囲は、法務局または専門家にご確認ください。

Q. 兄弟姉妹が全員亡くなっていて、その子(甥・姪)もいます。相続人になりますか?

A. 甥・姪は相続人になります(代襲相続)。甥・姪も亡くなっている場合は、その子は相続人になりません。

Q. 兄弟姉妹が相続放棄をしたら、その子が代わりに相続しますか?

A. 相続放棄をした人は、初めから相続人とならなかったものとみなされ(民法939条)、代襲の原因(死亡・欠格・廃除)にもあたらないため、その子は代襲相続人になりません。

8 まとめ・ご相談の目安

子も直系尊属もいない方の相続では、配偶者と兄弟姉妹が相続人になり、兄弟姉妹が先に亡くなっていれば甥・姪までが関わります。次のような場合は、ご相談ください。

  • 相続人が誰になるのか、戸籍で確認したい
  • 兄弟姉妹や甥・姪の所在が分からない、連絡を取りにくい
  • 亡くなった時期が古く、当時の民法の適用が気になる
  • 相続人同士で意見が分かれている(この場合は弁護士への相談も検討します)

当事務所では、戸籍による相続人の調査・整理、遺産分割協議書の作成、相続登記の申請について、ご相談・ご依頼をお受けしています。

お電話でのお問い合わせ

お電話でのお問合せはこちら
TEL:06-7777-3812
営業時間:9:00〜19:00【全国対応】
定休日 :土日祝も相談できます。
お電話いただければ、時間外や土日祝日も含め、柔軟にご相談に応じております。お気軽にお問い合わせください。

関連記事

TOP