※ この記事は、遺産分割における不動産の分け方に関する一般的な解説です。この記事は令和8年9月時点の法令・制度に基づいています。税金の取扱いは税理士・税務署にご確認ください。個別の事情により結論が異なることがありますので、具体的な判断は専門家にご相談ください。
1 「公平だから共有に」は、後で困ることがあります
遺産分割の話し合いで、実家などの不動産を誰が取得するか決まらないとき、「兄弟で平等に共有にしておこう」という結論になることがあります。登記の手続きとしては簡単で、その時点では公平に見えます。
しかし、共有にすると、その後の売却や建替えなどに共有者全員の同意が必要になり、共有者が亡くなるたびに権利者が増えていきます。問題を先送りにしただけ、ということになりかねません。
2 不動産を共有で相続するデメリット
- 売却・建替えに全員の同意が必要:不動産全体の売却、建物の取壊しや建替え、長期の賃貸などには、共有者全員の同意が必要です(民法251条1項)。一人でも反対すれば進められません。
- 次の相続で共有者が増える:共有者が亡くなると、その持分はその人の配偶者や子に相続され、共有者の数が増えます。世代が進むと、面識のない親族同士の共有になることもあります。
- 管理や費用負担でもめやすい:固定資産税や修繕費を誰がどれだけ負担するか、誰が住むか・使うかで意見が分かれやすくなります。
- 持分が第三者に渡ることがある:共有者は自分の持分を単独で売却できるため、持分が第三者に売られ、見知らぬ人と共有関係になることがあります。
- 共有を解消するのに手間がかかる:後から共有を解消するには、共有者全員での話し合いや、共有物分割の裁判手続きが必要になります。
3 共有以外の分け方
| 分け方 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 現物分割 | 不動産ごとに取得者を決める(実家は長男、アパートは二男など)。土地を分筆して分けることも | 財産の価値に差があると不公平になりやすい |
| 代償分割 | 一人が不動産を取得し、他の相続人に代償金を支払う | 取得する人に代償金を支払う資力が必要 |
| 換価分割 | 不動産を売却し、売却代金を分ける | 売却に時間がかかることがある。譲渡所得税の申告が必要になる場合がある |
3-1 代償分割のポイント
代償分割をする場合は、遺産分割協議書に「長男は不動産を取得する代償として、二男に金〇〇円を支払う」と記載しておくことが大切です。記載がないまま金銭を渡すと、相続人間の贈与と扱われるおそれがあります。代償金の額は、不動産の評価額(固定資産税評価額、相続税評価額、時価など)のどれを基準にするかで大きく変わるため、相続人間で十分に話し合う必要があります。
3-2 換価分割のポイント
換価分割では、売却の前提として相続登記が必要です。相続人全員の共有名義で登記して全員で売却する方法と、代表の相続人の名義で登記して売却し、代金を分配する方法があります。後者の場合は、遺産分割協議書に「換価のために代表者の名義にすること」「売却代金を分配すること」を明記しておかないと、代金の分配が贈与と扱われるおそれがあります。
4 共有を選んでもよいケース
- 近いうちに売却することが決まっていて、売却までの一時的な共有である場合
- 共有者が少数で、関係が良好であり、将来の方針(売却時期・管理費用の分担など)を書面で決めている場合
- 夫婦など、同じ家に住み続ける者同士の共有である場合
共有を選ぶ場合でも、管理費用や固定資産税の負担、将来売却するときの条件などを、あらかじめ取り決めておくことをおすすめします。
5 いったん共有にした後でも解消できます
すでに共有で相続登記をしている場合でも、共有者間の話し合いで持分を売買・贈与したり、共有物分割をしたりして、共有を解消することができます。ただし、遺産分割とは扱いが異なり、登録免許税の税率が変わったり、贈与税や譲渡所得税がかかったりすることがあります。共有にする前によく検討することが大切です。
6 司法書士の役割
司法書士は、遺産分割協議書の作成(代償分割・換価分割の記載を含む)、相続登記、売却時の所有権移転登記についてご相談・ご依頼をお受けできます。分け方について相続人の間で争いがあり、交渉や調停の代理が必要な場合は、弁護士へのご相談をご案内しています。相続税や譲渡所得税の具体的な計算は、税理士と連携します。
7 よくある質問
Q. 共有にすると相続登記の費用は高くなりますか?
A. 相続登記の登録免許税は、単独で取得しても共有で取得しても、不動産全体の評価額に対して1,000分の4で変わりません。ただし、共有者が多いと、将来の手続きに必要な書類や手間が増えます。
Q. 相続人の一人が実家に住み続けたい場合は?
A. その相続人が不動産を取得し、他の相続人に代償金を支払う代償分割が考えられます。代償金を一括で支払えない場合は、分割払いにすることも考えられますが、支払いが滞ったときの対応を協議書に定めておくなど、慎重な検討が必要です。
8 まとめ・ご相談の目安
遺産分割で不動産を共有にすると、その場は公平に見えても、将来の売却や管理、次の相続で困ることがあります。現物分割・代償分割・換価分割も含めて検討しましょう。次のような場合は、ご相談をご検討ください。
- 不動産の分け方が決まらず、共有にするか迷っている
- 代償分割や換価分割の協議書の書き方を知りたい
- すでに共有にした不動産を整理したい
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