コラム

日本に帰化した人が亡くなったときの相続手続き 帰化前の身分関係の証明と外国人登録原票の取り寄せ方

※ この記事は、日本に帰化した方が亡くなった場合の相続手続きに関する一般的な解説です。この記事は令和8年9月時点の法令・制度に基づいています。外国の証明書の取得方法は国・地域や時期によって異なりますので、具体的な判断は専門家や各国の在日公館にご確認ください。

1 帰化した方の相続で問題になること

日本の相続手続き(相続登記、預貯金の解約など)では、亡くなった方の出生から死亡までの身分関係を証明して、相続人が誰かを確定する必要があります。日本人であれば戸籍をさかのぼることで確認できますが、日本に帰化した方の場合、日本の戸籍は帰化したときからしかありません。

そのため、帰化する前の期間(出生から帰化まで)の婚姻や子の有無などを、別の資料で確認・証明しなければなりません。ここが、帰化した方の相続手続きで一番時間がかかる部分です。

2 適用される法律:日本の民法です

相続は、亡くなった方(被相続人)の本国法によるとされています(法の適用に関する通則法36条)。帰化して日本国籍になった方が亡くなった場合、本国法は日本法になるため、相続人の範囲や相続分は日本の民法で判断します。ただし、帰化前に生まれた子や、帰化前の婚姻が相続人の判断に関わるため、帰化前の身分関係の確認が欠かせません。

3 集める資料

3-1 日本の戸籍(帰化後)

帰化すると、帰化の届出によって日本の戸籍が作られます。戸籍には、帰化の日や帰化前の国籍・氏名などが記載されます。まずは死亡時の戸籍から、帰化時の戸籍までをさかのぼって取得します。

3-2 外国人登録原票(日本に住んでいた期間の記録)

帰化前に日本に住んでいた期間については、外国人登録原票が手がかりになります。外国人登録原票には、氏名、生年月日、国籍、住所の変遷のほか、世帯や家族に関する事項などが記載されていることがあります。

  • 外国人登録制度は平成24年7月9日に廃止され、それまで市区町村で保管されていた原票は、現在は出入国在留管理庁で保管されています。
  • 亡くなった方の外国人登録原票は、死亡当時の同居の親族、配偶者、直系尊属、直系卑属、兄弟姉妹などが、写しの交付を請求できます(代理人による請求も可能)。
  • 請求先は出入国在留管理庁総務課出入国情報開示係(東京都新宿区)で、窓口または郵送で請求します。手数料は不要です。
  • 同庁の案内では、請求から交付までに長期間かかるとされています。早めに請求しましょう。
  • 請求者自身が帰化などで氏名・国籍が変わっている場合は、その経緯が分かる戸籍などの添付が求められます。

帰化した方の原票が請求の対象になるかどうかなど、個別の事情によって取扱いが異なる場合がありますので、請求前に同庁の案内で確認してください。

3-3 出身国・地域の証明書

出生から来日まで、あるいは帰化までの身分関係は、出身国・地域の証明書で確認します。

  • 韓国:家族関係の登録簿に基づく証明書(基本証明書・家族関係証明書など)や、それ以前の除籍謄本を、在日の大韓民国の公館などを通じて取得することが一般的です。
  • 台湾:戸籍制度があり、戸籍謄本を取得して確認するのが一般的です。
  • 戸籍制度のない国・地域:出生証明書、婚姻証明書、親族関係に関する公的な証明書(公証書など)を組み合わせて確認します。

外国語の証明書には、日本語の翻訳文(翻訳者の記名があるもの)を付けて提出します。取得方法や必要な手数料は国・地域や時期によって異なるため、各国・地域の在日公館などで確認が必要です。

4 資料がそろわない場合

古い証明書が残っていない、本国の制度上取得できない、といった理由で、帰化前の身分関係をすべて証明できないこともあります。その場合は、次のような方法を組み合わせて対応することがあります。

  • 宣誓供述書:相続人が、亡くなった方の身分関係や、ほかに相続人がいないことなどを記載し、公証人の前で宣誓して認証を受ける書面です。
  • 相続人全員の上申書:相続人全員が、ほかに相続人がいないことなどを申し述べ、署名押印して印鑑証明書を添付する書面です。

どのような資料があれば足りるかは、提出先(法務局や金融機関)によって判断が異なります。相続登記の場合は、事前に法務局と相談しながら資料をそろえることが多いです。

5 生前にできる対策:遺言書を作っておく

帰化した方の相続は、相続人の確定だけで長い時間がかかることがあります。ご本人がお元気なうちに公正証書遺言を作成し、遺言執行者を指定しておけば、遺言の内容に従って手続きを進めることができ、相続人全員での遺産分割協議が不要になります。ご家族の負担を大きく減らせるため、帰化した方には特におすすめの対策です。ただし、遺言があっても、手続きによっては相続人の範囲を確認する資料を求められることがあります。

6 亡くなった人が外国籍だった場合(どの国の法律で相続人が決まるか)

原則として、亡くなった人の本国の法律で決まります

日本に住む外国籍の方が、日本の不動産を残して亡くなった場合、誰が相続人になり、相続分がいくらになるかは、原則として亡くなった人の本国の法律で決まります(法の適用に関する通則法36条)。日本の民法がそのまま適用されるとは限りません。

ただし、本国の法律が「不動産の相続は不動産のある国の法律による」などと定めている場合は、日本の法律が適用されることがあります(反致。同法41条)。どの国の法律が適用されるかの判断が、最初の重要なポイントになります。

国によって違う、相続人の決まり方

例えば、相続実務の解説書では、韓国籍の方の場合は韓国の国際私法により韓国の民法が適用されること、アメリカ国籍の方の場合は州ごとに法律が異なることなどが紹介されています。相続人の順位や配偶者の相続分、相続放棄の期間などは、国によって日本と異なることがあります。

相続登記に必要な「相続を証する書類」

日本の不動産について相続登記をするには、亡くなった方と相続人の身分関係を証する書類が必要です。国によって用意できる書類が違います。

  • 戸籍に当たる制度がある国(韓国・台湾など):韓国の家族関係登録簿の証明書、台湾の戸籍謄本など、その国の公的な書類と、その日本語訳文を使います。
  • 戸籍制度がない国(アメリカなど):相続人が「相続人は自分たちだけである」などの事実を宣誓し、公証人が認証した書面(宣誓供述書)を使う方法があります。
  • 中国籍の場合:被相続人と相続人の関係を証する公証書を取得して使う方法が紹介されています。

このほか、亡くなった方が日本に住んでいた場合は、住民票の除票や、外国人登録原票の写しが、住所や身分関係の確認に役立つことがあります。

遺産分割協議書と印鑑証明書

遺産分割をした場合は、遺産分割協議書を作り、相続人が署名・押印します。日本に住所がない相続人は、印鑑証明書の代わりに、住んでいる国の日本領事館や現地の公証人によるサイン証明(署名証明)を使います。詳しくは相続人が海外に住んでいる場合の相続手続きをご覧ください。

注意したいポイント

  • 翻訳文:外国語の書類には、日本語の訳文を添付します。
  • 日本に帰化していた場合:帰化した方の相続は日本の法律で判断しますが、帰化前の身分関係を確認するため、本国の書類が必要になることがあります(日本に帰化した人が亡くなったときの相続手続き)。
  • 時間がかかる:本国から書類を取り寄せる、公証人の認証を受けるなどで、日本人の相続より時間がかかることが多いため、早めに準備を始めます。

7 司法書士の役割

司法書士は、日本の戸籍の収集、外国人登録原票の請求の準備、相続関係の整理、相続関係説明図や法定相続情報一覧図の作成、相続登記の申請、公正証書遺言の文案作成についてご相談・ご依頼をお受けできます。外国の証明書の取得や翻訳が必要な場合は、取得先の確認も含めてご案内します。

8 よくある質問

Q. 帰化前の日本での住所の記録は、どこで確認できますか?

A. 外国人登録制度が廃止された平成24年7月9日より前の期間は、外国人登録原票で確認できることがあります。それ以降の住所は、住民票(除票)で確認します。

Q. 相続人の中に外国籍の人がいます。手続きは変わりますか?

A. 相続人が外国籍の場合、印鑑証明書の代わりにサイン証明(署名証明)を使うなど、必要書類が変わることがあります。

Q. 翻訳は自分でしてもよいですか?

A. 法務局に提出する翻訳文は、相続人など専門家以外の方が作成したものでも、翻訳者を明らかにすれば受け付けられるのが一般的です。ただし、正確な翻訳が必要ですので、不安な場合はご相談ください。

9 まとめ・ご相談の目安

帰化した方の相続では、日本の戸籍だけでは帰化前の身分関係が分からないため、外国人登録原票や出身国・地域の証明書を組み合わせて相続人を確定します。資料の取得に時間がかかるため、早めの準備が大切です。次のような場合は、ご相談をご検討ください。

  • 亡くなった親が帰化していて、帰化前の家族関係が分からない
  • 外国人登録原票や本国の証明書の取り寄せ方が分からない
  • 帰化した家族のために、遺言書を作っておきたい

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