コラム

遺言書の「相続させる」と「遺贈する」は何が違う?不動産の名義変更の申請方法と登録免許税

※ この記事は、遺言に基づく不動産の名義変更(登記)に関する一般的な解説です。この記事は令和8年9月時点の法令・制度に基づいています。

1 結論:誰に、どちらの言葉で残したかによって、登記の申請方法と登録免許税が変わります

遺言書で不動産を特定の人に残す場合、「○○に相続させる」と書く方法と、「○○に遺贈する」と書く方法があります。どちらも財産を承継させる点では似ていますが、登記の手続では次のような違いがあります。

  • 相続人に「相続させる」:取得する相続人が単独で相続登記を申請できます。
  • 相続人に「遺贈する」:令和5年4月1日以降は、受遺者である相続人が単独で申請できるようになりました(不動産登記法63条3項)。
  • 相続人以外の人に「遺贈する」:原則として、受遺者と、遺言執行者または相続人全員との共同申請になります。

2 「相続させる」旨の遺言(特定財産承継遺言)

「長男に自宅の土地建物を相続させる」のように、特定の財産を特定の相続人に承継させる遺言は、民法上「特定財産承継遺言」と呼ばれます(民法1014条2項)。この場合、遺産分割協議を経ることなく、その相続人が不動産を取得し、単独で相続登記を申請できます。

なお、法定相続分を超える部分については、登記をしなければ第三者に対抗できないとされています(民法899条の2第1項)。遺言があるからといって登記を後回しにせず、早めに名義変更を済ませることが大切です。

3 「遺贈する」旨の遺言

3-1 相続人に対する遺贈

以前は、相続人に対する遺贈であっても、他の相続人全員または遺言執行者と共同で申請する必要がありました。令和5年4月1日からは、遺贈により不動産を取得した相続人が単独で申請できるようになり、手続の負担が軽くなっています。

3-2 相続人以外に対する遺贈

孫(代襲相続人でない場合)、子の配偶者、内縁の配偶者、お世話になった第三者などへの遺贈は、引き続き共同申請です。遺言執行者が指定されていれば、遺言執行者と受遺者が共同で申請するのが一般的です。遺言執行者がいない場合は、相続人全員の協力が必要になるか、家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てることを検討します。

4 登録免許税の違い

  • 相続による所有権移転登記:固定資産税評価額などを基にした不動産の価額の1,000分の4
  • 相続人に対する遺贈:相続人であることを証する書面(戸籍謄本等)を添付すれば、1,000分の4
  • 相続人以外に対する遺贈:1,000分の20

相続人以外への遺贈は、相続の場合と比べて税率が5倍になる点に注意が必要です。また、一定の土地については登録免許税の免税措置が設けられていますが、適用の可否は個別に確認が必要です。

5 遺言書の書き方で注意したいこと

  • 相続人に残すなら、一般的には「相続させる」と書く方が手続上わかりやすいとされています。
  • 不動産は、登記事項証明書の記載どおり(所在・地番・家屋番号など)に特定しましょう。「自宅」などのあいまいな表現だと、どの不動産を指すか争いになるおそれがあります。
  • 相続人以外に残す場合は、遺言執行者を指定しておくと、登記手続を進めやすくなります。
  • 遺留分(一定の相続人に保障された取り分)への配慮も必要です。

6 司法書士の役割

司法書士は、遺言書の文案作成のサポート、遺言に基づく相続登記・遺贈の登記の申請、遺言執行者選任申立書の作成について、ご相談・ご依頼をお受けできます。遺留分をめぐる請求・交渉など、相続人間の紛争の代理は司法書士の業務範囲を超えることがあり、その場合は弁護士へのご相談をご案内しています。

7 よくある質問

Q. 遺言書に「譲る」「与える」と書かれている場合はどうなりますか?

A. 遺言全体の趣旨や、相手が相続人かどうかなどを踏まえて解釈することになります。表現によって手続が変わることがあるため、遺言書を確認のうえご相談ください。

Q. 自筆の遺言書でも、すぐに登記できますか?

A. 自宅などで保管されていた自筆証書遺言は、家庭裁判所の検認を受けてから登記に使うのが通常です。公正証書遺言や法務局で保管されている遺言書は、検認不要です。

Q. 遺言と違う分け方をすることはできますか?

A. 事情によっては、相続人全員(受遺者を含む)の合意で遺言と異なる遺産分割をする余地があるとされていますが、遺言執行者の有無や遺言の内容によって扱いが異なります。個別の確認が必要です。

8 まとめ・ご相談の目安

遺言書の「相続させる」と「遺贈する」は、登記の申請方法や登録免許税に違いがあります。次のような場合には、ご相談をご検討ください。

  • 遺言書に基づいて不動産の名義変更をしたい
  • 相続人以外の人に不動産を残す遺言がある
  • これから遺言書を作るので、登記まで見据えた書き方を知りたい

当事務所では、遺言書作成のサポート、遺言に基づく相続登記・遺贈の登記について、ご相談・ご依頼をお受けしています。

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