※ この記事は、権利証(登記済証・登記識別情報)が見つからない場合の相続登記に関する一般的な解説です。この記事は令和8年10月時点の法令・制度に基づいています。個別の事情により結論が異なることがありますので、具体的な判断は専門家にご相談ください。
1 結論:相続登記は、原則として権利証がなくても申請できます
「親の家の権利証が見つからないので、相続登記ができないのでは」というご相談をよくいただきます。売買や贈与の登記では、売主などの登記識別情報(権利証)を提供する必要がありますが(不動産登記法22条)、相続による所有権移転登記は相続人からの申請で行うもので、原則として亡くなった方の権利証の提出は求められません。
相続登記が完了すると、新しく名義人になった相続人に登記識別情報が通知されます(不動産登記法21条)。古い権利証が見つからなくても、相続登記の後に売却するときは、この新しい登記識別情報を使います。
この記事は「権利証がなくても相続登記ができるか」を扱います。住民票の除票や戸籍の附票などで住所のつながりを証明する方法は、住所がつながらないときの対処法で詳しく解説しています。
2 権利証が必要になるのは、住所がつながらないとき
ただし、権利証が役に立つ場面があります。登記簿に記録された亡くなった方の住所と、死亡時の住所のつながりを、住民票の除票や戸籍の附票で証明できない場合です。登記簿上の名義人と亡くなった方が同一人物であることを示す資料の一つとして、権利証が使われます。
3 当事務所の実務から:同一人物であることを示す資料の順番
当事務所の実務メモでは、住所のつながりが証明できない場合に、同一人物であることを示す資料を次の順番で検討することとしています。
- 住民票の除票・戸籍の附票・戸籍で、住所のつながりを証明する
- 1ができなければ、権利証(登記済証)の原本と写しを提出する
- 2もなければ、固定資産税の納税通知書と、相続人の上申書・印鑑証明書を提出する
- 3でも足りないとされた場合は、成人2名による保証書と印鑑証明書を求められることがある
どこまでの資料が必要かは、事案や担当の登記官の判断によって変わることがあり、全国で統一された基準が公表されているわけではありません。当事務所では、手元にそろう資料をできるだけ集めたうえで、必要に応じて申請前に管轄の法務局に相談し、確認しています。詳しくは住所がつながらないときの対処法をご覧ください。
4 住所のつながりを示す資料(法務省の先例)
住所のつながりを示す資料について、法務省の先例と登記実務の解説書で確認できる取扱いは、次のとおりです。
- この3つのどれかがあれば、ほかの資料は不要:①本籍と登記簿上の住所が載った住民票の写し、②登記簿上の住所が載った戸籍の附票の写し、③被相続人名義の所有権の登記済証(権利証)のいずれかを提出すれば、不在籍証明書・不在住証明書などのほかの資料がなくても相続登記ができるとされています(平成29年3月23日民二第175号通知)。
- 上申書や納税証明書だけでは足りないことがある:相続人全員の「同一人物です」という上申書は公的な書類ではないため、それだけでは同一人物と認めるには不十分という見解があります。固定資産税の納税証明書や名寄帳なども、それのみでは同一性を認定できないと考えられています。複数の資料を組み合わせ、管轄の法務局と相談しながら進めるのが実務です。
- 公正証書遺言がある場合:遺言公正証書に書かれた不動産の表示と名義人の住所・氏名が登記簿と一致し、氏名・生年月日が戸籍とも一致していて、あわせて納税証明書などを提出する場合には、相続人全員の上申書は不要とされた先例があります(令和5年12月18日民二第1620号)。
権利証は、このように「住所のつながり」を証明できないときの有力な資料になります。古い書類を処分する前に、権利証が残っていないか確認しておくと安心です。
5 権利証を探すときのポイント
- 古い権利証は、表紙に「登記済」の朱色の印が押された書類の綴りです。平成17年以降の登記では、A4の「登記識別情報通知」が交付されている場合があります。
- 金庫・仏壇・貸金庫のほか、不動産を買ったときの契約書や住宅ローンの書類と一緒に保管されていることがあります。
- 見つからなくても、再発行はされません。上記のとおり、相続登記自体は進められます。
6 当事務所でのご相談から:「権利証がないと相続登記できない?」というご相談
当事務所では、相続登記は一般的な売買による所有権移転登記とは必要書類が異なるため、権利証がないことだけで相続登記ができなくなるわけではないとご説明しています。
7 よくある質問
Q. 権利証がないと、相続した不動産を売れませんか?
A. 相続登記をすれば、相続人に新しい登記識別情報が通知されるので、それを使って売却できます。
Q. 相続登記の登記識別情報をなくしたら?
A. 再発行はされません。売却などの際は、司法書士による本人確認情報の作成など、別の方法で手続きをすることになります。
8 まとめ・ご相談の目安
相続登記は、原則として亡くなった方の権利証がなくても申請できます。ただし、登記簿の住所と死亡時の住所がつながらない場合は、権利証や納税通知書などで同一人物であることを示す必要があります。次のような場合は、ご相談をご検討ください。
- 権利証が見つからず、相続登記ができるか不安
- 登記簿の住所が、亡くなった方の最後の住所と違う
- 昔の住所の住民票や附票が取れないと言われた
関連記事
- 相続登記で被相続人の住所がつながらないときの必要書類 住民票の除票・戸籍の附票・権利証・上申書で同一人物と証明する方法
- 相続登記の手続きの流れと必要書類 遺言・遺産分割・法定相続分の3つのパターン別に解説
- 相続登記を自分で申請するには?申請書の作り方・提出方法と、つまずきやすいポイント
- 相続人調査の方法 どの戸籍をどこまで集めるか、相続人を確定する手順
ウィルパートナー司法書士事務所のサポート
この記事に関連する手続きについて、当事務所でご相談・ご依頼を承っています。
- 相続登記(不動産の名義変更):報酬 66,000円〜(税込)
登録免許税・戸籍の取得費用などの実費は別途かかります。事前にお見積りをお出しします。

お電話でのお問い合わせはこちら
TEL:06-7777-3812
営業時間:9:00〜19:00【全国対応】
土日祝 :ご相談いただけます。
お電話いただければ、時間外や土日祝日も含め、柔軟にご相談に応じております。お気軽にお問い合わせください。