※ この記事は、相続放棄をした人がいる場合の相続登記に関する一般的な解説です。この記事は令和8年9月時点の法令・制度に基づいています。添付書類は事案によって異なるため、申請前に確認が必要です。
1 結論:相続放棄をした人は相続人から外れるため、放棄を証明する書類を添付して、残りの相続人で登記します
家庭裁判所で相続放棄をした人は、はじめから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)。そのため、相続登記では、放棄した人を除いた相続人が登記名義人となり、または遺産分割協議を行います。その際、戸籍だけでは放棄の事実が分からないため、相続放棄を証明する書類の添付が必要になります。
2 相続放棄を証明する書類
2-1 相続放棄申述受理証明書
家庭裁判所が発行する、相続放棄の申述が受理されたことの証明書です。放棄をした本人のほか、利害関係人(他の相続人など)も、家庭裁判所に交付を申請できます。手数料は1通につき収入印紙150円分です。
2-2 相続放棄申述受理通知書
相続放棄が受理されると、家庭裁判所から申述人に「受理通知書」が送られます。登記実務上は、この通知書でも放棄を証明する書類として扱われることがあるとされていますが、扱いは法務局に事前に確認するのが安全です。
3 放棄によって相続人が変わるケース
3-1 同順位の相続人の一部が放棄した場合
例えば、相続人が配偶者と子2人で、子の一人が放棄した場合、相続人は配偶者と残りの子1人になります。放棄した子に子(被相続人の孫)がいても、相続放棄は代襲相続の原因にはならないため、孫が代わりに相続することはありません(民法887条2項参照)。
3-2 同順位の相続人全員が放棄した場合
子が全員放棄すると、次の順位である直系尊属(父母など)が、直系尊属がいない(または全員放棄した)場合は兄弟姉妹(亡くなっている場合はその子)が相続人になります(民法889条)。この場合、次順位の相続人を確定するために、追加の戸籍(被相続人の父母の出生からの戸籍など)が必要になり、準備に時間がかかることがあります。
4 相続登記の主な添付書類(放棄者がいる場合)
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等、住民票の除票など
- 相続人全員の戸籍謄本(次順位が相続人となる場合は、それを確認するための戸籍も含む)
- 相続放棄を証明する書類(受理証明書など)
- 遺産分割協議をする場合は、放棄者を除く相続人全員の遺産分割協議書と印鑑証明書
- 不動産を取得する人の住民票、固定資産評価証明書など
法定相続情報一覧図は法定相続人を示すものであり、相続放棄の事実は記載されません。そのため、一覧図を利用する場合でも、放棄を証明する書類は別途必要です。
5 注意したいポイント
- 遺産分割協議に放棄者を入れない:放棄者は相続人ではないため、遺産分割協議の当事者になりません。放棄者の署名押印は不要です。
- 「事実上の放棄」と混同しない:遺産分割協議で「何も取得しない」と合意しただけの人は、家庭裁判所での相続放棄をしていないため、相続人として協議書に署名押印する必要があります。
- 放棄の事実を確認する:放棄したと聞いていても、実際に申述が受理されているかは書類で確認しましょう。
6 司法書士の役割
司法書士は、相続放棄申述書の作成、相続放棄申述受理証明書の取得、次順位の相続人を確定するための戸籍の収集、遺産分割協議書の作成、相続登記の申請について、ご相談・ご依頼をお受けできます。
7 よくある質問
Q. 他の相続人が放棄したかどうか、確認する方法はありますか?
A. 利害関係人は、家庭裁判所に対し、相続放棄の申述の有無について照会できる場合があります。照会の方法は家庭裁判所によって異なるため、管轄の家庭裁判所の案内をご確認ください。
Q. 受理通知書を紛失してしまいました。
A. 家庭裁判所に申請すれば、相続放棄申述受理証明書の交付を受けられます。
Q. 放棄した人が不動産に住んでいる場合はどうなりますか?
A. 放棄の時に相続財産を現に占有していた人は、相続人などに引き渡すまで、その財産を保存する義務を負います(民法940条1項)。引渡しの方法も含めて、関係者で話し合う必要があります。
8 まとめ・ご相談の目安
相続放棄をした人がいる場合の相続登記では、放棄を証明する書類が必要で、放棄によって相続人が変わることもあります。次のような場合には、ご相談をご検討ください。
- 相続人の中に相続放棄をした人がいる
- 子が全員放棄して、親や兄弟姉妹が相続人になった
- 必要な戸籍や証明書の集め方が分からない
当事務所では、戸籍の収集、相続放棄に関する書類の取得、遺産分割協議書の作成、相続登記の申請について、ご相談・ご依頼をお受けしています。

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