コラム

相続財産清算人とは?相続人がいないときの選任申立て・費用・手続きの流れ(令和5年改正後)

※ この記事は、相続財産清算人(旧:相続財産管理人)に関する一般的な解説です。この記事は令和8年10月時点の法令・制度に基づいています。個別の事情により結論が異なることがありますので、具体的な判断は専門家にご相談ください。

1 相続財産清算人とは

亡くなった方に相続人がいることが明らかでない場合(相続人が一人もいない場合や、相続人全員が相続放棄をした場合など)、家庭裁判所は、利害関係人や検察官の請求により、相続財産の清算を行う人を選任します(民法952条1項)。この人を相続財産清算人といいます。

相続財産清算人は、相続人を探す公告をしながら、被相続人の財産を管理・換価し、債権者や受遺者への支払いを行い、最終的に残った財産を国庫に帰属させます。

令和5年4月1日施行の民法改正により、それまで「相続財産管理人」と呼ばれていた役割は「相続財産清算人」に名称が変わり、手続きの期間も短縮されました。改正後の民法には、別に、相続財産の保存のための「相続財産管理人」(民法897条の2)という制度もあるため、両者を区別する必要があります。

この記事は、相続財産清算人の選任の申立て(申立人・費用・手続きの流れ)を中心に扱います。相続人がいない不動産が最終的にどうなるか、清算人から購入する場合の注意点は相続人がいない場合、不動産はどうなる?をご覧ください。

2 どんなときに必要になるか

  • 亡くなった方にお金を貸していた債権者が、回収を進めたい
  • 亡くなった方と共有の不動産を持っていて、売却や整理を進めたい
  • 内縁の配偶者や療養看護をした人が、特別縁故者として財産の分与を求めたい
  • 空き家となった不動産の管理が問題になり、市区町村などが対応を進めたい
  • 遺言で財産を受け取る人(受遺者)がいるが、遺言執行者がいない など

相続人がいない場合、財産は自動的に国のものになるわけではなく、清算人が選任されて手続きが進まない限り、不動産などは亡くなった方の名義のまま残り続けることになります。

3 申立ての概要

  • 申立てができる人:利害関係人(債権者、受遺者、特別縁故者として分与を求める人など)、検察官
  • 申立先:被相続人の最後の住所地の家庭裁判所
  • 費用:収入印紙800円分、連絡用の郵便切手、官報公告料5,582円(裁判所の案内による)
  • 予納金:相続財産から清算人の報酬や経費を支払えない見込みの場合などには、申立人が予納金を納めるよう求められることがあります。金額は事案によって異なります。
  • 主な書類:申立書、被相続人の出生から死亡までの戸籍、相続人がいないこと(または全員が放棄したこと)が分かる戸籍等、財産に関する資料、利害関係を証する資料 など

4 選任後の流れ(令和5年改正後)

  1. 選任と相続人捜索の公告:家庭裁判所は、清算人を選任したことと、相続人がいれば一定の期間内に権利を主張すべきことを公告します。この期間は6か月以上とされています(民法952条2項)。
  2. 債権者・受遺者への請求申出の公告:清算人は、債権者や受遺者に対し、2か月以上の期間を定めて請求の申出をするよう公告します。この期間は、上記の相続人捜索の期間内に満了するように定められます(民法957条1項)。
  3. 財産の管理・換価と支払い:清算人は、不動産の売却などで財産を換価し、申し出た債権者や受遺者に支払います。不動産の売却など、保存行為等の範囲を超える行為には家庭裁判所の許可が必要です。
  4. 特別縁故者への財産分与:相続人捜索の期間が満了した後3か月以内に、特別縁故者が財産分与の申立てをすることができます(民法958条の2)。
  5. 国庫への帰属:最終的に残った財産は、国庫に帰属します(民法959条)。

改正前は、選任の公告・債権者への公告・相続人捜索の公告を順番に行う必要があり、最低でも10か月程度かかっていました。改正後は、公告を並行して行うことで、最短6か月程度で相続人の不存在が確定するようになっています。ただし、財産の換価や分与の手続きがあるため、実際にはさらに時間がかかることが一般的です。

5 共有持分がある場合

被相続人が不動産の共有持分を持っていた場合、特別縁故者への分与がされず、なお残った共有持分は、他の共有者に帰属するとされています(民法255条、最高裁平成元年11月24日判決)。共有者の方にとっては、清算人の手続きを通じて持分を取得できる可能性があります。

6 特別縁故者とは

特別縁故者とは、被相続人と生計を同じくしていた人(内縁の配偶者など)、被相続人の療養看護に努めた人、その他被相続人と特別の縁故があった人をいいます(民法958条の2)。特別縁故者として認められるかどうか、どの程度の財産が分与されるかは、家庭裁判所が判断します。申立ての期限(相続人捜索の期間満了後3か月以内)を過ぎると申立てができないため注意が必要です。

7 司法書士の役割

司法書士は、相続人がいないことを確認するための戸籍の収集、相続財産清算人の選任申立書や特別縁故者の財産分与申立書など家庭裁判所に提出する書類の作成、清算人が不動産を売却する際や財産分与後の登記の申請についてご相談・ご依頼をお受けできます。また、司法書士が家庭裁判所から相続財産清算人に選任されることもあります。債権の回収をめぐる交渉や訴訟の代理が必要な場合は、請求額などにより弁護士へのご相談が必要になることがあります。

8 よくある質問

Q. 相続人全員が相続放棄をした場合も、清算人が必要ですか?

A. 相続人全員が放棄すると、相続人がいない状態になるため、財産の清算が必要な場合には相続財産清算人の選任を申し立てることになります。なお、放棄した時点で財産を現に占有していた人は、清算人に引き渡すまで財産を保存する義務があります(民法940条1項)。

Q. 予納金はどのくらいかかりますか?

A. 財産の内容や、財産から経費・報酬を支払えるかどうかによって大きく異なります。預貯金などが十分にある場合は、予納金が少額で済むこともあります。申立先の家庭裁判所にご確認ください。

Q. 不動産は誰が売却しますか?

A. 選任された清算人が、家庭裁判所の許可を得て売却します。買主への所有権移転登記の前提として、不動産の名義を「亡〇〇相続財産」とする登記名義人の氏名変更の登記が行われます。

9 まとめ・ご相談の目安

相続人がいない場合、財産の清算は家庭裁判所が選任する相続財産清算人を通じて行われます。令和5年の改正で、手続きの期間は短縮されました。次のような場合は、ご相談をご検討ください。

  • 亡くなった方に相続人がいない、または全員が相続放棄をした
  • 亡くなった方と共有の不動産があり、整理したい
  • 内縁関係や療養看護を理由に、財産の分与を求めたい

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